『私とお姉ちゃんと才能と』
初投稿です!
色々と手探りで、ゆるくやっていこうと思ってます。
反応が良ければ続きも書いていこうと思うので、よろしくお願いします‼︎
私には何もなかった。
数多の優秀な騎士を世に送り出してきた名門貴族、“ローゼンヒルデ”の次女として生を受けた私は、幼い頃から優秀であるお姉ちゃんと比べられてきた。
「ローゼンヒルデの娘であればこれくらいのことできて当たり前ですよ」
「あなたにはローゼンヒルデとしての自覚が...」
「ルビア様であれば難なくこなせるでしょうに...」
「その年になってもまだ魂華を具現化できないなんて...」
何度言われたかわからない、貶され、卑下され、否定される言葉の数々。それは家でも、学園でも変わらない私の日常だった。
“国立騎士養成学園フローラ”
名のある貴族と才能のあるものしか入学を許されない超名門女学園。卒業すればそのもののキャリアは確立され、王国騎士や教会騎士といった名誉ある肩書きが確立される。まさに選ばれしものしか入学できない花の学園!...といえば聞こえがいいが、実際は序列と差別の入り混じる地獄のような場所だった。
この学園では、入学と同時にある儀式が行われる。“聖種の儀”と呼ばれるこの儀式は、学園に併設されている、“始まりの華の女神フィーロ様”を祀った教会で、司祭であり学園長でもある”リリアナ=ロゼッタ=フローラ“様が学生に聖種をお与えになる儀式だ。
聖種はそのものの心のあり方を捉え、魔力を養分に育ち、芽吹き開花すれば自らの写しとも言える武器へと変わり力と変わり、そのものの魂華へと変化する。だが、これは聖種を受け取った誰もが成せることではなく、聖種を魂華へと変えるには自身の理想と確たる思い、そして何より強い魔力が必要で、やはりそこには才能が必要不可欠であった。
また。才能こそあれど、平民だからという理由で団体規模のいじめを受け魂華を開花させる前に辞めていった生徒は何人もいた。
私は才能はないものの、家が家なだけあって、陰湿ないじめや、多少の暴力で済まされていた。辛くないといえば嘘になるが、社会的に追い詰められるようなことはなく、学園から立ち去らなければ生きていけないような状態に陥ることはなかったから、その点でいえば私は多少なりとも恵まれているのかもしれない。
実際出ていくにしても、そちらの方が私にとっては都合が悪かった。ただでさえ落ちこぼれと揶揄されている私が、学園を去れば家柄にも傷が付くし、迷惑がかかる。それよか一族の汚点として消されかけない...
だから私は耐えるしかなかった。
ルビア=ローゼンヒルデ
お姉ちゃんは天才だった。
幼くして剣の才能を開花させ、10歳になる頃には家に来るどの師範も敵わないほどだった。
フローラにも首席で入学、そこからわずか3ヶ月で魂華を開花させ、程なくしてすぐに騎士団補佐に任命された。学園では異例の在学中騎士という扱いを受け、そのため学園側は各種制度の見直しや、お姉ちゃんのための特例処置の準備に相当忙しくなっていたらしい。
天才の姉と落ちこぼれの妹。これで比べられないのは無理があると私も思う。
ルビア様なら、ルビアであれば、ルビア様でしたら...
誰も彼もがルビア様ルビア様、私は私であって、お姉ちゃんではない。もう私に期待なんてしないで欲しい、いや、実際期待なんてされてないのはわかってる、けどみんなは私とお姉ちゃんをいちいち比べたがる。ただ私を蔑むためにお姉ちゃんを使っているに過ぎない。そう考えるとお腹の辺りからぶくぶくと黒い泥のようなものが泡立っていくような、なんともいえない気持ちになる。
私はお姉ちゃんを嫌ってはいなかった。むしろお姉ちゃんのことは尊敬し、誇りにさえ思っている。
姉は私が困っていれば助けてくれるし、守ってくれる。その類稀なる剣才は決して私欲のためには使わずに、常に他を守り、助けるために使っていた。まさに騎士の鏡のような人...
私はそんなお姉ちゃんが大好きだった。だからお姉ちゃんには迷惑をかけたくなかった。学園や家で受けている扱いも一切相談しなかった。相談すれば、優しい姉はすぐに私を助けてくれただろう。けれどそれをしてしまえば、私はもっと苦しくなる。お姉ちゃんの影に隠れて助けを求めるだけの私、そうなればきっと心は砕けて二度と元には戻らなくなってしまう。
だから私はどれだけ心無い言葉で傷つけられても、服の下にあざをつけられても、お姉ちゃんの前では常に笑顔でいて見せた。大好きなお姉ちゃんのために、私は私のままでいることを選んだ。