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第10話:テケリ・リ!

第10話:テケリ・リ!

眼窩の炎が弱まる。

ゾディークの赤いチートの燐光は、劉斗のアンチチートの影響で文字化けしている。

亜智が懇願するように言う。


「おじさん、もう引いて!劉斗のチートは他のチートを妨害する。

いずれ復活できなくなる」

困ったようにゾディークが答えた。


「俺が引いたら、次はナノハの全力アウトレンジ攻撃だ。誰も逃れられない。

俺はガキどもを元の世界へ送り届けるためにやってきた。

俺がアンノウンを倒せば亜智は助かる。

お前が王宮を抜け出した時、探せなかった。

自分が骸骨になっちまって、精一杯だったんだよ。今更だが、悪かったな」


亜智が答える。

「私はもう大丈夫」

安心したようにゾディークが言う。

「道は2つしかない。劉斗が倒れるか、俺が倒れるか。

劉斗。俺のこの終わらねえ行軍を止めてくれる、最後の可能性だって信じてるぜ」


亜智が魔女に戻る。

「理解した、解放してあげる。アルベルトの『神のサイコロ』の贋作、

『確率変動』で」

劉斗のアンチチートでゾディークの蘇生確率を下げ、確率変動でさらに引き下げる。


それは何度繰り返しただろう、あたりは宵闇に包まれていた。

赤い不死鳥の炎の力は、ただの煙へと変わっていく。

劉斗はゾディークを見つめて言う。


「あんたは、神様でも天災でもなかったんだな」

満足したように、ゾディークが答えた。

「ああ……ただの、くたびれた大人さ。

……最後まで勇敢だったって、ナノハに伝言してくれ」

「遺跡でただ震えていた人間、か。」

劉斗はゲンゾウの言葉を思わず口にした。


ゾディークが消滅した跡には鎧と剣だけが残っていた。

「あのおじさん、俺の憎しみを正当なものだと理解するって言ったよな。

なのになんで、一騎打ちを申し込んできたんだ?」

亜智は、寂しげに微笑んだ。

「矛盾しているでしょ?……でもね、それが『人間』なのよ。

一年前は剣なんて持ったこともなかったくせに、最後だけ格好つけて。本当、不器用な人」


劉斗は黙々と土を掘り、鎧を埋める。最後にゾディークの剣を突き立てた。

「……さよなら、おじさん」

亜智は突き立てられた剣の柄に、そっと手を置いた。


隠れ里の様子をユゴスの分体が観察していた。

「あれがアンチ・チート。興味深いね。

僕の図書館に収蔵するに値する、実に素晴らしい『稀覯本きこうぼん』」


王都・作戦司令室

「うそ……でしょ?死なないって、言ったのに……!!」

ナノハの絶叫が司令室に響き渡った。

『ディープブルー』の盤面、不滅の「ナイト」のシンボルが静かに消滅した。


「おじさん……おじさん……っ!う、あああああ……っ!!」

ナノハは傍らに控えるセレスの胸に顔を埋め、声を上げて泣きじゃくった。

「……召喚された時も、あのおじさん、いつも笑って『何とかしてやる』

って言ってくれたのに!私がおじさんじゃなくて、便利な『不死身の騎士』

として計算したから……っ!私がおじさんを殺したのよ!!」


やがてナノハはゆっくりと顔を上げました。

目は真っ赤に腫れ、頬には涙の跡が刻まれています。

瞳の奥には、冷徹なまでの決意が宿っていました。


「……アルベルトの確率操作も、おじさんの不死の理も無効化する『アンノウン』。

おじさんが残してくれた手がかり、絶対に無駄にはしないわ」

彼女はセレスの手を借りず、自らの足でしっかりと立ち上がりました。

「ご立派です、ナノハ様。悲しみを糧にされるそのお姿」

セレスはナノハの涙を拭った。


「……おじさんの言った通り、『何とか』しなきゃいけないの。

それが生き残った者の責任。私が、この手で守り抜く」

ユゴスに言った。

「ユゴス、ゾティークのロストした位置の監視をお願い。

魔法も物理も効かない可能性がある以上、せめて動向だけでも把握したい」


「……ふふ、もうやっているよ」

ユゴスは人形のような完璧な笑みを浮かべて答えます。

しかし、ナノハは眉をひそめました。

彼の視線の高さが、先ほどまでと明らかに違うからです。


「……随分と手回しがいいわね。でも、なんだか気のせいかしら?

あなたの目線が、いつもより近い位置にあるように感じるんだけど……?」

ナノハの言葉に、ユゴスは優雅に肩をすくめました。

「君も成長期だからね。……少し背が伸びたんじゃないかな?」


その瞬間、ナノハの表情が緩みます。

しかし、背後に控えていたセレスが、無表情で、事実を突きつけました。

「ナノハ様のお召し物は、以前のままでございます。

すべてにおいて変化は認められません」

室内に、沈黙が流れました。

ナノハには怒りが宿っていました。

「……ユ・ゴ・ス?」

「テケリ・リ!テケリ・リ!」

不気味な、名状しがたい叫び声を上げながら、

ユゴスは物理法則を無視した動きで壁を駆け上がり、司令室の天窓から文字通り「脱走」しました。

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