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灰色の街で生きる

奪うか奪われるか、灰色の街で生きる少年の物語

 この街は、死んでいる。

 空は曇り、建物はすすけて灰色。舗道の割れ目には黒い水たまり。

 銃声と叫び声は日常で、通りには乾いた血の跡が残っている。


 俺は、十六。

 名前はヴァレオン。

 孤児。学校もない。ここでは生き延びることだけが全てだ。


 廃ビルの影に身を潜め、耳を澄ます。

 遠くでサブマシンガンの連射音が響く。

 ギャング同士の抗争だろう。

 撃ち合いが始まれば、俺の出番だ。


 足元には、錆びたマチェットと中古の拳銃。

 どちらも何度も人を殺してきた。

 だが、どちらも俺にとっては道具でしかない。


 路地の向こうで足音。

 スニーカーの擦れる音が近づいてくる。


「おい、ガキ……。ここに隠れてやがったか」


 見知らぬ男が二人。

 片方はハンドガン、もう片方は鉄パイプを持っている。

 スカーフで顔を隠しているが、敵のギャングだ。


「荷物、置け。さもないと――」


 最後まで言わせなかった。

 俺は足元のマチェットを拾い、飛び込んだ。

 短く息を吐き、腕を振り抜く。


 血の感触。

 男は喉を押さえて崩れた。


「……っ、てめぇ!」


 もう一人が拳銃を構える。

 だが、廃ビルの柱を蹴って身を滑らせると、

 俺の拳銃が先に火を吹いた。


 一発。心臓に。

 音が路地に反響する。


 死体を見下ろす。

 恐怖も、興奮もない。ただ、生き延びたというだけ。


 ポケットを探ると、札束が少しと乾パン。

 それを取って、死体を裏路地に蹴り落とす。


 この街では、こうやって生きるしかない。

 喋る必要はない。誰も信用するな。

 笑えば、死ぬ。



 夜。廃工場の屋上に登り、灰色の街を見下ろす。

 ネオンの看板は壊れ、空には月も星も見えない。


 ポケットの乾パンをかじる。

 無味乾燥な食事。だが、生き延びるためには十分だ。


 遠くで銃声。

 次いで、叫び声と車のエンジン音。


 この街に、静寂はない。

 色もない。

 ここは、腐った世界だ。


 だが――俺は、生きる。

 それだけだ。

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