秩序を作る者
瓦礫と埃の匂いが立ち込める路地裏。
昨夜の抗争の痕跡がまだ生々しく残る中、ヴァレオンはゆっくりと歩を進めていた。
仲間たちは既に戦果を確かめ、奪った武器と物資を整理している。
しかしヴァレオンの視線は、その場にはない「もっと先」を見据えていた。
「ボス、南区の連中、降伏の意思を見せてます。次の動きは?」
レインズが低く問いかける。
彼は血で汚れたジャケットの袖を乱暴に拭いながらも、目は真剣だった。
ヴァレオンは一瞬黙り込むと、わずかに口角を上げた。
「南区は…もう骨抜きだ。だが、あいつらの背後にいる“供給元”を潰さなければ意味がない。」
ティクが眉をひそめる。
「供給元…って、あの黒市の親玉か?」
「そうだ。奴を落とせば、この街の流れはすべてこっちに傾く。」
沈黙が重く落ちる。
黒市の親玉――通称“影王”は、街の裏側を支配する存在であり、正面から挑むことは自殺行為だと誰もが知っている。
だがヴァレオンは躊躇しなかった。
「俺たちはただの徒党じゃない。
秩序を奪い、秩序を作る者だ。
そのためには、影の王冠も奪う。」
夜。
廃工場に灯るわずかな光の下、ヴァレオン率いる十数名が集まった。
各々が武器を手に、静かに心を固めている。
誰もがわかっていた――この一手が、街の勢力図を塗り替えるということを。
その時、ヴァレオンは一歩前に出て、仲間たちを見渡す。
「この街を支配するのは、恐怖じゃない。
信じ合う力だ。
俺たちが作る未来は、血だけじゃなく、誇りで染まる。」
その言葉に、一同の眼が燃え上がった。
そして、闇夜の中へ――新たな支配を賭けた戦いが始まった。