号砲
暗闇に紛れて潜入した。
旧政府軍の通信拠点。街の外れ、元は配電所だった堅牢な建物。
ここを落とせば、連中の連携は崩れる。
ヴィヴィアの“反乱”が、ただの火遊びではないと示すには、最初の一撃がすべてだった。
「……行け」
ヴァレオンの声は、刃のように鋭く短かった。
その瞬間、沈黙を裂いて閃光弾が放たれる。
白く焼ける光と同時に、銃声が爆ぜる。
突入──。
⸻
ティクが先頭で突っ込んだ。
無音の脚さばきで敵兵の横に回り込み、一瞬で喉元を裂く。
背後でドレクの短銃が火を噴き、敵の援軍が倒れる。
「クリアリング急げ、10秒遅れれば挟まれる!」
応答なし。
だが全員の動きは完璧だった。
事前に叩き込まれたルート、タイミング。
今は“言葉”より“信頼”が速い。
⸻
通路の先、重厚な扉が開く音。
「来たか……!」
ヴァレオンは即座に飛び出し、マチェットで牽制。
相手は自動小銃。まともに撃たれれば終わりだ。
だが恐れない。踏み込む。
一閃――銃ごと叩き落とす。
「前進!通信室はこの先、右だ!」
レインズの声が飛ぶ。
軽口も皮肉もない。ただ、確実な声。
その手には、拾ったライフルが握られていた。
⸻
爆発音。
背後で脱出ルートを塞ぐ音。
「囲まれたか……」ドレクが呟く。
「いや、囲んだんだろ。俺たちがな」
ヴァレオンの口元に浮かぶ、わずかな笑み。
計画は乱れた。だが、想定の範囲だ。
「このまま仕留める。敵を通信不能にし、無力化する」
仲間たちは頷く。
戦いは、もう始まっている。
そして、誰一人――引く者はいなかった。