自分を知る為に。
20✕✕年7月13日
その日俺は、自分を殺した。
病院の中の一つの部屋でテレビの音が流れる。
ニュースの内容は、昨夜に19歳の男性が小さな刃物で殺害された。なんてニュースだった。
「春人ー朝ごはん、できたわよー」
無言で布団をどかして、ベットから降りた。
階段を降りるとキィキィと音がなる。
机の上には、朝ごはんの食パンとジャムが置いてあり、ジャムの蓋を苦戦しながらもあけて、食パンに塗った。
「行ってきます」
もうお父さんが出る時間か。
「いってらっしゃい」
それに続いて俺も玄関のドアを開けて、眩しい日光を直で当たった。
5分程歩くと。
「よっ、おはよう」
ビクッと体を震えさせながらも誰なのかすぐにわかった。
「市川だろ、おはよ」
「せいか〜い、よくわかったな」
「もう2年同じ事されるとわかるわ」
「あ、そういえば石野さん彼氏居ないってさ」
心の中でガッツポーズをしながらも表情には出さないようにした。
「きもいな、ニヤニヤするなよ」
デリカシーのないヤツめ。
それほど嬉しいって事だろ。キモイけど。
そんなことを話しているとあっという間に学校に着いた。
さっき市川と話した通り、俺には好きな人がいる。石野友那、彼女は顔も良いし性格も良い、おまけに勉強もできる。
そんな石野さんの事が好きだ。
でも、一つの問題があった。
いや、大問題だ。
俺は石野さんと同じクラスになった事がない、その時点でかなり厳しい。今年で高校も卒業だし、でもそんな理由で諦めるほど拍子抜けではない。
彼女だけは、人生で絶対に妥協したくない、これだけは絶対に譲れない。
そんな俺がガチ恋するほど可愛いという事だ。
「はぁ〜1時間目体育って」
市川が呟くと
「朝から体育って、ただでさえ俺運動神経悪いのに」
誰かの呟きが聞こえた。
それにしても体育か、体育が嫌いな訳じゃないけど、朝からは普通にめんどくさい。
「終わったなーあっちぃ」
「市川廊下行こ」
市川の呟きを無視して俺が喋った。
「廊下暑いだろうが、別に良いけど、」
市川と一緒に廊下に行くと予想通り、いた。
「ねぇ、どうしよ。友那って英語の課題終わった?」
そこには案の定、石野とその友達がいた。
「うん。終わったよ。見せるよ」
「ありがとーほんっと助かった。」
女子達がそんな会話をしているのを聞いていた。
「ご満足頂けましたでしょうか?」
ご満足頂けましたでしょうか?あたまり前だろうが。
「ご満足しましたよ。」
2時間目は国語で死についての説明文を読んで自分は死んだらどうなると思うか考える、というものだった。
死んだら、どうなるかって、そんな事考えたくねえよ。
小6の時に死ぬのが怖すぎて1人ベッドで泣いてた事もあったけな。
死んだら無、そう思う。
何も考えられない、考えられたとしても一生真っ暗、そんなの耐えられない。
ずっと生きていたい、死にたくない。
そんなの、俺だけじゃないけど。
「山野さん書いて〜」
「死んだら何もないとしか言えないですよ」
天国があるなんてただの現実逃避でしかない。
「先生は天国があると思うの、天国じゃなくても何も無い事ない、」
「そんなん、現実逃避じゃないですか、」
「別にいいじゃない、死んだら無なんて、怖いでしょ?確かに実際はそうかもしれない、でも死ぬまでは現実逃避すべきだと思うの、そっちの方が都合が良いでしょ?死にたくないって死ぬよりも、天国に行けるって死んだほうが、絶対に良い」
生きてる方が、絶対に良い。
そんなの、当たり前だろ。所詮は、綺麗事並べただけ。
それからは、何事もなく普通に学校を終えた。
「なあ、死んだらどうなるのかな、」
国語の授業の事がまだ頭から抜けない。市川はどう思ってるかな。
「体がなくなるな、話変わるけど、春人これから本気で石野の事狙うつもりならさ、女子の相談相手とかいた方がいいと思うけどな、石野の事狙ってるやつ知ってるだけでも5人はいるぞ」
「俺に女友達なんているか?」
「桜とかいるだろ」
あ、居た。なんで忘れてたんだ、てゆうか桜しか女友達いないだろ。
「そういえば、帰ったDMするわ」
ちょうどそこで市川とは、解散でそれぞれの家に帰った。
横山桜に聞くのが一番だな。
小中同じ学校で、恋愛相談は桜って言う感じになっている。
でも、桜か〜、小中同じだと、やや抵抗がある。
すると後ろから走って来ているような足音がした。すぐに後ろ振り返ると。
「よっ!」
「お前か、」
後ろにいたのは、隣のクラスの黒井旬。
「俺じゃだめかよ!」
今求めているのは、こいつじゃない石野さんでエネルギー補給したいのに。
口を開こうとすると。
「山野って友那の事好きなの?」
ん?なんでこいつが知ってるんだ?市川にしか言ってないのに。
「なんで知ってんだよ」
無理に嘘ついてもバレるし、それにしてもなんで知ってるんだ?
「風の噂だよ」
風の噂って、そのセリフ現実で使うやつ初めて見たな。
「でさでさ!!どうなの?いい感じ!?」
「いや、最悪だよ。一緒のクラスにもなったことねぇーし話した事も無い。」
「DMするのがいいんじゃない?例えばさ、SNSに友那が投稿したらそれにDMで反応するとかさ」
その考えは無かったかもな、以外と応援してくれてるのか?まあ善意でやってくれてそうだし。
「良いなそれ!反応しやすいのあったらやってみるよ、あ、俺家こっちだから、ありがと」
「おうよ、じゃあな」
思ってたよりちゃんとアドバイスしてくれんだな。まあいいや、人の優しさを疑うもんじゃないな。
ん?あの子一人なのかな?何歳くらいだろ、小一くらいかな。
そこには小さな女の子が走っていた。
「きゃっ、」
あ、転んじゃった。仕方ない。
「大丈夫?どっか怪我した?」
口ではそう言ってみたけど、パッと見で分かる。膝を怪我してるっぽいな、いたそ、俺も血とかあんまり好きじゃないんだけどな。
「いたい、いだい、」
良かった、絆創膏持ってて。
「大丈夫、大丈夫、絆創膏持ってるから、泣くの我慢して偉いよ」
本当は石野に良いとこ見せようとして持ってんだけどな。
「ぐすっ、うん、」
「ユミー、大丈夫?転んだの?」
「そうですね、結構豪快に、」
「あれ?山野、春人くん?だよね?」
「なんで知ってるんですか?…え」
「良く話し聞くからね、去年はミス?でクラス全体のグループから女子消したとか」
そこには、居たのだ…までぃか、石野友那ちゃんじゃないか…てかしれっと黒歴史掘り返された。
「そんな事も、あったなぁ〜」
「あ、機嫌悪くなった、掘り返されたくなかった?ごめんねっ」
可愛くて直視できない、緊張して絆創膏に付いてる紙が剥がせん。
「無かった事にしたくてもできないのが黒歴史だから、しょうがないとは、思ってるよ」
石野はわかるーと言って…手を伸ばしてきた。
長くて綺麗な髪を耳の上に掛けて。
「こうやると、簡単に取れるんだよ」
「あ、本当だ、」
ごめんなさい、何も聞いてませんでした。
「以外と不器用なんだねっ!偏見は良くないな、私、ん?何か付いてる?」
「あ、ううん、付いてない」
「お姉ちゃんと付き合ってるの?」
「っ、付き合ってない!…よ」
だといいなぁ〜
「ごめんね〜最近この子恋愛もののアニメ見始めてて」
「じゃあ、ありがとね、ばいばい」
「うん、じゃあね」
家に着いたけど、つい、その場に座り込んでしまった。
「はな…せた。」
部屋のベッドに飛び込んだ。
桜にDMするか。でもなんて送ればいいんだ?いや、こういうのは正直に行こう。遠回しに言うのじゃ、なんか違う。
『俺さ、石野好きでDMしようと思ってるんだけど、最初どんな感じでしたらいいかな?』こんな感じだろ。「ピロッ」もう来た早いな。
『んーやっぱ投稿とかに反応するのが良んじゃない?』
旬と同じ事言ってるな、まあそれ以外ないか。
『わかったいい感じの上がったらやってみる。ありごと』あ、誤字った。
グッドマークのスタンプが来て桜とのDMは終わった。
「なあ、市川、DMするわ、石野に」
「おぉ!まじか!どんな風にやんの?」
「いい感じの投稿したら反応する。取り合いずは、DMしないと」
すると、近くにいた旬が、こっちに来た。
「山野DMすんの!?」
「うん」
「俺も彼女欲しいよ。友那の事狙っちゃおうかな?」
悪いな、お前の恋愛に興味なんてない。
「好きにしてくれ」
「俺が狙ったら山野じゃ勝てねぇよ」
旬は笑いながら言った。
そんなに自身があるのか?
いや、別にいいか。深い意味なんてないだろ。なのになんでだろう、なんか違和感がある。歯に肉が挟まって取れないような感覚。
「おい、もうチャイムなるぞ。」
「お、ナイス市川、じゃあな旬」
旬は、やや早歩きで教室に無言で戻って行った。
それからというもの、旬のあの一言が絡み付いて取れなかった。
それからは、何事もなくいつもと同じように過ごし、家まで帰ってきた。
なんか、どっと疲れたな。
漫画でも読むか。
ふぅー18巻終了とっ、良かったな、味方だと思っていたやつがとんでもない裏切り方したのは、衝撃的だったな。早く19巻が発ば。
机に置いていたスマホから「ピロッ」と音がなった。
誰だ?未読無視はなんか悪いし。
『おい!石野が投稿してるぞ!アーティストのやつだから反応しやすいだろ』
え、ウオオオオアアアア。興奮が収まらねぇよ。やべぇだろ。
取り合いず返信するか。
『ホントだ!いい感じでDMしてみるわ!ありがと』
よし。やるぞ。やるぞ。やるぞ。
俺の心臓は素早く動いていた。まるで、運動会が楽しみで眠れない小学生のように。
『そのアーティスト最近聞き始めたんだけどおすすめある?』
やっちったよ。もう寝たい。朝起きたらDM来てた的な感じが良いなあ。そっちの方が気が楽だ。
「ピロッ」
『黒い悪魔って曲がおすすめだよーあと死後って曲』
うわっ来ちゃった。なんかすぐに既読付けるのはキモイよな。
1分くらい時間を空ける。
どうしよ、なんて返信したら良いんだ。
やばい。やばい。やばい。やばい。
心音がうるさい、頭が真っ白になる。
結局おすすめされた曲も聞いてない。もういいや、好みだった事にしよう。
『ありがと、めっちゃ好みだった。』
『良かったー、あとこの前ありがとね』
くっっ〜、たまんねぇ。
伸ばし棒付ける時点で可愛い。最高ですっ!
そしてきっちり、旬と桜に報告すると。
ボロクソに言われた。
「もっと話続けろよ」
「短すぎる」
「なめすぎ」
ちくしょう、そんなの俺だってわかってるわ、一瞬の会話で満足しちゃ悪いかよ。
それでも初めてのDMが出来た。1歩前進といったとこだろ。いや、現実で一回話せし、2歩くらい全身してるよな。
それだけで俺は満足したと同時にもっとそれ以上の関係になりたいと思った。
もっと好きになった。
それからはまたいつもの生活に戻り着々と事が進みいい方に進むと思っていた。
俺はスマホを閉じて洗面所に歩いた。
ドライヤーをしながら考える。
DMしちゃったな、あんな可愛い子が俺の彼女になったら人生薔薇色じゃねえかよ。
付き合ったらまず遊園地に、映画にも行って、あと誕プレ買ったりか。その日が待ちどうしい。
そんな妄想をしていると、市川からのDMがあった。
「ピロッ」
『今度自転車で遊園地行こぜ』
いや、行けなくはないけど何時間かかるんだよ、めんどくせぇな。しかもなんでこいつと、彼女とデートで行くとこだろうが
『パスで』
『おい、遊園地だぞいいのかよ行かなくて』
『自転車って、ふざけてんのか、何時間かかると思ってんだ』
『40分くらいだってよ調べた』
『チャーリーで40分か』
チャーリーとは、俺の相棒の名前だ。
細くて美脚な足があり、おまけにペットボトルとスマホも持ってくれる。
『自転車に名前なんてつけるな結局行くの?』
『はいはい、行きますよ』
機嫌を損ねてはいけない。
明日は土曜だし。行くか。
「おーい早く行くぞ」
「はいはい」
「よし行くぞっ!チャーリー!」
何事もなく遊園地に着くはずだった。
事件が起こったのだ。遊園地目の前の信号で。
「信号あるあるな、青はすげぇ短いのに赤はクソ長い」
「そんなもんだろ、車は常に通るし」
青になりチャーリーを進めると。
「バギギギィ」
チャーリーが横断歩道のど真ん中で悲鳴を上げた。
何が起こった?
チャーリーが…やば、渡らないと。
俺は取り合いず横断歩道を渡り切ろうとペダルをこぎ始めた。
すると進まなかった。
道路のど真ん中で必死にペダルをこいでるのに進まなかった。
馬鹿の一つ覚えだな、進まないのに漕ぎ続けるなんて。
チェーンが外れたのか。ちくしょう外れたのかよ。
チャーリーにまたがり、足で地面を蹴り進んだ。
滑稽な姿だ、恥ずかしくてしょうがない。
しばらく適当に遊んでもやはり気分が乗らない。
人間だったら大怪我ってレベルだな。
「俺、もう帰るわ」
「んじゃ、帰ってレストラン行こっ」
無言で進むと、またチャーリーが悲鳴を上げた。
「バギーグギギー」
チャーリーが泣いてる!どうした?
「あれ進まない、タイヤが回んない」
チェーンをよく見るとわかった。チェーンが引っかかって動かないのだ。
チャーリーに無理させるから進む事すらできなくなった。
「マジかよ、一切タイヤ回んない」
市川が無理やり戻そうとしたが。
「おらっっっー」
ビクともしなかった。
仕方ないけど、後ろのタイヤを引きずって家に向かう事にするか、家までかなり距離があるのに最悪だ。
チャーリーを動かし続けると。
「たったったっ」
後ろのタイヤを引きずってるからか、変な音がなった。こんなんで大丈夫かよ…あと家までとんでもない距離あるのに。
2時間くらい進むと。
「パンッ」
「何今の?」
「ビニール破裂したのか?」
市川がそう言うからそうゆうことにしてチャーリーを進めると違和感があった。
薄々気づいていた。
タイヤを触ると、ぺこっと完全に空気の抜けた感触だった。
そう、パンクしたのだ。
「ぴゅぴゅぴゅ」
パンクしたタイヤを引きずると、スター〇ォーズに出てくる光線銃みたいな音がした。
ちくしょう、チャーリーの足とも呼べるタイヤがパンクしちまった。
ごめんな、チャーリー
この自転車で家に帰るのは何より恥ずかしかった。
「ぴゅぴゅぴゅ」と音がなっているためすれ違った全員がドン引きしたような顔で見てくる、最悪だ。
結果何時間もかかってようやく家に着いた。
最初の方は時間も見ていたが、途中からめんどくさくてやめた。
そんな過酷な日々を乗り越えると、娯楽も待っているのだ!
「修学旅行だ!!」
「ようやくだな!」
明日には、もう出発。
ちなみに修学旅行先は沖縄県。
あのライオンモドキ見たいな置物があるところだ。
そ・し・て。飛行機の俺の前の座席にいるのだ。
俺の未来のハニーが。
もし、ここで話すことが出来たら俺の青春は1歩前進、いや、10歩くらい前進だ。
そして次の日。
空港に向かった。集合場所は、空港だったからだ。
さてと、どこにいるかな?
まず、ハニーを探します。
おっと、見つけた。
まずは、顔。うん。可愛いな、髪型は、何!?
いつもと違う髪型になってる。俺は髪には、知識がないから名前は分からない、でも可愛い。
体の隅々まで見ていると、隣からニヤニヤとこちらを見ている顔があった。
「なんだよ」
「いーや、なんかなって」
別にいいだろこの微笑ましい光景を変な目で見ないでもらいたい。でも市川がそんなことしてたら冷たい目で見るんだろうな、俺。
そんな事を思ってる間に、もう出発時間らしい。一組からの順番で、少しづつ飛行機に生徒が乗って行く。席に着くと、前に来た。
「良かったな」
市川がつぶやいた。
「静かにしろ」
前の座席に石野がいるのか、なんて言うか、想像するだけでたまんねえな。
「ニヤつくな気持ちわるい」
「うるせぇよ、俺は人生をかけた挑戦をしてるんだ!」
そんな会話をしてる間に飛行機は飛んだ。
「おおーめっちゃ揺れるぞー」
「やっぱりお前、飛行機の羽にしがみつけよ」
知らんやつがしれっと、とんでもないことを言っている。
いや、めちゃくちゃすぎだろ。羽にしがみつくって。
「むちゃくちゃだな、羽にしがみつくって」
市川が苦笑いをしながら反応していた。
「なんか眠いな」
「おい、まて、寝るな春人話が違うぞこれだけのためにあれだけ楽しみにしてたのに」
くそっ眠気が来た。俺は睡魔に耐性を持っていない。こんなことで。いや、負けない。手で無理やり目を開ける。
俺には石野友那というSSRのサポートがいる。バフ量は、全人類トップクラスだ。
そんな環境人類がいるにもかかわらず睡魔に負けるのか。
ゆっくりと目を開けた。
「起きたな、もうさ、えっと、その、ね」
ちょまてよ、やだ、信じたくない。
負けた。
「お前はすげぇよ、頑張った。」
真顔でいるとすぐに答えてくれた。
「白目で寝てた。」
え?ちょ、嘘だろ!?
「白目で寝るなんて滅多にないから先生が写真撮ってたぞ、あとついでに、石野に…」
「だまれ!それ以上喋るな、それ以上は禁句だ。」
それからは何も考えてなかった。気づいたらホテルに着いてた。知らない間になんかの施設に行く体験が終わってた。
それにしてもショックだな、石野のバフがあってしてもどうにもできないのか。
「なあ、市川どうした?あいつ、修学旅行に来て顔が死んでるやつなんて聞いた事ねえぞ」
「春人は人生の好機を逃したんだ、そっとしてやってくれ」
俺の死に顔はそんな酷いってのかよ。
「ねぇ、なんか、あそこにゾンビがいる」
「え、ホントだウケる」
うるせぇよ、知らん女子が言うほど酷いのか。
そんな事を言われながらも俺は部屋に着いた。
部屋班は、市川と一樹、阿部あと俺の4人。
「うおっベッドだー、ひっろ」
阿部は言いながらベッドに飛び込み、ギィィと音を立てた。
「6時まで自由時間だし、トランプしようぜ」
一樹は準備よく、トランプをリュックから飛び出した。
結果は、俺は1位を5回で2位が8回だった。
他の連中はと言うと、市川は全部3位か4位で、他2人はぼちぼちと言った所だ。
「春人には勝てねぇ顔が真顔すぎてぜんっぜんわからん」阿部が言うと市川が反応した。
「ほんとそれ、なんか目が真っ黒で目のハイライトがない」
市川はこれが石野のバフか、とか言いそうだけど違う。俺は今デバフにかかっている。
トランプでは有利でも、人としてはやっていけない。
すると「ガチャン」と部屋のドアが開き。
「おーいもう6時だ、地下の温泉行け」
先生はそれだけ言うと、違う部屋にも声をかけに行ったそうだ。
4人ですぐに準備をして、地下の温泉に行くと俺達4人以外にもクラスの男子がいた。
「全員で入るんだな」
「班で入ってたら効率悪いだろ」
阿部と市川の会話を聞きながらも服を脱ぎ、ドアを開けるとそこには。
「おい、お前のデカすぎだろ」
「なんだそれっ」
そう。目の前には…性剣エクスカリバーがあった。中には、ビックカリバーやスモールカリバーもいた。
「なんだよ、みんなそんなにでかくないって言ってたのに、嘘つくんじゃねぇよ」
俺の隣には、スモールカリバーのやつが悲しそうな顔をしていた。
ちなみに俺のはと言うと、ノーマルカリバーだ。
「ん?おま、お前…なんで」
「耳をすましてみろ、聞こえないか?」
「な、なんっだと。」
「俺の聖剣エクスカリバーはすぐに戦闘状態になる」
すると俺の隣のやつが喋りだした。
「何が聖剣だ、漢字で書いてこっちだろうが」
彼は指で鏡に性剣と書いていた。
「ぶっははは、」「こっちだな」「性剣エクスカリバー」と言いながら男子が笑っていた。
もちろん、俺もです。ごめんなさい。
「春人サウナ行こうぜ」
俺と市川はサウナに入ると妙な噂を聞いた。
「この前さ、石野と旬が一緒に駅の近く歩いてたらしいぜ」
「へーどんどんリア充が出来上がって行くんだ
なー、旬」
その場には旬もいて会話にも参加していた。
「付き合ってねえよ。なんなら一緒にも歩いてないっつーの」
だよな、正直、真に受けてなかった。どうせテキトーな会話が噂でホントっぽくなっただけだ。本人もあー言ってるし。
下に敷いているマットを取って市川と一緒にサウナを出た。ドアの前にある桶を使って水を頭からかけると温まった体には、そんなに冷たく感じなかった。
30分程して温泉を出て部屋に着いた。
「なあーあと何分でメシだ?」
一樹の問にドライヤーをしている阿部が答えた。
「4」
「あと4分!?」
「違う、40」
5秒くらい沈黙があり、その少しな時間でもたくさんの音が聞こえた。鳥の囀り、誰かが廊下を歩く音、女子が下の階で騒いでる音、この盛り上がり具合だと恋話か?
「罰ゲームありのトランプしようぜ」
「じゃあ1位は2位、3位、4位に普段しないような質問で、2位は3位と4位に質問、3位は4位に」
「いいなじゃあそれでいくか」
「4位はその拷問を3回もさせられるのかよ」
「負けたやつに拒否権はないんだ」
4人全員が納得した様子で、始める事なった。
結論は、負けました。
1位が一樹、2位が阿部、3位が市川、4位が俺。
ちくしょう最悪だ、なんでよりによってこういうのを始めると負けるんだ。質問は絶対答えないといけないからな。
みんな好きな人は誰かなのか、女の子の上か下どっちが好きかなど、質問し合い。俺が質問される順番になった。
一樹は、女友達がいるかなどを聞いて来たが桜がいるから居ると答えた。
すると阿部が質問してきた。
「もしさ、もし、石野に彼氏がいたら、どうする?」ここにいる全員は、俺が石野の事が好きなのを知っている。
「なんでそんな事聞くんだよ、縁起わりいだろ」
俺が付き合えないと思ってるのかもな、でもそう思っても仕方ないだろ。でも俺はやる、やってやるよ。
「どうすんだよ」
一樹が急かしながら言った。
「諦めるよ」
「なんか意外だな」
「嫌われたくないし、あの人はきっとしつこい人が嫌いだろうから」
前の彼氏と別れた時、とんでもなくしつこかったそうだ。もし無理だったら石野の幸せを願うしかない。てかそれしかできない。
俺達は夜飯を食べに移動した。
「すき焼きだ!」「うまそぉー」などの声が聞こえてくる。
「お前らー、クラス事に番号順で座れー」
「座ったやつから食っていいぞぉー」
自分の席に座った。
まずは、すき焼きだな。やっぱりご飯と一緒に食べるのが何よりも美味い。
あ、もう無くなった。
「晴人もう米食ったのか、はえーな」
「うん、米入れてくる」
「おう」
米は自分で入れるらしい。しゃもじを隣に添えてある水に付けてご飯を入れた。
なっ!友那ちゃんじゃないの!
「入れよっか?」
ここは男らしく、レディに手間をかけさせてはいけない。
「いいの?」
当たり前じゃあありませんか!
「どれくらい?」
「多めでお願いしますっ」
「はい、」
「ありがとね」
愛おしい、最後も男らしく。
「おうっ」
俺は思いつく感じで超イケメン顔で言った。
「ふっ、何〜?その顔?」
そんな上手くいかんな、これが人生てか。
かっこつかねぇな、でも、嬉しいな、好きな人は笑顔にするって。
そのまま夜飯を食べて部屋に戻った。
俺が寝る準備をしてると一樹が聞いてきた。
「山野もう寝んのか?」
「うん、結構疲れてる気がするからさ」
「そっか、おやすみー」
「おう、おやすみ」
ベッドに入ると、すっと眠りに落ちていく気がした。
「はっや、もう寝てね?」「まじじゃねえか」
うっすらとそんな声が聞こえた。
そして今はベッドの中である夢を見てた。
風は一切吹いてなく、体の感覚も一切ない目の前には1人の女性がいる。
探し求めて来たものがようやく見つかったような、子供のように純粋で、何かを喋っている。でも声は聞こえない。満面の笑みで泣きながら。
ああ、この夢はもう何度見たんだろう。
数え切れない、何十回も何百回も見てきた。
俺のお腹には穴が空いてる。でもそれがなんかしっくりくる、とても嬉しい感覚になる。
初めてこの夢を見た時も、どこかで見た事のあるような光景なのになぜか嬉しかった。初めて見るのに。
人には説明できないような事がこの世界にはある。死んだらどうなるのか、これは自分でも何度も考えた事がある。こわい、死んだら全く記憶がなくなり何も考える事ができない。もし生まれ変わっても、生まれ変わった事にすら気づかないのだから、もしかしたら俺もそうなのかもしれない、もしかたら。
すると、ブォーンと音がなっていた。
ゆっくりと目を開けると、夢から覚めていた。
「お、おはよっ」
「うん、おはよう」
朝になり阿部がドライヤーを掛けていた。
今日はもう帰る日か、うちの学校は少し変わっていて修学旅行だというのに2日で帰宅になってる。
本来2日目には、仕事の体験みたいな事をしてたそうだが、過去に問題がありなくなってしまったそうだ。何があったのかは知らないけど生徒のせいなら辞めて欲しい、おかげで俺達別の代が迷惑してるのに。
そして、俺達全員で正直微妙な朝飯を食べて、その後はクラス別でそれぞれのバスに乗って、観光に向かった。
「あ〜〜〜こ、イ〜のアジ〜は〜ワたシが〜」
今現在我々は、バスの中にいる。そして、その中には悪魔が出現した。
「悪魔に鼓膜破壊されるぞ」
俺達のパーティーには、ヒーラーはいても、状態異常を治癒できる魔法使いがいないのだ。
これくらいで茶番は置いといて、なんとくわかるだろうがバスの中でカラオケが始まったのだ。女子がやりたいやりたいと喚き散らすから案の定、このザマだ。
とんでもなく酷い歌だと俺ですらわかるこいつは、カラオケ行く時だけハブられるタイプのやつだ。ちなみに俺は最高が73点。知ってる、この点数もカラオケでは、低いのもわかってる。でもさ、仕方なく無い?カラオケって、ねえ、難しいじゃんか。
俺はカラオケが下手なやつの気持ちは理解できる。申し訳ないが、あいつはわからん。
そんな下手クソなカラオケを聞いている間に、せいぜい1時間30分程度で観光地に無事到着。
俺の班は、モブ女子2人と俺、市川あとは坊主の田中君だ。
早速俺達は、観光ではなく1番近くにあったコンビニに行った。
「おー見ろよこれ、でっけー」
田中がそういう系の雑誌を手に取り突然言い出した。さすがの俺でもわかる。これは流石に許された行為ではない注意しなくてはいけない。
「すっげー肉まんみたいだ」
「おいっ」
結局止めたのは市川君でした。
それでも懲りてない田中君はまたそういう系の話題を出した。
「おー見ろあれ、ショウケースの中におっぱいが並んでる。あ、あの人おっぱい買った」
「田中ってさ、ほんっとキモいよね」
「それな、マジキモイ早く………」
ダメだモブ女子の1人がNGワードを言ってしまった。
それにしてもあまりにボロクソ言われてて可哀想に見えてきた。
「気にすんな田中、あんなまな板見たいなやつはさ」
おいこっちの方がひでぇーな、市川さん情緒不安定かよ。
その後、コンビニを出てぷらぷらしていると、ピッピッ。ピッピッ。
センサーが反応した!なんのセンサーかって?決まっているだろ。俺の中の石野センサーが反応しているのだ、この近くにいるのは間違いない。北、いや違うっ。南だ!発見!!
目の前にいるではないか!このまま歩くとすれ違う形になるが。
「あー友那ー」
「あ、ゆいー」
オーマイガーさすが班長!言ってなかったけど、相川優衣がこの班の班長をやってる。これといった特徴はありません。
「石野ー今日のパンツ何色?」
田中こいつ石野さんにパンツの色を聞いただと、石野さんのパンツは何色なんだ。気になる。可愛いらしいピンクかもしれない。安定の白か黒かもしれない。それとも大人っぽいパンツを履いてるのかも。
うわっ、石野の目が、なんて言うか。虚無だ、何も考えないようにしてる。気がする。
おい、まじかよ。誰かどうにかしてくれよ、この空気。
「田中ー修学旅行終わったら次の日職員室こい」
俺はパンツの事しか考えてなかったけど、先生がいたらしい。
「行くか、」
市川がまっっ黒い目で先頭を進んだ。
それから20分程。誰もしゃべらなかった。ていうかこの空気で喋れるかよ。
俺がどうにかするか、修学旅行が終わるまでこれはヤダな。
「なーえっとさ、あ、あれ見に行こぜ」
「うん。」
相川さんが真っ黒な目のまま、それだけを答えた。
1時間後、俺達はバスに乗って、女子2人は出発前にトイレに行った。
「おいってめぇ、なんてことしてくれたんだ!空気ぶち壊しじゃねぇか」
市川がビッチ田中に言うと、田中は困ったような顔をしていた。
「えー俺のせいかよ」
許せん。あの石野のパンツの色を聞くなんてあってはならないことだ。石野のパンツは想像だけで良いんだ、現実でそういう事に触れてはいけない。暗黙のルールというやつだ。
「それ以外誰がいるんだ!」
そんなことを話してるうちに女子が戻ってきてバスが出発するアナウンスが流れた。
『あい、ではね、えーと出発したいと思います。どうでしたかね、楽しかった?俺はね朝すっごい早く起きて大変だったのよね、ほんっと5時起きだぞっ!こんなハードな仕事なのにホテルじゃなくてビジネスホテルで安上がりっていうさ、大変だよ、おじさんもね。その後が…』
いつまで続くだこの話は、正直どうでもいんだよおっさんのよく分かんない話は。いやわかんない事ないけど。
『あい、じゃあーね出発しまーす。』
ようやく出発かよ、明らかにこのクラスだけ出発が遅いのが分かる。もうこのバスを覗いて、最後のバスが行ってから2分はかかった。
夢を見た。
前と全く同じ夢というわけではなかった。今日は知らない女の人と遊園地で2人だけで遊んでいた。
すると、正面から小さなナイフを持った男が徐々に加速しながら走ってきた。
そこで怖くなって跳ね起きた。
夢なのは分かってても怖いものは怖いな、正夢とかになったら絶対嫌なんだけど。
今どこ走ってるだろ、そう思いバスの外を見ると高速道路を走っていて、隣を走っているバスに乗っている石野と目があった。
え、ちょ、待ってくれあとちょっとだけ…
隣に並んでいたバスが抜かして行ってしまった。
目、あっちゃったよ。てか追いついたんだな、出遅れてたこのバス。
それから1時間程たって市川が降りるらへんまで来た。
「じゃあな」
「うん、また月曜」
俺は次のとこで降りないと。
まだあの瞬間が脳裏にこびりついてる。石野と目があった時のが、もう運命だろこれ、普通に、こんな事運命でもないと起こらんだろうし。
修学旅行が終わってから2週間ほど経った。
最近変な噂話を聞く。石野と旬が2人で駅の近くを歩いていたとか、カフェに2人でいたりとか、2人が付き合ってる疑惑がある。正直俺は嘘だと思っている。誰かの流した嘘が大事になっただけ。
「お前もリア充の仲間入りか、」
「付き合ってねえーよ」
旬はそう言ってるみたいだし。軽く考えていた。
そんな噂が流れつつも数日経過し、廊下に笹が設置された。
もうそんな時期らしい、個人的に紙に願いを書いて笹に付ける生徒も結構いた。
「なあー春人俺らもあれやろうぜ」
「おうっ」
俺も市川と一緒にやることにした。
『付き合えますように』俺はもちろんこれにした。ちなみに市川は、『親友に彼女ができますよに』
こいつ優しすぎやろ、俺は嬉しいよずっと親友で入れるといいな。
笹に願い事を付けようとしたら誰かが付けた願い事に目がいった。
自分の願い事を書いた紙をポロッと手から落とし、ヒラヒラしながら床に落ちた。
『”続きますに” I Y』
I Yって石野友那って事だよな。
えっ、え、ちょ、は?なん、え、なんで。
「おい落としたぞ」
心臓の音がうるさい、もどかしいくらいに。
目の前がボヤけた、まるでモザイクでもかかったかのように。
「手が滑った。俺やっぱり付けなくていいや」
「え、いいのかよ。叶うかもしんないのに」
「も、もうチャイムなるし戻ろうぜ」
「お、おう」
自分の席に座りうずくまった。
あれ、なんだよっ、いや、もしかしたら誤解かもしんないし、なんか別のさ、そんだそれだ!きっと、勘違いだから。
きっと。
だめだ、何も思いつかない、別の意味が、なんにも。
家に帰って桜にDMした。
女子の方がわかりそうだし。
『やっぱり友那の彼氏旬だよ、私もそれっぽいの塾帰りにみた。』
あーそうだよな、間違えであって欲しい。
『俺もう諦める』
『いや、無理に諦めなくても』
目の前にまたモザイクがかかった。
誤字ってばっかり、その度消して、消して、消した。
『諦め時だよ、これ以上好きでいたらさ、もっと辛くなりそうだから』
『諦めるのも大事なのかな、でもやっぱりらしくないよ諦めるなんて』
『らしいとかそういうのじゃないんだよ、簡単じゃないんだよ諦めるの、どうしようもない事だってあるんだから』
『まあ適当に次探すよ』
『そっか、友那超える人いるといいね!』
『いるかな〜まあぼちぼち探してくかな』
そんなんでDMが終わった。
終わった。
諦めた。
多分あの人はしつこい人が嫌いだろうから。だから。
諦めた。
辛かった。
桜の言ってる通り無理に諦める必要ないと思った。
でも諦めた。
最初から無理なのくらい薄々気づいてたから。
もっと好きになったら引きずるから。
立ち直れなくいくらい好きになる前に手を引くのが得策だと思った。
諦めるのは簡単じゃない。
どうしようもない。
泣いた。
ずっと泣いた。
泣いて。
泣いて。
泣いた。
なんでだろう、諦めたのにまだ、モザイクがかかってる、手もビショビショになってる。
あ〜終わっちゃったな。
愛されないことは俺が1番わかってた。叶わない恋だって知ってた。
でも、このザマだ。
俺が今までしてたのは想像じゃなくて妄想だったのか、意味があってるのかは分からないけど、俺は実現出来ることが想像で、絶対に実現出来ないことを妄想だと思ってる。
もう死にたい、死ぬ勇気すらないくせに。
しょうもな。
学校に着くと、いつもどうり市川が居て、クラスの女子、男子が居て、廊下にいると、いつもどうり旬が近づいて来て、旬が、近づいて来て。
あ、そういうことか、SNSでもおかしいと思った。いつも旬からいいねが来てたのに付き合ってる噂が流れ出したころにいいねが来なくなった。
ん?じゃあ旬は、俺になんであんな事言ったんだ急かすような事したんだ、なんで。
”あいつ”はそういう奴なんだ。
俺が読んでた漫画みたいだ。
今日は早退した、頭が痛いと嘘を言って。
家に帰り、泣いた。
昨日はもう諦めてもう無理ってなってどうしようもなくて泣いた。
今回はなんだろ、”あいつ”に取られたのが悔しくて。
辛くて。
怒りが込み上げてきた。
それと同時に絶望感もある。
悲しみ。
苦痛。
なんか凄い込み上げてきた。
俺はあの”クソガキ”に弄ばれてたのかな?
楽しかったんだろうな。
愉快だったんだろうな。
泣いた。
たくさん泣いた。
本当に泣いた。
ここ1週間毎晩ずっと泣いた。
ずっと。
”あいつ”DMをした。直接話す勇気がないから。
『お前が石野と付き合ってる前提で話すけど、今までのDMなんだよ』
『なにが?笑、噂でしょ俺に彼女いないて』
『だまれ、ふざけてやったんだろ』
『なにが笑』
『ふざけたDM送りやがって、学校でも何事もなかったみたいに話て来て。ふざけんな』
『2度と話しかけてくんな』
『あ、はい』
『てかなんで俺がそんなこと言われないといけないん?』
『お前の恋愛応援してただろ』
『無理なの分かっててやっただろお前だけなんだよ、頼んでもないのに積極的にアドバイスしてきたの』
『俺なんか悪い事したか?』
『こっちの気持ち考えたことが少しでもあったか?』
『なにもしないのが得策だったな、学校でも話しかけんな、DMもしてくんなよ』
次の日。
石野は旬と俺が縁を切った事を広めてたそうだ。
「旬は、あーはいみたいな感じなのにそれに対してめっちゃ返信してんのマジウケる」
桜がDMで教えてくれた。
俺の中の石野友那という理想像がことごとく壊れていく。
正直言われて困るのは、俺じゃない。
まじか、そんな人だったんだ俺ボロクソ言われてんだな、いやもういいか、なんか全部どうでもよく思えてきた。
あの人、別に性格理想じゃなかったからいいや、俺は絶対に自分の彼女だけは妥協したくない。
絶対に。
次の日学校に行った。
あ、あの人だ、痛い心臓が痛い。
なんか、俺のハートが鷲掴みされてる感じだった。
家に帰って考えた。
なんでだろう、
考えて。
考えて。
考えた。
”俺の理想じゃないから別にいい”
この単語について自分がどう思ってるのか考えた。
まだ好きなんだろうなあの人が。
まだ。
まだ。
違う。
まだ。
大好きなんだ。
”あの人”が
俺の理想じゃないから別にいい、
”あいつ”に取られて、自分があの人と付き合えなかった。
それの”言い訳だ”。
必死に考えて導き出した答えがそれだ。
俺は自分が大嫌いだ。
自分に嘘をついて。
理想じゃなかったから別にいい。
自分が間違ってないと言い聞かせるための嘘。
自分を1番知ってるのは自分だと思ってたけどそんなことなかった。
まだ誰も俺を知らない。
俺は自分を知らなきゃいけない。
”自分を知る為に”
まだ好き。
俺は嫌いになろうとした。
あの人にボロクソに言われて性格が悪いのを知って。
でも。
無理だった嫌いになろうとしたけど、無理だった嫌いになれなかった。
ボロクソに言われても、思わせぶりをされても、まだ好きなまま。
でも俺がまだ好きなだからといって何かが変わるわけじゃない。
この件で自分をどう知るかが大事なんだと思う。
考えよう、自分を知る為に。
考えた結果は、分からなかった。
でもそれでいい、そんな簡単に自分を知れてしまうなら最初から困ってなどいない。
だから。
長い時間をかけて考えよう。
卒業までに。
”自分を知る為に”
その夜、考えたゆっくりと、自分を。
自分を知る為には、まず周りの人間から見た俺はどう写っているのかを知るべきだと思った。
その為には、他人を知るべきだと。
俺は考えた。
他人を知る、それは性格を知ることじゃないよな、なんか上手く言えないけど他人を知ることその人の考えてる事を知るとか、相手の小さな変化にも気が付けるって事だと思う。
俺みたいに本当に思っている事を辛くても隠して普通にしてる奴は絶対どこかにいるだろうな。
俺は人の話を聞くことや観察することが大事だと思った。
「ブン」
スマホに通知が来た。
市川からだ。
実は市川にも好きな人はいる。
だから俺は相談にのっていた。
『俺、恋愛まじでしたこと無さすぎて無理』
俺は返信を考えた。
恋愛をしたこと無さすぎて。
それはいいわけだな、あ、よしこれにしょう。
返信を決めた。
『じゃあ聞くけど、恋愛は何を目的にするもの?』
まず恋愛というものの本質を知るべきだと思った。
2分くらいたって返信が来た。
『好意を伝えるもの?』
確かにそうだな、俺は恋愛に答えはないと思う。
考えは人それぞれだからだ。
その人がどう思い。
どういう形で思いを伝えるか。
恋愛も相手を知ったうえでするものだと思う。
『俺は答えなんて知らない。それが答えだと思うならそれをすればいいと思う。』
俺はそのままメッセージを送った。
『後悔しないためにどうすればいい?』
2分くらいたち返信が来た。
『難しい』
だろうな、俺も分からない。
でも今の俺の課題でもあることをそのまま言った。
『無理に今答えを出さなくていいんじゃない?時間をかけて答えを出せばいい』
『めっちゃ心に刺さった笑』
真面目に答えすぎたのだろうか?
いや真面目に考えるべきだな。
『今思う後悔をしないようにすればいいよそしたら自然と出てくるんだろうね』
これは俺もそうだ。
そんな感じでDMが終わった。
俺はベットに横になり泣き目になった。
辛い、自分があんな終わり方して、それなのになんで俺が市川の相談なんなきゃいけなんいんだ。
1ヶ月後市川には彼女が出来た。
そこまでは良かった、が。
2週間後には、もう別れたそうだ。
市川から聞くに元カノは、『試しに付き合ってみたけど、なんか違ったからさ、ごめんね』
って言われたそうだ。
市川はそれで俺に愚痴ってる。
『試しで付き合うって、ダメだろそれ、こっちは本命なのに』
『まあ、それはそうかもだけどそれはあっちの立場にならないとわかんないよ、もしかしたら付き合ってすらいなかったかもしれないしさ』
『それはそうだけど、』
『いつでもいいから愚痴りたくなったら躊躇なくDMしろよ』
あぁ、そっか、俺にはこういう人が欲しかったんだ、遠慮なんてしないで満足するまで話を聞いてくれるような人が。
市川の話を何日か聴きながらも最近ようやく心が楽になってきた。それでもまだ引きずっているのは事実、でも毎晩泣くような事は無くなった。おっとここは恥ずかしいからどれくらいの期間泣いてたかは省いておこう。
やっと楽になってきたはず、だった。
スマホからピロッと音がなった。
ロック画面には、旬から画像が来たとなっていた。
DMすんなっつたのに、なんかやな予感がする。
見ない方がいい気がする。
俺は若干手が震えながらアプリを開き、旬の送ってきた画像を見た、とたん、雨でも降ったのか、スマホに水滴が落ちた。それも一滴じゃない。
あれ、おかしいな、ここ俺の部屋なのに、あーそういう事か、俺の部屋2階だから雨漏りでもしたのか、瞬きをする度に雨が落ちてきた。
もう寝よう、なにもかんがえないで。
朝起きる。
枕は雨漏りでビショビショになっていた。
スマホを持つとDMが来てた。
『何か言ってみろよ笑』
旬からだった。
俺はお母さんに学校を休むとメールした。
ベットに顔まで入れて潜り込み、水が染み込んできた。
わかってる。
その水がなんなのか。
でも、いや、もういい、なんで、俺だけ、こんな、なんで、いい事も悪い事も交互に来るもんだろ普通、なんで、なんで、なんで、悪い事が沢山続いたら、いい事が大きくなって、来る。
とは、限らないんだな。
久しぶりの光景だな、背景は真っ白で。
なんか違うな、こんの夢は初めて見た。
そこは病院で病院の中の一つの部屋でテレビの音が流れる。
ニュースの内容は、昨夜に19歳の男性が小さな刃物で殺害された。
ベットに横たわっている女の人は泣いていた。
顔はくしゃくしゃで、びちゃびちゃになっていた。
なんでだろう、このニュースで死んだ人はこの人の大事な人だったのかな。
心臓が締め付けられてる感覚が鼓動と共に強く、早くなった。
あぁ〜まただ。
これこそ意味がわからない、なんで泣いているんだ。
こんは赤の他人の事なんか、正直心底どうでもいいとも思っているのに。
もう、こんな悪夢早く目覚めろよ。
目覚めると真っ白な天井が映っていた。
心臓が痛くて、うるさい、今日は木曜日で明日は祝日だから休みで。
あ、今日学校だ。今は10時17分、遅刻した。
なんで母さん起こしてくれなかったんだ、仕事行く前に起こしてくれても良かったろ、家から出てそんな事を思って走ってると。
うわっ、痛った、何かが突進してきた、と思う。横を見ると、そこには3人の同学年がいた。
”あいつ”と、取り巻きモブ2体か、俺に突進してきたのはモブのゴリラみたいなでかいヤツだった。
「あの写真のせいか?来んの遅かったじゃねかよ」
そこからは3人にやりたい放題やられた。おっと、変な意味じゃないぞ、これは話す俺が恥ずかしいから詳細は言わない。一言で言うと。
身体中が痛い。
顔は先生になんかあったのがバレるからとやられなかった。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
どっちも痛い。
心も体も。
舌も痛いな。
噛んだな。
痛いな。
痛いのは、嫌だな。
死ぬ方がマシかな?
思っても出来ない癖に。ビビってな、情けない。
でも、怖いだろ、死んだらどうなんだよ。
意識があるまま一生暗闇かもしれない、意識がないまま一生かもしれない、それが1番怖い、山野春人が本当に思っていた事は山野春人しか分からないのに、山野春人が生きていると1番実感できるのは自分なのに、それが無くなる。
何十年も生きていた証が、美味しい、楽しい、辛い、嬉しい、山野春人の本音を知ってる人が居なくなる。
もしかしたら、人間の言う。天国や地獄が本当にあるかもしれない。あったら、良いな。
こんなこと考えてどうすんだ、誰かに言うつもりもないし、結局全部いつかなんなるんだし。
家に帰ろう。
「春人っ、何してんだよ、学校行くぞ!」
忘れたくない、市川が俺にしてくれた優しさ。
覚えていよう。いつか忘れる時は必ず来るけど、忘れるその時まで。
「うんっ」
「なにしてたんだ?色んなとこ汚れてるけど」
「久しぶりに砂遊びしてた」
「楽しいのかよそれ」
「今度やるかっ?」
「嫌だね」
学校の校門に着くと先生がいて呆れたみたいな顔をしていた。
「なにしてたんだー汚れまみれじゃないか、ジャージあるか?」
「ないんだろ、俺貸すよもう体育終わったし」
「悪いありがとう、臭くねぇーか?」
「臭くねぇよ」
学校のトイレで市川に貸してもらったジャージに着替え、廊下に出ると今は休み時間だったっぽい、もちろん”あいつ”と目があった。
せめて学校の中ではやめてくれよ、外ならまだしも、いや外でも嫌だけど、すると後ろから何かがきた。
またタックルか!って後ろに誰も居ない。
「ねぇ、わざとでしょ!」
ちょこっと目線を下に下げると桜がいた。いや、わざとじゃないんだよ、ほんとに。
「いたんだ」
俺は冗談交じりに言うと脛にキックを食らった。
痛って、こいつ、見た目の割に結構威力強かったぞ。
「春人ー着替えたかー」
「うん」
「授業始まぞー早く席座れー」
先生が廊下でそう呼びかけるとどの生徒も自分のクラスに戻って行った。ちなみに次は道徳。
今日は学校が午前中に終わるんだよな。
先生は黒板の右側に『人の本音』と大胆に書くと、「今日は人の本音だ、全員あるだろ本音を伏せて誰かとコミュニケーションしたこと俺は週2回は妻にやってるな」
人の本音か、”あいつ”が同じクラスじゃなくて良かったな。どうせ図々しく話して来るんだろうし。
それにしても人の本音か、あの人はどう思いながら俺と会話してたんだろ、それだけじゃないと思うけど、多分俺が好きなの知ってたしなぁ…やめよう、自分で悲しくなる事考えてどうするんだ。
すると先生が胸を張り自慢げに何かを語ろうとしていた。
「俺はな、本音なんて無理に語るもんじゃないと思ってる。ふっ、なんでかって?」
何が「ふっ」だ、誰も聞いてないんだわ。
「嘘をつくのは悪いみたいな偏見を持ってるだろ、全員とは言わないがこの中のほぼ全員はそう思ってる。でもなぁ、人を傷つけないための良い嘘ってのもあるんだ。それのおかげで相手は傷つかなくて済む、だけど、その代償で自分が傷つくんだ、ほんとにこの嘘をつくのが正しいのか、ってな、それに気づいたら、お前らはどうする?その嘘を指摘して本音を聞こうと問い詰めるか?それとも優しい嘘をついたそいつをとりあえず慰めるか?答えはな、そっとしておけ、そういう奴は優しい嘘をしょっちゅうつく、数あるうちのたった一つだ、それを印象的にして、記憶に定着させると逆に嘘をつかなくなる。そして、本音が原因で大きな入れ違いが起こることもある。わかるか?人間ってのはなそういう生き物なんだ、その人間の本音は誰も知らなくていいんだよ、死ぬまで墓に持ってけ、そしたら自分も嘘をついた事をいつか忘れる」
言葉が出ない、俺は自分の本音を誰も覚えていないのが、自分が忘れるのが怖い。
でも本当に怖いのは、他人の全部を知った時なのかもしれない。
人は偏見で出来てる。偏見の塊だな!
ふっ、誰も覚えていない事を怖いと思っていた自分がバカらしくて笑えてくるな。
そうか、よく出来てるな。
周りの人が思っている事実と違った偏見を話す事で、事実と違う事に怒り、喧嘩が起こるのかな。
知れた気がする。人という存在を、まだ1歩も踏めてないかもしれない、でも確実に今のは自分を知る為に必要な大きな1歩に繋がる。
「ん?あ、もう終わりか、話しすぎたな、じゃあこれで終わりだ、号令」
「市川帰ろうぜ」
「おうっ」
「私もー」
今日は珍しく3人で帰るな、小学校の時はよく3人で帰ってた。
「明日最新ゲーム出るんだってさ」
「あ、それ予約で買った、明日俺ん家でやろ、春人は来るとして、桜は来る?」
「うんっ、私も行く」
「春人、くん」
誰かに呼ばれた、市川はくん付けじゃないし違う、それだと桜も違うな、でもここに女なんて桜しか、え、石野?
「え?お、俺?何?」
「ちょっと公園来てくれる?先行ってるから、今来てね」
「ねえ、行くの?春人の事散々言っての知ってるでしょ」
「桜、先帰ってよう」
「…分かった」
俺は1人で公園に向かった。
するとそこには'あいつ’がいると思いきや、石野友那、ただ一人がいた。
「ねえ、なんで今日学校来るの遅かったの?」
これは、言っていいものなのか?言ったらもしかしたら石野と旬は別れるかもしれない、そしたら、いやいやそれはさ、違うよな、俺は気づかれないくらい小さな深呼吸をした。
「ただの寝坊だよ」
自分でもびっくりするほど良い笑顔だな。
「なんで、泣いて、るの?」
触れないで欲しいかったのに。
泣いてるんだよな。
山野春人はさ、我慢、づよく、ないから。
この事は、墓場までもってく、誰かに影響はされた…な、でもこれは俺が決めた事だから。
あいつでも彼女にはめっちゃ優しんだろうな、だから、石野も今幸せなんだよ、それを俺の一言で壊しちゃいけない。
自分に必死に言い聞かせる。
言うな、言うな。
あ、そうだよ、これは石野のためじゃなくて、これを言ったら、あいつにボコボコにされんだよ、石野のためじゃない。
石野のためなんかじゃないから。
これは自分のためだよ、山野春人。
我慢、我慢、我慢。
「俺もう帰るね」
「あっ、うん。」
下を見ながら歩くなよ。
こぼれるだろ、情けないなぁ、俺は。
家に帰るといつもどうりお母さんがいて、お父さんは仕事で居ない、俺は何も考えず取り合いずベットに入った。
あれで、良かったんだよな。
俺は死ぬように眠りに付いた。
珍しく、何の夢も見なかった。
「プルるるるる」
スマホから電話の音がする。誰だろう、スマホを見ると市川から電話が10件来ていた。
いまなんじだ?まだしんやにじか、ん?2じ、午後の2時、2時!?やばい、やばい。
市川の家は、確か、1時集合だ!
やばい、すっかり寝てた。
市川の家はもう見え始めてきた。息切れをしながらインターホンをおすと、上の窓からひょっこり市川が出てきた。
「開いてるから入っていいよ」
「お邪魔しまーす」
市川の部屋は2階、あった。確かここだな。
「悪い、ずっと寝てた。」
流石に桜ももう来ていた。
「おそーい春人が来ないからまだゲーム始めてないのに、」
「先やってて良かったのに」
「そんな薄情じゃねえーよ」
そんな事を言いつつ3人でゲームを始めた。
おもしれーなこのゲーム。
「おらおらおら、桜おっせぇーな」
「あーもう、2人に抜かされてるんだけどもう」
「市川〜見えたきた、もう抜かせる!!」
「あぶねぇーー桜最後まで、最下位だったな」
「もーう、ぜんっぜん勝てなーい」
「あ、そういえばさ、春人昨日石野と何話したの?」
「…………別に、そんな大した事じゃないよ」
「どうせ、大した事なんだろ、まあ、言いたくないなら言わなくてもいいけど、春人がなんか、辛いなら言ってほしいよ、」
「相談くらいしか、力になれる事ないからさ」
「…俺が学校遅れた日さ、旬とかそこら辺の奴らにボコボコにされたんだよ、それで、石野になんで来るの遅かったの?って聞かれただけ」
「だから、汚れまみれだったんだ、」
「石野には、なんて言ったの?」
「何にもないって、いっ、た、んだ」
自然と涙がこぼれてきた。一滴二滴じゃない、床をびしょびしょにするレベルの。
「しゅんのこといったら、わかれるかもしれないって、おもったけど、がまんして、おれ、がまんして、それいがいでも、しゅんから、いしのとふたりで、でーとしてるときのしゃしんおくられてきて、ずっとないて、ないたんだよ、がまんしたんだよ、おれ、ずっとつらくて、ないてばっかで、いしののまえでもなみだでてきておれ、おれ……」
力強く拳を握りしめて、涙でくしゃくしゃになった俺を市川は抱きしめてくれた。桜は、俺の手を握ってくれて。
「そっか、そうか、ごめん、、気づいてやれなくて、ずっと我慢してたんだよな、辛くても、ずっっと」
「大丈夫、我慢してた分、思いっっきり、泣いて良いからさ」
「うん。」
ありがとう、泣いたよ、泣けたよ、心配かけないよう泣かないよう我慢してたけど、市川の前でも、桜の前でも。
泣けたよ。
そっか、俺は欲しかったんだ。
金でも買えない、泣いても良いって思える存在が、こうやって、大人になっていくのか、人間は皆。
我慢するのは、悪い事じゃない、もしかしたら良い事でもないのかもしれない、それは人それぞれって事なのかな、我慢して、その分だけ吐き出せる場所が必ず必要になっていく。
俺はそう思うよ。
おっと、課題がズレてると思ってる人もいるのではないだろうか?
課題は、人間を知るのでは、なく、自分を知るんじゃないかって、俺は人間が分かった時に、自分を知る事ができると思う。
所詮俺は人間だから。
「もし、また好きな人が出来たら話すくらいしてね」
「もうこんな思いしたくないよ、彼女が居ないと生きていけない訳じゃないしさ、まあ、気が向いたら」
「俺も、無理に彼女なんて作んなくても良いと思うよ」
「そうだねっ!」
「桜は女だろうがっ」
いいな、良かったよ。
2人が俺の友達で、すごいよ。
正直今までの思いが全部吹き飛んだ訳じゃないけど、2人といると、その時だけでも忘れられる。
それからは、あいつにちょっかいをかけられても、いや、ちょっかいってレベルではないかもな、でもまあ、上手くやって卒業まで来た。
「は〜明日卒業って実感ある?私ぜんっぜんない」
「な〜、いざなると実感ねえーな」
「もう3人ともバラバラになるのか、」
「悲しいの〜春人ちゃん」
「悪いかよっ」
「俺も悲しいよそう言う桜は悲しくないのか?薄情な奴だな」
「そうじゃないじゃんか」
卒業式は何事もなく順調に進み、俺も市川も桜も無事卒業し、それぞれの道に進む。
「なんか、涙出てきた」
「おいおい、泣くなよ、俺も春人も泣いてねぇよ」
「またいつでも会えるんだし、週1はグループ動かそう」
「うん、うん、いきなり卒業したって実感湧いてきた。」
そうだな、いきなりだな、あーやっぱり可愛い。
浴衣姿の石野も可愛い、あれからも俺はまだ石野が好きなまま、中身がどうであれ、俺の中のナンバーワンの座はそう簡単に揺るがない、もう、会うことも、ないな。
さようなら。
今日は、4月8日。
そう、大学初日だ。
もちろん友達なんて居ない、終わった、最悪だ。
昔から運が悪いのは変わってないな、そんな事言ってもどうしようもないけど、はぁー教室行こ。
「あの、1年3組ってどこか分かりますか?」
「え、えっ、と多分あっちだと思いますけど、あ、俺も1年3組です」
「えっ?ほんとですか?よかった」
「あ、でもクラス同じでも選択違ったら一緒じゃないかな」
「えっ、あ、紙見せてください」
あの紙か、どこだっけな、確かカバンのここに、あった。
「あーっ、一緒っ!」
すっごい笑顔だな、ん?あれ、この人どっかで見たことある気がする。
「あの、どっか会った事あります?」
「無いと、思いますけど」
だよな〜気のせいではない、絶対、取り合いず気のせいって事にしておこう。
「そろそろ行きましょ」
触れてなかったけどめっちゃ可愛いな、でもあんな経験してるから、付き合うってのを身体が否定してる。
俺が好きになったとして付き合えないけど、もういいか、彼女なんて居ても良い事なんてないだろう、付き合ったとしても結局自分が傷つくだけ、俺は1人でいい。
「席となりですね!」
あ、ほんとだ、気づかなかったな、ずっと考え事するのも良くないかも知れない。
「ほんとだ、よろしく」
「よろしくお願いします」
今日は初日なので、授業の説明などでぱぱっと終わった。
今日はすぐ帰ろっと、そう思ってると変なのに絡まれてる女の子がいた。ていうか、さっきの子だし。
「話してください、私これから用事もあって…」
「その用事が俺らとのホテルだろうが」
助けた方がいいのかな、変な事に巻き込まれたくないのも本音なんだけどな。
あれ、体が勝手に、うん、そうだよな、これも何かいい経験かも知れないし。
「あの、その子俺とこの後用事あって…」
「あ?なんだてめー?」
昭和かよ、おいバカにすんなよ、心の中だからって何言っても良いわけじゃないだろ。そういう趣味かも知れないのに、やだろ自分の趣味バカにされたら。
「おいっ!聞いてんのか?あんま舐めてるとやるぞ?」
「いや、もうそういう時代じゃないので、あ、俺とホテル行きます?俺こう見えても女なんですよ〜」
「チッ、あんま舐めてると、ぶち殺すぞ」
「あっ、あそこ!!めっちゃ可愛い子がっ!」
「うえっ、どこだっ!」
なんだコイツ、コントでもしてんのか?
俺は女の子の手を掴んで、すぐにその場を離れて取り合いずカフェに入った。
「あ、あの、ありがとうございます」
「大丈夫?心配なら家まで送ろっか?」
「いえ、あ、せっかくですし、なんか食べません?」
「俺お金ないよ?」
「あ、それくらい奢らせてください」
「悪いよ、」
「私が奢りたくて奢るので、取り合いずあそこの席でも」
まっ、いっか、ありがたく奢らせてもらおう、でも助けるつもりなんてなかったのに、なんでだろう。
「何にしますか?」
「あ、じゃあ、タピオカで、」
「はーい、私はじゃあ、パンケーキにしよ」
「すいませーんタピオカとパンケーキ1つずつでお願いします」
「タピオカ1点パンケーキ1点ですね、少々お待ちください」
「あ、学校で聞き忘れてたんですけど、名前なんて言うですか?あ、多賀野夏芽です、私の多賀野って字すごい珍しんですよ」
実際に紙に書いて見せてくれた。
へえーこうやって書くんだ、この多賀野は初めて見たな。
「俺は山野春人です。どこにでもいるような漢字です」
「へー良い名前ですね!あ、春人で良い?あとタメ口も」
「うん、いいよ」
「ありがと、春人も早速タメ口だしね、夏芽で良いよ」
それから少ししてすぐにタピオカとパンケーキが来た。
夏芽はすごい良く食べる子で、なんか見てて気持ちが良かった。
あと色んな事を話した。この学校に友達が居るかどうかとか、もちろんどっちともいなかった。大学での初めての友達だな、あとそっち系の話もした、おっとエロい方じゃないぞ、夏芽は高校でモテモテ系の人だったそうで、ストーカーとかもあってかなり大変そうだったそうで、俺は非モテクソ男子だから言うのが恥ずかしかったよ。
でも、石野とかあいつ関連は一切話さなかった。俺に好きな人がいた事も。
思い出したくもないのに、はあ〜ほんっとになんなんだよ、まただ。
「?大丈夫?なんかあった?」
ほら、心配させちゃったじゃんか。
「いや、嫌な事思い出しちゃっただけ」
「そっか、なんかあったら言ってね、あ、ハンカチ貸すよ」
「ごめん、ありがとう」
本当に情けないよな。
それからも、ちょいちょい世間話をしながら解散となった。
「じゃあ、また明日ね」
「うん、ご馳走様でした。また明日」
めちゃくちゃ良い子じゃないかよ、これからも長い付き合いになりそうだし、上手くやって行けるといいな。
「ただいま〜」
まっ、誰も居ないんだけど、確か今日はお母さんも仕事なんだっけな。
今日はもう寝よ。
白い世界また、いつも見るような。
これか、これだった。
見間違いなんかじゃなかった、じゃあこれは、これからの俺の未来なのか?
夢に出てくる女の人は、夏芽にそっくりだった、いや、もうそうだな、こいつは夏芽だ。
どういう事なんだ、今日は夏芽と遊園地に遊びに来ましたっ、てか?
夏芽と遊園地に来てる夢か、悪くないな。
でも、流石にないと思うな、石野の事好きな時こんな夢なんて山ほど見た事あるし。
俺が夏芽を好きって事なのか?
ないと思うけどなあ、人ってのは不思議だな、正夢ってのも良く分からない。
俺のおばあちゃんは夢で自分のお姉ちゃんが空に登った行く夢見たらしい、そしたら、数日居ないにそのお姉さんが亡くなったと、ちょっとまてよ。
そしたら俺ヤバくないか、前、遊園地で刺された夢見たよな、いやいや、流石に。
なんか、気持ち悪くなってきた、まて嘘だろ流石に、俺こういうの自分がなった時を想像しちゃうんだよ、それで気持ち悪くなるんだ。
吐きそう。
「うぇえぇぇえ、」
目眩がする。嫌だ、死にたくない、死にたくない、自分の死因も死んだ現場も全部見たくない。
死んだらどうなるんだ、死んだら、死にたくない、死にたくない。
嫌だ。
やばい、目線が暗くなっていく。
「はるとー春とー春人ー」
「ん?どうしたの?」
「どうしたって、覚えてないの?帰ったら倒れてて」
あ、そうだった。もうあの事は忘れよう。
「大丈夫なの?体が震えてるじゃないの」
「いいよっ、大丈夫だから、」
体が震えてるのは事実だけど、死にたくない、忘れようったって簡単に忘れられるかよ。
そうだ、外に出なきゃ良いんだ、お母さんとかにうるさく言われるだろうけど、死ぬよりはマシだ。
そうだ、テレビ、テレビ見よう、俺の部屋あるし。
つくづく情けなく思うよ、怖いのは紛らわそうとしてるのなんて、分かってるよ。
子供頃からそうだ。嫌な事はともかく、怖い事はとにかく紛らわそうとする。
俺だけ、なのかな。
こんな臆病なやつ俺以外居ねぇよな。
寝よう、寝て忘れるのが1番いい。
ベッドに飛び込み掛け布団を顔までかけて潜り込む、普段はしない。
朝になっても、忘れる事ができないのくらい知ってたし。
学校を休もう。
おっと、勘違いしないでくれ、サボりじゃない、命の方が大事だ。
「ピーンぽん」
だれだ、俺を殺そうとしてるやつが来たのか?
「春人ー学校来ないの?」
不安そうな声で喋ってるのが誰かと思えば、夏芽がなんだいるんだ。
「どうした?」
せっかく友達になったのに無視するのは良くないよな。
俺は自分の部屋の窓を開けて言った。
結論無理やり連れ出された。
っていうか、俺が魚見たいに餌に飛びついて引っかかただけ。
1万円札をヒラヒラさせながら誘ってきたから乗った。
しかし、おもちゃの1万円札だった。
最悪だ、これが夏芽の裏の顔かよ、なんてやつだ。
「なんで今日サボろうと思ったの?」
サボりって、失礼な。
「何となく」
怖くて行きたくないなんて言えるか!
「じゃあ、今日サボろっか!」
「いやいや、行くでしょ、俺はともかく夏芽はダメだろ」
「私ね、高校も中学も勉強残間でね、こういうのした事無かったから、1回はしてみたいな、って。」
「付き合ってくれる?」
「はいよ、1日だけな」
「ほんと!?じゃあ、どこ行く?デートだね!」
デートか、妄想の中じゃ何百回もした事あるな、石野と。
「行きたく、ない?いや、無理して行かなくてもいいよ」
「行きたい!」
どこ行くかな、遊園地…ダメだ絶対に、絶対。
「遊園地とかどう?」
「いや、遊園地はさ、えっと、あ、猫カフェとか、最近できたらしいしさ」
「いいね!猫カフェ行ってみたかった!」
おおっ、すげぇな、何匹いるんだ?
お世話とか大変だろうに。
「可愛い、乗ってきた。」
俺は猫を見るよりも夏芽も見る方が癒されちまうよ、こんなつもりじゃなかったのに。
「あの、さ夏芽は、怖くて、外に出たくない時とか、あ、ある?」
聞いてみたかった。夏芽に限らず誰でもいいから、共感してくれる人が欲しかった。
「あるよ、感覚的にそういう時あるんだよね、身体が外に出るのを拒絶してるっていうか、あ、もしかして今日それだった!?だったらごめん、ほんとごめん。私もそういう時に無理やり外に出された時あって、本当に嫌だったから」
「そんなことないよ、嫌じゃなかった。逆にコイツって感じで、完全にってわけじゃないけど、ちょっと落ち着いたし、ありがとう、外に出してくれて。」
なんか、変な事言ったか?ポカーンってしてる。
「そっか、なら良かった!でもそういう時言ってねあんま無理やりはしないからさ」
「うん、ありがとう」
良かったな、最初にできた友達が夏芽で、本当に。
猫カフェのあと一緒にボウリングに行ったり、久しぶりに楽しかった。
年ため夏芽を家まで送ってから俺も家に帰った。
『こんどの土曜いつものラーメン屋行こめっちゃ食いたい気分』
あ、市川からメール来てたんだ、なんだかんだボウリングに夢中で気づかなかったな。
桜は行くって言ってるな、じゃあ俺も行くか。
『俺も行く』
「よーっ会うの久しぶりだな、」
「ねーほんと!」
取り合いず店に入って全員同じラーメンを頼んだ。
「どっちも上手くやってるか?」
「俺はもう友達10人くらいできたぞ」
「私はやばいよ、クラスの端っこで陰キャってる」
「え?おいマジか、」
「だから久しぶりに親以外と話せて嬉しいよ」
「あ、春人はどう?友達できた?」
「この感じはまだZEROかっ?」
「残念いますよ、1人だけ」
「おー1人いればいいじゃねえか、」
「女の子だけど…」
「は?あんた、あんなに石野石野言ってた癖にもうそんな、見損なったよ」
「ふざけんな、まだ好きなくらいだよ、その女の子もめっちゃいい子でさ、俺の事すげぇ理解してくれるんだよ」
「いい感じって事で良いのか?」
「んーどうだろう、人によってはそう見えるかも、でもさ、なんか、怖いんだよ、彼女作るのとか、彼女いた事ない俺からしたら彼女居る時の楽しさとか分かんないからさ、偏見だけど彼女居てもケンカとかで傷つくだけだし」
「まあ、そうなっても仕方ないわな」
「でもいい子なんでしょ?なら大丈夫じゃない?」
「いい、俺に彼女はいらない、できるとしたら俺のこの感情を変えられる人だけだ」
「それは春人次第だな、何か相談あったら言えよ、言いずらかったらメールでも良いし」
「おう、サンキュー」
「はいおまち、」
「あー!来たよ!」
やっぱりラーメンと言ったらここ一択だな、ほんっと上手いんだよここ。
「俺らのあるある上手い飯は夢中で誰も喋んないよな」
確かに、意識した事なかったな。
「静かにしてっ!」
「この子こんながっついてるから最近太ったーとかメールで言ってんだな」
「ふぇっ、!?」
変な声出しちゃった、が、どっちも夢中で気づいてない、市川は桜の事を言うのに夢中で桜は市川を睨むのに夢中だ。
やばいぞ!おい!市川!
「ダイエットしてんじゃないのかよってな」
おい!気づけ!地雷女の地雷踏んでんぞ!
目でめっちゃ合図してやっと気づいた。
「ん?どした?ふぇっ!?…」
「どうしましたか?お嬢様、早くお食べにならないと、麺が伸びてしまいます。」
「チッ」
怖えー、いや、お前が悪いんだぞ、市川。
「おい!桜っ、金払えよ、」
「悪いな、市川、俺は自分の分しか持ってきてないんだ。」
「なんてやつだ、あの女…地雷女って怖いんだな…」
市川にラーメンを奢らせた地雷女は気分が良くなり、機嫌を取り戻した。
その後は3人で話ながら散歩をしていた。
「なんだそれ!ん、右行こ」
「ん?まあ良いけど」
なんだ?なんかあったのか、そういう事か。
やっぱり優しいな市川は、なんで寄りによって今日居るんだよ。
「みたか?今?負け犬が居たぞ」
楽しそうに話してるあいつが。
我慢しろ、山野春人、高校ではあんな事言われるより酷い事されてだだろ。
「ほんっとタチ悪いなんなの?あんなの気にしなくて良いからね」
「分かってるよありがと」
バレバレだろうな、だっせえ。
「ねえ、別れない?」
え?今の石野の声だよな、別れる?
「私も春人の事面白がって笑ってたけど、旬は限度が超えてるよ」
「旬が知らないだけで、春人すっごい我慢してたんだよ、泣いてただろうし」
「あっそ、もうお前なんて飽きてたからいいわ、さよなら」
「行こ」
俺ほ早くその場から立ち去りたかった。
「こんな事言う俺も悪いと思うけどさ、付き合えるかもよ?」
「いいかな、まだ好きだけど、感覚的に付き合うのは違うって気がする。所詮俺には高望み過ぎたんだよ、無理なんて事最初から分かってたしさ。」
「そろそろ解散するか!」
「そうしょか、また来週はパスタ行こ」
場の空気を悪くしないようにすぐにいつもの自分に戻る。
「たまにはパスタも良いな」
帰ってる途中誰かからメールが来た。
そういえば夏芽と繋いだんだった。
『友達春人しか居ないし、一緒に学校いかない?』
『俺も友達いないから笑良いよー』
俺はいつもどうり家を出た。
もちろん5分前には着くよう計算され尽くされている。数学の成績4の男が、中坊の諸君は高っ、て思うだろうが、高校はひと教科の成績が5から10になるのだ。
「なんなんですか、離してくださいっ」
「いいじゃん、君可愛んだしちょっとだけだって、」
揉め事か?いや明らかにナンパか、朝からナンパって暇かよって。
良く見ると、ナンパされてるのは夏芽だった。
何してんだ、あいつ。
’あいつ’。
”あいつ”。
本当にクズだな、そこには、黒井旬の姿があった。
心の底から怒りが込み上げてきた。
石野にフラれたらすぐ別を探すのか。
俺は”あいつ”のとこまで歩いた。
1発言ってやろうと思ったが、先に体が動いた。
殴ってはない、夏芽の腕を掴んでいた腕を強く握った。
「何してんだよ、フラれてすぐナンパか?石野も失望するだろうな」
「あれ?もしかしてお前の彼女?」
「ちげぇよ」
「嘘下っ手だな、お前に遂に彼女ができたか!」
我慢しろ、夏芽もいるし。もしかしたら今後の大学生活に影響が出るかもしれない。
「否定しないのか?なんか意外だな、お前トラウマで一生彼女作らないと思った。作れないだな、意外とダメージ少ないんじゃねえかよあれは大したことなかったな」
「プつ」と音がした。聞こてるのは俺だけ。
「ふざけんな、」
「なんか言ったか?」
俺は旬の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんなじゃねぇよ!俺がどんな気持ちだったかも知らずに、知らねぇだろ俺がずっと泣いてたのだって、何にも知らねえくせに分かったみたいな事言うなよ、さっきから聞いてれば、彼女も居ねぇよ、怖いんだよ、彼女とか作るの、怖くなったんだよ。」
「いや、キレすぎな」
「何がだよ、俺はキレなさ過ぎたと思ってる。知らねえだろ、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。ずっっと、我慢してたのだって、お前に分かるわけない、辛いのも、怒りも、必死に、我慢したんだよ」
泣くなよ、かっこ悪、い。
もう、いい。
「俺だって人間なんだよ、お前がしてきた事も、ずっと我慢出来るわけじゃねえよ」
そうだ、夏芽がいるからとか関係ない、我慢してきたんだ、それを、表に出したら、ダサいことないだろ、我慢してきた明石だろ。
もう、行こう。
1人でその場から逃げ出したように、歩き出す。
家にはお母さんが居るから帰れない。
心配掛けたくない、カフェでも行こう。
そこで、好きなだけ泣いて、終わりにしよう。
泣くのはもう辞めにする。
これからは、1人で全部どうにかしよう。
誰とも居たくない。
「コーヒー1つ」
「私もそれでお願いします。」
なんで着いてきてるんだ、1人にさせてくれよ。
顔なんて上げられない。
夏芽はうずくまってる俺の頭に優しくて、柔らかくて、それでも少し冷たい手をそっと置いてくれた。
「私、何も知らないし、春人がどんな想いだったのも分からない、でも春人はさ、誰かにその気持ちも吐き出すべきだと思う。」
そう、かもしれない。
「俺、3年の時に好きな人できて……」
俺はうずくまったまま話した。全部を。
その間にコーヒーも冷めてるかもしれない。
冷えきったコーヒーを飲もうと顔を上げると、隣の席には夏芽が座っていた。
俺を、優しい手で引き寄せて来て、温かいおっぱ…じゃなくて。
暖かくて。
ただ、温かくて。
俺はズルっと鼻をすする。
「すっごい、我慢したんだね、泣いても良んだよ、泣くのは、かっこ悪いことじゃないからさ」
気づいてなかっただけで、夏芽は、泣きながら、言ってくれた。
他人事にしないで、自分の事のように、孤独で、もがき続けてた俺を、捕まえてくれた。
「うわぁあぁぁぁあ」
「俺、おれ、つらくても、ずっと、ずっと我慢して、」
初めてだった。俺が本音を言わないで、本音を分かってくれて、俺が1番して欲しい事をしてくれてる。
そっか、俺、ただ静かに、抱きしめて欲しかったんだ。
「うん、うん、偉いよ、ほんとに」
俺のワガママに夏芽はずっと付き合ってくれた。
学校もあるのに。
決めた。
見つけた。俺のフリーズした心を動かしてくれた人が、告白しよう。
いつもどうり夏芽といつもの場所で待ち合わせをする。
何気なく学校に向かう。
放課後だな、帰ってる時にしよう。
はあー、授業が集中できない。
「なんか最近授業終わるのすごい早いんだよね〜」
今日は特にとんでもなく長かった。
「あのさ、大、事な話があるのですが、」
「はい」
俺が真面目な雰囲気を作ったからか、夏芽もすぐに切り替えてくれた。
「俺と、付き合って、ください」
地面を向いてるから夏芽の顔が全く見えない、ちくしょう、どうなんだ。
やばい、心音がうるさい、静まれ!心臓よ、夏芽たんの声が聞こないかもしれないだろ、てか心臓静まったら死ぬて。
「私、」
喋り始めた。どうだ?お願いします。
「私なんかでいい、の?」
「夏芽が良い」
「で、でも、前好きだった子って今、フリーなんでしょ、だったら、」
「俺は、夏芽が良い」
少し長い沈黙の末。
「はい、私で良ければ」
なんだろ、涙が、止まらない、嬉しい。
今までの全部が、全部、報われた来がする。
「え、大丈夫?どっか痛いとこあるの?」
「ううん、ごめん、ごめん、嬉しくて、」
かっこ悪い、いや違うな、夏芽は泣くのはかっこ悪いことじゃないって言ってくれた。
『……泣くのはかっこ悪いことじゃないって言ってくれた。』
俺は1冊の分厚いノートに書いた。
もちろん日付もつけて、5月20日。
あれからどうなったかというと、夏芽に泣き止まされながら帰って終わった。それだけだ。
俺はこれから、人の涙に着いて考えようと思った。
人が涙を流すのは、辛い時、痛い時、気持ちが溢れ出した時、嬉しい時。
どれも人の想いに関係がある、辛い時は文字通り辛い時、痛い時も、気持ちが溢れ出した時も。
でも、嬉しい時は正直いまいち分からない、なんで嬉しいと泣くのか。
てゆうか、しれっと無かった事にしてるけど、”自分を知る”を高校卒業までに答えを導き出せなかった。
でも、諦めたわけじゃない、自分を知る事は人間を知る事、人の涙もその1部になるはず。
あれ?人が涙を流す時の共通点って、もしかしたら。
辛い時、痛い時、嬉しい時。
人が涙を流すのは、これが起こった時なのかもしれない。
人は辛い時に想いが溢れて涙を流す。
人は痛い時に想いが溢れて涙を流す。
人は嬉しい時に想いが溢れて涙を流す。
それだけではないと思う。人は生きてる時、常に誰かを想い、自分を想う。想う事を辞めた時、人は終わりを迎える。
なんか、あっさりだったけど、1歩進んだかな、いや、こんな事だけじゃないかもしれない。
でも、それは時間が経てばわかるだろう。
人は偏見と想いでできてる、か。
あ、気づいた、んだ。
咄嗟にそう思った。夏芽は自分を、人を知ってるのかな、だから俺事がわかるのかもしれない。
でも人の数だけ答えがある。これは自分で導き出す事に意味がある。
と、思う。
答えが出るまでにやっぱりどこかで躓くかもしれない、でも、ゆっくりと、少しづつ、少しづつ変わりながら、忘れる。
こうやって、必死に考え出した事も、考えていた事すらも、全部。
ゆっくり、忘れてく。
だから、書いてる。分厚いノートに。
あれから3ヶ月程経った時、スマホから音が響いた。「ピロッ」誰だろ?
『明日話せる?』
『うん、直接?どこ行けばいい?』
『病院』
え?
『なんかあった!?すぐ行く』
『違う違う、なんかあったわけじゃない。明日来てね』
おいおい、大丈夫なのか?夏芽は大丈夫って言ってるけど、誰かから聞いた事あるぞ、女子の大丈夫は大丈夫じゃないって。まあ、明日行くか、来なくていいって言ってるのに行くのは流石に迷惑だな、夜遅いし。
朝10時に俺は家を出た。
『ドクドク、ドクドク、ドク、ドク』
落ち着け、落ち着け、大丈夫。
きっと。
まだ朝なので、ゆっくり夏芽の部屋のドアを開けた。
「夏芽、来たよ」
「あ!意外と早かったねっ!ごめんご飯食べてからでいい?まだ朝ご飯まだでさ、起きるの遅くてっ」
「大丈夫な話ってのはね、」
「私さ、心不全なんだ。3年前に余命宣告されて、」
言葉が出ない。
「私、しょっちゅう息切れしてたでしょ、あれ、私が病気、だから、なんだ。ごめん、もっと早く言うべきだったね、言ったら、振られると思って言い出せなかった。」
俺の息が荒くなる。
「私ね、あと…」
その後、俺はずっと呆然としたまま、何も話さずに家に帰った。
夏芽は3年前に余命があと4年と言われたそうだ。
あと、1年。
多賀野夏芽は1年後、死ぬ。
いやだ、死なないで欲しい。知りたくなかった。そんな事。
まただ、またトラウマが増える。
嫌な季節だな、夏なんて。
いやだ、石野の件も夏、夏芽の病気を知った今の時期も夏。
俺は夏が来るたびに思い出すのか、そしてまた夏を待って、誰もいない部屋で1人、泣く。
本当に、なんなんだ、俺の人生は、もしかしたら、人が人生っていうのは既に決まっているのかもしれない。
まるでゲームと同じだな、いつかは必ず魔王を倒してハッピーエンド。
石野と旬の事であんな結末になったのも、夏芽が死ぬのも全部予め決まってた事がさりげなく通過しているだけなのかもしれない。
だったら、俺は、君と会うのをずっと、待っていたのかもしれない。
俺の人生も誰かに作られたのか?この物語は誰かが頭を抱えて考えた傑作作品かもしれない。
そんな妄想をしている自分に、生まれる事も決まってたっていうのかよ。
まるで、バカみたいじゃねぇーかよ、予め決まってたってんなら幸せになる事なんてないのに、それを掴みに行ってんのかよ。
何考えてんだよ、おれが、俺が1番辛いって勘違いすんなよ、1番辛いのは、近い将来死ぬ人が彼女な俺じゃなくて、近い将来死ぬのが、決まってる夏芽だろうが。
「うぅう、うぅぅぅっ」
なんで、よりによって死ぬのが夏芽なんだよ。
俺は、無かった事にする、自分の空いた穴をそのまま放置する事にした。
どうにも…ならない事も…ある…から。
あれからは何事もなく、ただただ時間がすぎて行く一方だった。
もちろん夏芽は大事にしてるし、桜とも市川ともやり取りはしてる。
あと2人には彼女ができたともちろん伝えた。
それはそれは面白いくらい盛大に祝ってくれた。
2人ともきっと俺が彼女を作らないと思っていただろう。
でも、そんな楽しい日々もいつか、終わりは来る。
俺の未来はやっぱり決まっていたのか?
ふざけるな、どん底に落として、それでもまた上がって。
また、落ちた。
怖い、怖い、死ぬのは。
死にたくない。
でも、遅かれ早かれ、いずれ人間には、死期ってもんが必ずくる。
今日、山野春人はご機嫌である。
理由?聞くか?普通、っていうか、言わなくてもわかるだろ!
ふっ、デート、に決まってんだろ!
夏芽の入院は一時的なもので比較的すぐに退院出来た、でもまたすぐに入るかもしれないと。いや、辛い話はやめよう。
今日は付き合って初めての遊園地に行く。
これこそふっ、だな、付き合って1年、初めての遊園地って、なんで遊園地あんな行きたがらなかったんだっけ?
まっ、いっか。
「行ってらっしゃい、気をつけてね、最近殺人とか変なの多いから」
「うん、行ってきます」
殺人か、怖っ、でも遊園地って何人来てるんだろ、めっちゃデカイとこ行くから5千はいると思うな。
5千分の1だろ、宝くじよりは確率高いけど。
あ、居た!ニヤニヤすんな気持ち悪い、いつもどうりでいいんだよ。
「夏芽ー、おはよ」
「あ、おはよ〜!」
今日はもちろん電車の時間もバスの時間もちゃんと調べたぜよ!
朝夏芽と合流してから1時間30分程経って遊園地に着いた。
「着いた〜」
夏芽が体を伸ばしながら呟いた。
「最初どこ行く?色々あるよ」
「ん〜、メリーゴーランドとか?最初だし!」
着いた、けど。
「なんか、ボロいな、」
なんだこれ、メリーゴーランドに来るまでに見た他のアトラクションは綺麗だったに。1人もいないしな。
「せっかくだし乗ろうよ!作業員さんもいるしさ、貸切だよ!」
おほんっ、詳しくこのメリーゴーランドについて解説しましょうか。
今、わたくし春人はメリーゴーランドに来ています。彼女と一緒に、しかし!このメリーゴーランド、彼女と来るのに相応しいとは決して言えないものです。色も剥がれてるし、馬なんてボロッボロでゾンビ見たいになっています。これはこれで1つのアトラクションと言えるでしょう。
至って普通のメリーゴーランドでした。
「ねね!次何乗る?」
楽しそうで良かった。
「全部乗ろ!」
現在の時刻は12時4分である。
ふっ、調べたんだよ、俺は。
さてと、俺のきゃわゆいお姫様を案内致しましょう。
「あ、着いたっぽい」
ですよね〜。
看板には、今並べば1時間後になると書いてあった。
俺が絶望したようにぼーっとしてる夏芽が目の前で手を振ってきた。
ちくしょう、そうだよな、レビュー星5なんだし、並ぶに決まってるよな〜。
「あ、あそことかどう?すぐ食べれるよ!」
くっ、やめてくれ、俺が惨めじゃないか。
あ、でも写真は美味そうだな。
「ごめんな、俺のせいで、」
「もしかしたらこっち方が美味しいかもよっ!裏店舗的な!」
夏芽ちゃ〜ん女神かよ〜。
店に入ると中は思った通り狭かった、が人はいた。
なんだあれ、あの人めっちゃ勝ち誇った顔してる。
「あ!美味しそぉー」
「ほんとだ!じゃあ俺は、ハンバーガーにしよ」
「ん〜悩む〜あのさ、お昼にパンケーキってどう思う?」
「なんで?普通に良いと思うよ、美味しいし」
「なんか、パンケーキってスイーツ枠だからお昼ご飯としては、罪悪感がさ」
「じゃあ俺はパンケーキにする」
「え!?そそのかそうとしてるでしょ!」
「せっかく来たんだし、好きなの食べよ!」
「うんっ!」
うんめぇなオイ!なんだこれ!
夏芽も喋らない、食うのにめっちゃ夢中になってる。
本当に裏店舗説あるのかもな、さっきの人も勝ち誇った顔してたし。結果オーライ!
それからはずっとアトラクションを乗りまくった。
途中ジェットコースターで吐いたけど、俺。
「あ〜あ、もうこんな時間だね」
「なんか時間経つの早かったしな」
「来て良かった!」
本当に来て良かった。夏芽もすっごい楽しそうだったし。
なんで、俺は遊園地に来たがらなかったんだ。
あの人、どっかで、見た事あ、る。え!?…あ…え…は?…あれ。
え…やばっ…震えが止まらない、鳥肌も。
おもいだした。おもい、だした。
見たんだ、夢で…俺が遊園地で死ぬんだよ…な。
「ねえ、ねぇ、ねえっば!どう、か?した?」
あいつ、こっちみてるよな、でも俺じゃない、あいつ、夏芽の事を見てる。
やばい…やばい、震えが止まらない、黒いパーカーにフードを被っていて、右手には小さな刃物を持ってる。
おいまて、ほんとに、まてよ…こっちに向かって来てる。
動けない、いやでも向かってる先は俺じゃないか…いやダメだろうが、夏芽に向かってる。
「ねえっ!何か言ってよ!」
はぁ〜体のどこも動かない、全く。
夏芽は気づいてない、ずっと俺に話しかけてる。
そして…目の前にはまるで綺麗な、花火が打ち上がったみたいに、血しぶきが上がるわけでもなく、ただ、打ち上げに失敗したみたいに地面に飛び散った。
人の死は決して美しくもなく、名誉あるものでもなく、ただただ…残酷で、それでも少し儚く…でも、いつか必ず死ぬ人間の美しさでもあるのかもしれない。
時間の流れが遅い。
あ〜、これが走馬灯ってやつか、まるでスポーツアニメだな、めっちゃスローなのに思考する時間はある。
それにしても笑えてくるな、酷い人生だ。
これが人間か、中3から考え続けた。
人は偏見と想いでできている。
そして、人は本能的に、1番大切な物を死にものぐるいで守ろうとする。
大切な物は人それぞれ、人によっては、彼女よりも自分の方が大事な人もいる。何もおかしくない。
むしろこっちの方が多い、口では君が1番大切だとか言うけどいざそういう状況になると、反射的に自分を守る。
つまり、1番大切なのは自分ってだけだ。
本当にバカだな、夏芽を助けても、夏芽は後1年で余命を迎えるのに。
痛いなあ〜、凄く穏やかな気持ちになる。
標的は俺に変わったのか、そんな何回もナイフぶっ刺すなよ、血も涙もない野郎だな。
自分が死なない選択肢もあっただろうに。山野春人、お前は自分の意思で自分を殺したみたいなもんだな。
俺を刺しまくったやつは周りの大人に捕まったっぽいな、良かった、夏芽に怪我がなくて。
なるべく都合の悪い情報は受け入れたくないんだがな、泣くなよ、可愛い顔が台無しだよ。
救急車の音がする。もうそんなに時間が経ったんだ、死にたくないなあ〜。
気絶しそう、そのまま死ぬのは…やだ。
目を開けると、そこは病院だった。でも、自分でも分かる。これ…死ぬやつだ。
「春人!春人っ!」
「なつ、め…おれ…しにたく…ない……」
「うぅっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁ、嫌だ、死なないでよぉ、私が死ぬまで、近くに居てよ…ずっと…そばに、居てよ…」
「日記、ある?」
「え?…うん、ある、ある」
最後にこれだけは、書きたい。
『最後にこれだけは、書きたい。』俺は日記的なものにそう書いた。
『良かった。俺は日記に自分が思った事、経験した事を書き始めて数年というところか…でも良かった。書いといて。自分の生きた証、記憶が無くなるのが、やっぱり怖い、だから書いた。自分が生きていた事を自分が知らなくても、これを読んだ誰かが、山野春人が生きていた事を知れればそれで良い、それにしても恐ろしく短いな、俺が死ぬまでの日記だったから80歳くらいまで書くつもりだったのに。
でも、これでいい。
これで俺の人生も、俺の書いた記録とも言う日記も終わった。俺は死んだ。』
最後に俺は思った事を全て書き。
山野春人は死んだ。
この日記はこれで終わった。
しかし、この終わったはずの人生には、続きがあった。俺しか知らない、いや違うな、俺しか知る事のできない、うん、これが正しい俺しか知ることの出来ない人生の番外編だ。
病院の中の一つの部屋でテレビの音が流れる。
ニュースの内容は、昨夜に19歳の男性が小さな刃物で殺害された。なんてニュースだった。
私は、彼が最後に息を引き取った病院にいる。
私の彼氏は死んだ。
私の彼氏はバカだ。
私の彼氏は知っていた。
わたしのかれ、しは、ほんとうに、ばか。
もう泣くのは辞めにするって…決めたのに。
私の余命はあと1年。
私は1年後に死ぬ。
それなのに、春人は私を守って、死んだ。
ばかだ。
私は早かれ遅かれ1年以内で死んでたのに。春人ならきっとこう言う。俺の死が早かっただけ。
そんな簡単な言葉で片付けないで欲しい。
でも、彼は…もう、居ない。
1年後に会えるのかな、そんな考えが頭をよぎった。
俺は死んだ。
死の世界は、あった。
でも、ずっと夢を見てるみたいな、夢の中にいる感覚だった。
感覚で分かる。
現世にも行ける。
俺はヒューと現世に来た。こんな簡単でいいのかよ、なんか、神とやらに遊ばされてる気がする。死後があるなら神も居るのかもしれない。でも、行けるなら行く、それだけだから。
取り合いず病院に行くと、夏芽が居た。
なんで居るのかなんて分かるはずない。
病院の中の一つの部屋でテレビの音が流れる。
ニュースの内容は、昨夜に19歳の男性が小さな刃物で殺害された。なんてニュースだった。
これ、俺か。
夏芽は今、何を考えているんだろう。俺が死んだだけで、こんなに考えてくれてるだろうか、春人のバカとか思ってそうだな、単に俺の死が早かっただけなのに。
夏芽には死んで欲しくない、でも、いつか死ぬ、それは変わらない、早かれ遅かれ1年後。会える、そんな考えが頭をよぎった。
長生きして欲しいな。
長い年月が経った。自分でもどれくらい経ったか分からない。てか数えていない。
でもやっと、ようやく。
ただただ白い空間に、1人の…やっとだ、待ったんだ。ずっと、俺が死んでから、ずっと、ずっと、ずっと1人で。
生きてる時は辛い事ばっかで…でも、これのためだとしたら、割に合う。俺はそう思ってしまう。
目の前にいるその人も涙を我慢している。
「おひさっ!」
この再会に涙はいらない。生まれてからずっと、待っていたんだと思う。
足元には小さな液体が落ち、小さな水溜まりと水溜まりが重なり、だんだん大きくなっていく。
泣いてなんかない、泣いてるわけない。
生きてる事が幸せ、そんな事誰が決めたんだ。
幸せかどうかは自分で決める。
だって俺は今、生きてる時よりも、幸せだから。
山野春人の自分を知る為の物語。
人は偏見と想い、そして、自分できてると思う。
常に自分を維持しようとする人間の本能は誰にだってある。
人の考えに囚われず、自分はこうだ!データがなんだ、記録がなんだ、自分が納得しないなら全部を否定してしまえ。
しかし、人の考えに囚われる人、納得しなくても言わない、そういう人もいるだろう。この人の考えだけを参考にしたい、これは言わなくて良い、そう思った事がその人の考えだ。
山野春人は、生きてる方が良いと、死にたくないと心から思っていた自分を真っ向から、死んだ今の方が幸せと否定した。
人の数だけ偏見があり、想いがあり、自分がある。




