15話:戻ってきて
15話:戻ってきて
1.否定の小石
劉斗が静かに歩み出す。
「チートを使うのは、歩くのと同じ。ブーストされた今は、
全力で坂を下るようなもの。足元に、石を一個置いたらどうなるか
……?こけるだけだ」
劉斗のアンチチート、チートを否定するチートによって、サービスエリアは遺跡に戻った。
2.和解:二人の「結」
膝をついて震えるレギーナに、亜智が歩み寄る。
「……ねえ、亜智。……どうしたら、戻ってくれる?」
亜智はその時のやりとりを思い出す。
亜智「遅刻ですよ、女王様?」
レギーナ「遅刻(遅刻で、私を責める気)!出て行って!」
亜智「お言葉のままに!女・王・様!」
亜智は目を細めた。
「おじさんですら参っちゃうような状態だったし。
じゃあ、その逆を言ってくれたら、考えてあげてもいいわよ」
涙声でレギーナが言う。
「……戻ってきて。亜智」
「……もう、しょうがないなぁ」
二人は固く手を取り合い、ただの親友として結び直された。
3.歴史的握手と「友情」の商材
王宮へ帰還すると、ナノハがレギーナに飛びつく。
「任せて、よかった!」
それを横目で見ていた劉斗の前に、伊織が来る。
「……もはや、停戦交渉など不要だろう」
差し出された伊織の右手を、劉斗は照れくさそうに笑いながら、力強く握り返した。
その光景を、フリーダとオラクルが怪しく見つめる。
オラクル「……男同士の友情。ふふ、これはこれで……新しい扉が開きそうですわね」
フリーダ「……ええ、同意するわ。新たな需要の予感がするわね」
4.亜智の見る夢、涙
遺跡から帰った夜。日中あれだけ見たせいだろうか?
懐かしい、召喚直前のサービスエリアの夢を見た。
ウルフギャングが、スマホの画面を見つめて吐き捨てる。
「人生マジクソゲー」
隣でポテトを突いていた友人が、軽い調子で応じる。
「それな!」
日常の何でもない夢。
「会議です。起きてください」
声で起こされた。
転移後に初めて、頬が濡れていたことに気付いた。
5.ナッジ
会議室にはC9のメンバーが集まっていた。
ナノハが会議を進行させる。
「現状を共有しましょう、まずレギーナ」
「私のチート能力の弱体化、もう同調圧力操作はできない、
今はそうした方がいいと思わせるくらい」
フリーダがレギーナの方を向いた。
「ナッジ(肘でつつくような誘導)という経済学の用語があるけど、そんな感じね」
ナノハが続ける。
「次、魔王軍の脅威は変わっていない」
亜智は手をあげる。
「一つ提案。大砲の中に爆発魔法を座標指定するより、
『愚者の黄金・爆発』を大砲の中に入れてから蓋した方が安全じゃない?」
ナノハは首肯した。
「練兵場で実験しましょう。次、龍脈の力を使い果たし、帰還は当分の間不可能。
現地人と協力すべき」
伊織が即答する。
「異議なし」
ナノハは会議室を見渡した。
「誰も反対なしね、入って」
劉斗、ゲンゾウが入ってくる。
ナノハが宣言する。
「クラウドナインは解散。
ウルフギャングは協力者、ゲンゾウさんは相談役、劉斗をメンバーに加えて、
7人の新組織」
ゲンゾウが相談役として答える。
「七福神か、七賢人じゃな」
オラクルが真顔で言う。
「啓示です。セブンスヘブン、至福の場所」
ナノハが宣言した。
「名前はセブンスヘブン。
クラウドナイン記念館もセブンスヘブン記念館に改名。
最初の展示はこれ!署名してね」
ナノハが差し出したのは、セブンスヘブンメンバーと書かれた羊皮紙。
亜智が思い出したように言った。
「名前って言えば、アリスちゃん」
ナノハが即反応する。
「有栖川ナノハ!アリスちゃん禁止!」
レギーナが首をかしげながら言う。
「そういえば、結ってさ、何で亜智って名乗ってんの?」
亜智が面倒そうに答えた。
「亜流の智慧を省略したの。贋作師だから。ってかレイナ、うっさい」
異世界にきて、変わったこと、失ったこと、どれだけある?
でも私の名前は結。バラバラになった友をもう一度結ぶ。
これは、帰る場所を失った少年、劉斗。歴史から消された少女、亜智の物語。
1章完結、2章に続きます。




