第14話:ETCカードが挿入されていません
第14話:ETCカードが挿入されていません
1.遺跡周辺の異変:空気を読む魔王軍
身体能力向上チートを全開にし、風を切り裂きかなたへ消えていく伊織。
「……はっやー……」
規格外の機動力に、三人は騎兵の後ろに乗りながら呆れ半分、
感心半分の溜息をつく。
並走する馬の上で、劉斗はレギーナの能力について、亜智に質問した。
「『同調圧力の操作』。例えば、1年前の無血革命。王権からC9体制に移行したの。
『救世主は王宮に住むべき』『王に出来ないことが救世主ならできる』
と同調圧力を操作したの」
劉斗は当然の疑問を口にする。
「強力だけど、弱点はないか?」
「反証があると弱体化するの。救世主であるという空気を維持するため、
C9は虐殺厳禁。冷酷な略奪者であるという確固たる反証が民衆に広がれば、
弱体化する」
劉斗はさらに疑問を口にした。
「じゃあ、なんで亜智の存在は消せたんだ?10人いたって事実は、消せないはずだろ」
亜智は自嘲気味に笑った。
「創業時の混乱で、転移者が何人いたかなんて知っている人間は全体の1%にも満たなかったの。
『証拠が極めて少ない事実』は、『声の大きい常識』で塗り潰せる」
王宮の司令部。
ナノハはディープブルーの地図を眺めていた。
「色が、混ざっている……」
本来は赤(敵)の魔王軍。白(中立)が虫食い状になっている。
「銀輪部隊の到着まで、時間稼ぎにはなるけど」
ナノハは理解できない、と首を振った。
2.浸食する日常:サービスエリア・ゼロ
三人が遺跡の入り口を抜ける。
「ウィーン――」
場違いな自動ドアの駆動音が響き、直後に「いらっしゃいませー」
という店員の声が聞こえる。
遺跡は高速道路とサービスエリアに浸食されていた。
先頭のゲンゾウが言う。
「……なんなのじゃ、この道、この匂い」
石材はアスファルトに浸食され、白い車線が浮かび上がる。
亜智が短く答える。
「ここは、私たちが召喚される直前の場所」
『ピンポンパンポーン――』
『ETCカードが挿入されていません』
亜智が頭を振った。
「レギーナのチートは物理には干渉できない。
けどこの遺跡はレギーナのチートの燐光で覆われている」
3.ユゴスの縮まらない距離
遺跡深部は、異常空間となっていた。
伊織はセンサーであるユゴスに問う。
「ユゴス、後続との距離は?」
「200メートルだよ」
「入り口あたりか」
『番号フダ2番のお客様ー。お食事が出来上がりました。
カウンターまでお越しください――』
ユゴスが警告した。
「右前、自販機の幻影があるところに熱源反応。魔物」
伊織は某手裏剣で始末した。
電光掲示板にノイズが混じる。
『この先、現実崩壊につき注意』
『渋滞500光年』
支離滅裂な警告を流す遺跡内部。
伊織は幻影のETCゲートを蹴り飛ばす。
「ユゴス、後続との距離は?」
「200」
「なぜ距離が縮まない!」
なぜか、劉斗と亜智の声がした。
「伊織、早すぎる!」
「やっと追いついた!」
伊織がユゴスに問う。
「あの声は本物か?」
「200『インチ』だから、5メートルくらいだね」
「貴様!!」
ユゴスの小粋なジョークに、伊織は戦友を握りつぶさんばかりに力を込めます。
亜智が呆れたように言った。
「それ、間違いなくユゴスね」
「とにかく合流だ」
4.召喚の真実と、止まらない悲鳴
龍脈遺跡の最深部、龍脈の核。
水晶の柱と魔法陣だったはずが、サービスエリアのフードコートがあった。
中を覗き込むと、一人座っている。
伊織が声を張り上げる。
「レギーナ!何をやっている!!」
亜智も覗き込む。
「龍脈の力でレギーナのチート能力はブーストしているから、
遺跡が同調圧力に屈してサービスエリアになった?」
『迷子のお呼びだしを申し上げます。東京都からお越しの――』
『またレギーナ待ち?マジ勘弁してほしいんだけど』
と幻聴が響いた。
伊織がガラスを一閃する。だがガラスは修復した。
レギーナが叫ぶ。
「私がみんな召喚に巻き込んだ!
私が、あの時遅刻しなければ……。別の人が召喚されていた!
だから、私が魔王軍との決着をつける……!」
伊織が一喝した。
「召喚は人を狙ったシステムだ。遅刻も場所は関係ない!
召喚システムは、ランダムではない!たまたま、あの周辺に固まっていた!」
ユゴスが笑う。
「テケリ・リ!高いコストを払って、破滅願望持ちを呼び出さないための安全装置。
僕みたいなのを呼んじゃうあたり、装置の性能はたかが知れてるけど?」
召喚は事故ではなく、逃れられなかった。
それはレギーナを救う言葉だった。
だが、皮肉にも彼女が暴走を支える唯一の柱、罪悪感という責任を粉砕した。
「止まらないの!止め方がわからない!力が抑えられない!」




