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最初の民

灰が風に舞い、地平線はまだ戦の匂いを残していた。

ヴァレオンはゆっくりと歩を進める。

向かう先は、かつて戦友たちを集めた人材屋――

老いた木造の小屋が、焼け跡の向こうにひっそり佇んでいた。


扉は半ば崩れ、壁には斬り傷が残っている。

しかし、まだ人の息はあった。

中には、戦の混乱から逃れてきた者たちの影が揺れていた。


剣を磨く者。

片腕を失い、ただ壁にもたれる者。

震えながら布を繕う者。

火の前で小さく祈る者。


戦える者も、戦えぬ者も、そこにはいた。


ヴァレオンは足を止める。

この場の空気は、敗残ではなく“残火”だった。

消えゆく命ではなく、かすかに灯る小さな光。


かつて、この場所で彼は戦友を選んだ。

今選ぶのは、国をつくる最初の民である。


武力は必要だ。

戦はまだ終わっていない。

奈落の残党、黒市の影、野盗、王を失った旧軍勢――

敵は散り、無数に増えている。


だが、それだけでは足りない。

武器を持たぬ者も、この国の血と骨になる。


壁にもたれる片腕の男は、かつて熟練の投槍手だった。

腕を失ってなお、視線は鋭く、戦場を読み解く才があった。


祈りを捧げる少女は、戦には関われないが、

倒れた者の亡骸を拾い上げ、名を記録していた。

誰かが覚えること、それもまた力だった。


布を縫う者は、裂けた衣の意味を知っていた。

針は剣ではない。

だが、欠けた軍を繕う力があった。


ヴァレオンは彼らを見渡す。

腕の立つ者。

腕の立たぬ者。

戦える者。

戦えない者。

失った者。

まだ何も持たない者。


そのすべてが、この国に必要だった。


外では風が吹き、瓦礫の上で旗の切れ端が揺れていた。

あの布が旗になるなら――

この者たちは、国になる。


ヴァレオンはひとつ深い呼吸をした。

その沈黙が、招き入れる合図だった。


強さも、弱さも、残されたものすべてがここに集まる。

滅びの果てに始まる国。

その最初の民は、いま静かに息をしていた。

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