表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

エピローグ 闇の胎動

   エピローグ 闇の胎動


 どれだけ明るい日が差していても、たった一つの遮蔽物があれば、明るい光はその分だけ暗く深い闇を投げかける。そして、どれほど明るい日であっても、時間が経てば必ず日は沈み、すべてが闇に包まれる。光は闇をもたらすが、闇が光をもたらすことはない。闇はただそこにあって、じっとその拡大の機会を狙っているのだ。

 数千年にわたり、一度も日が差したことのない部屋。階下に跪く者たちを、ゆらめく蝋燭の炎だけが照らし出すその部屋では、上階の黒い御簾の向こうにその明かりが及ぶことは、決してない。

 闇よりも深い闇。

 その奥から、聞く者の心を凍てつかせるような、恐ろしく冷たい声が響いた。

「あの王族の小僧が、ここまでやるとはな。五年前、余の傀儡に命じて、確実に殺しておくべきであった。」影の皇帝は、その冷たい声に怒りを滲ませた。

 しかし、そんな様子とは裏腹に、階下に跪いた少年は軽い調子で言葉を返した。

「そうすねぇー。すぐにでも殺しに行きたいとこなんすけど、三水晶の盾、アレが厄介なんすよー。オレとヘルなら、もしかして関係ないかなーとか思ったんすけどー……。」少年は、傍らにいる天馬(ペガサス)をぽんぽんと叩いた。「やっぱダメっした。あの女の子を気絶させるくらいは問題なかったっすけど、所詮オレたちの力は、陛下の影響が強すぎるってことすかねぇー。」

 影の皇帝に対してあまりに無礼な物言いだったが、いつものことであるのか、影の皇帝はその点については触れなかった。

「あの忌まわしき三水晶の盾は、余の結界で封印しておった。あの結界は、たとえ解除方法がわかろうと、魔神(ジン)ごとき一体では破れぬ。しかし二体となれば危うい。新たな魔術師(メイジ)が王族の小僧だとなれば、あの代行者がヤツと手を組むかも知れぬと貴様を王都へ遣わしたにも関わらず、間に合わなかったなどとぬかして、おめおめと帰ってくるとはな。」

 もしこれを言われたのが影の執行官であったなら、その場に平伏して許しを請うばかりであっただろう。しかし少年は、相変わらずの軽い調子であった。

「ヘルも頑張ってくれたんすけどねぇー……。ここから国境の山脈を越えて王宮までって、結構遠いんすよ。まぁでも、最低限、言われたことはやりました。ちゃーんとあの女の子を連れて来ましたから。」少年が手で指し示すと、その先には、美しい金髪と青い眼を持った少女が鉄格子に閉じ込められていた。「ついでにオマケもついてきたんすから、お勤めはしっかり果たせたかなー、なんて。」

 影の皇帝はしばらく黙っていたが、やがて静かに言った。

「まぁ、良かろう……。忌まわしき三水晶の盾の力で王国を失ったのは想定外だが、それはあの王族の小僧を殺せば良いだけのこと。それに、貴様の言う通り、あの裏切り者の代行者から魔術師(メイジ)の刻印を引き剥がしただけでなく、それが余らの手に渡ったのは大きい……。」

「えぇ。オレとあの子。三つのうち二つがこちら側にあるわけなんで、アイツを殺すのなんて、きっと簡単っすよ。」少年は影の皇帝に明るく賛同する。

「だが、この小娘の有用性は、それだけではない。」

 闇を見通すことはできないが、黒い御簾の向こうで、影の皇帝が金髪の少女の方を見たようだった。

「この小娘は、遠い昔に滅びた『闇の魔女』に似た強大な魔術的特性を備えておる。あの代行者を使い倒すためにも、魔女の力に耐えられぬ幼き肉体のうちは控えておったが、このたび、この小娘に魔術師(メイジ)の刻印が宿ったというのなら、そろそろ余の実験を始める頃合いであろう……。」

 鉄格子に閉じ込められたリリーは、恐怖に眼を見開いた。その腕には、王宮にいた時にはなかった、血のように赤い魔法陣がくっきりと刻まれている。


「この小娘を核として、『闇の魔女』を復活させる。そして王国とあの小僧に、絶望を見せてやろうではないか。」



   (終)


「魔神と魔術師」の【第1巻(王都奪還編)】は、これでおしまいです。

ここまでお読みいただきまして、本当に、本当にありがとうございました!!!


現時点で、続編の執筆予定は未定ですが、

もし、多くの方々に本作を読んでいただき、おもしろいと思っていただけていそうであれば、

仕事の合間を縫って、【第2巻(影の帝国編)】の執筆に取り掛かりたいと思います!


ですので、もし、「おもしろい!」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

どうぞお忘れなく、【高評価】と【ブックマーク】を、ぜひともよろしくお願いします!


重ね重ね、貴重なお時間を割いて本作をお読みくださった皆様に、心からの感謝を申し上げます。

皆様の人生に、何か楽しいことが起こりますように。


本当に、本作をお読みくださってありがとうございました!!!


☆★☆ 御春 旬菜 ☆★☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ