表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/28

第2章 第1話:お互いの利益

第1話:お互いの利益


セブンスヘブン体制になってから数日。

王宮の会議室に7thHメンバーが集合していた。

ナノハが前提の共有を開始する。

「レギーナの『同調圧力操作』が弱まって数日。

諸侯や民衆の反乱を警戒していたけれど、拍子抜け。

暴動も起きていないわ」

フリーダが答える。


「理由は明白よ。この体制は、旧王政のような『温かい悪政』ではない。

賄賂は通用せず、不当な虐殺も禁じ、ただ数字とインフラの改善のみを追求する

『冷たい善政』だから。誰が自分たちの腹を満たし、道を舗装し、

魔物の脅威から遠ざけたか。民衆は考えるまでもなく、実利を選んだの」

フリーダは会議室を見渡した。


「本題は帰還について。

龍脈の機能は召喚。ならその逆の帰還も可能なはず。

つまり、龍脈を満たせば帰還できる。

なぜ、旧王政の数十年間かかった龍脈が、C9の一年で満たされたか。

体制の違いと、龍脈のチャージ条件に関連があると仮定したわ」


次に、3枚の大きなグラフパネルを並べる。

「人間の死者数と魔物の討伐数の比較。

旧王政と比べて、人間の死者は減り、魔物の討伐数は増加。

龍脈のチャージと、死者数、討伐数の関係。これが偶然か必然か確認したい」

ナノハが指で机をたたいた。


「魔物の討伐数を増やす、ワンサイドゲーム。

それでチャージ速度が上がるか確認しましょう」

劉斗が答えた。


「つまり、目的は帰還のための条件を調べる。手段は魔物の討伐数を増やし、

は増やさない。魔物が減り、人が死なないなら、

反対する理由はない。お互いの利益になる」


ゲンゾウが首肯するが、伊織が当然の疑問を口にした。

「ワンサイドゲームなど、可能なのか。戦場の霧というものがある」

結が立ち上がる。


「新作があるの、次回、贋作師の傑作にご期待」

結が不敵に笑うと、ナノハに目配せをした。

オラクルが扇を広げた。

「啓示です、魔王軍が砦に接近」

7thHの初仕事は、魔物狩りとなった。


第2話:銀輪部隊

昨日までの戦いはこうだった。

軍は盾。

平地であれば魔王軍の勢いを受け流し、突出部を作り、

C9のチート持ちが横から切り取る。

砦であれば、籠城し増援が来るまで耐える。

ナノハが兵の展開速度を重視するのはこのためだ。


魔王軍もどうせ籠城だろうと、高をくくって砦に近づいてきたようだ。

だが、不運なことに本日は新作お披露目の日。


ナノハは『ディープブルー』で銀輪部隊の兵士たちへ、指示を送る。

砦を取り囲む魔物、その後ろを取り囲むように静かに展開する軍勢。


砦の指揮所で、ナノハが静かに言う。

「十分引きつけたわ。全門、放て!」

砦に運び込んだ大砲が爆発音とともに、鉛玉を発射した。

不用意に砦に近づいた魔物の頭上に、鉛玉が降り注ぐ。


この世界に火薬はない。では、なぜ?

結の『愚者の黄金』は魔法やチートを触媒として保存する。

では、『爆発魔法』を触媒に保存して、大砲の中に入れたら?

火薬の代わりになる。

通常の爆発魔法でも同じことは可能だが、

座標指定を誤り大砲の外に発現したら文字通りの自爆となる。

安全性の面から否定された。


ナノハが【ディープブルー】を見ながら言う。

「銀輪部隊、『お尻』を叩いて、キルゾーンへ押し込む」

砦から距離を取ろうとした魔物には、

銀輪部隊の弓兵と魔法使いの3段撃ちの面制圧で足止めを行う。

当然、銀輪部隊は危なくなれば容赦なく逃げる。


十分弱らせたところで、掃討戦のために伊織が砦から出撃した。

結果、人は死なないワンサイドゲーム。

王政時代の英雄譚とは異なる、作業とも言える風景だった。


フリーダは戦場を眺めて言う。

「鉛玉は回収したら、再利用できないかしら?

魔物の活用方法を検討しないと」

指揮所でオラクルが扇を広げる。

「啓示です、龍脈チャージ5%」

指揮所の中で歓声があがった。


第3話:燐光

最初の蹂躙から一月。戦闘はすでにルーチンだった。

「今日の天候は晴れ時々砲弾」

などと、軽口をたたく者までいるほどだ。

いつも通り魔法の三段撃ちと大砲による物理攻撃の併用。


だが、その『いつも通り』は、キルゾーンに現れた異変によって粉砕された。

轟音が止み、煙が風に流される。

キルゾーンの中を悠々と一体の魔物

(リビングアーマー、動く鎧)が歩み寄ってくる。


「!魔法も、物理も効かない?」

観測していた兵士が声をあげた。

結が兵士から単眼鏡を受け取った。


「あの魔物、光ってる」

伊織が問う。

「防御魔法の類か?」

結は首を振った。

「違う。私たちのチートの『燐光』と同じ。

あの魔物、私たちと同じチートを持っている。多分攻撃無効?」


これまで害獣として一方的に駆除してきた対象が、

自分たちと同じ「チート」を纏って現れたのだ。

「チート持ちにはチート。伊織、劉斗お願い!」

弾かれたように伊織とユゴスが飛び出す。


二刀流で残敵を掃討しながら、チート持ちの魔物に斬りかかる。

「硬い」

斬撃は敵の表面に弾かれる。即座に距離を取り、なぜか小太刀を残し、

刀は納刀した。


リビングアーマーが伊織に斬りかかるが、難なく小太刀で弾く。

攻撃を弾かれ、バランスを崩したリビングアーマー。

伊織は片手でリビングアーマーの腕を掴む。

足払いで転ばせ、反撃できないよう、手首を踏みつける。


伊織が切り開いた道を、劉斗が追いついてきた。

「伊織!」

劉斗が、伊織に追いついて来た。

劉斗のアンチチートはの範囲内であれば、敵味方の区別なくチートの精度が落ちる。

当然伊織のチートも魔物も同じく弱体化する。

だが、技術の精度は変わらない。程なくして、チートの燐光は消失した。


結果だけ見たら勝ち戦、だが事態は予想外の方向に動き出したことを示していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ