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第二十六話

 私の言葉に、しばらくマキシムの反応はなかった。

 今までのお祝いの雰囲気から一変、葬式の空気の中の様な広場の中心、マキシムはただうなだれている。

 一瞬、私の胸にこれでマキシムの心が折れたかという思考がよぎる。

 しかし、それは気のせいだった。


「……なあ、ライラ。誰かに脅されているんだろう?」


 血走った目でこちらをみるマキシム。

 それを目にし、私は思う。

 ……この人はこんな人間だっただろうか、と。


「いえ、最初からこんな人間だったかしら」


 しかしすぐに私は笑った。

 そうだ、最初からこんな人間だったと。


「ら、ライラ……! お願いだ、いかないでくれ!」


 私の笑みをどう勘違いしたのか、マキシムが笑みを浮かべる。


「ねえ、マキシム様。私、最初は貴方にすがってほしかったのよ」


「ライラ……?」


 意味が分からないと言いたげなマキシムの表情。

 しかし、もう私にはマキシムの反応などどうだってよかった。

 思い出すのは、フードの人との会話。

 それは私の原点だった。


 私を冷遇させた人間達がすがってくるような人間になりたい。

 間違っていたと、私を認めてほしい。


 そう私は思っていたはずだった。


「ごめんなさい。もう私は貴方に何を言われてもどうでもいいの」


「……は?」


 それは不思議な気分だった。

 悔しいときはずっとこうなる景色を想像していたはずだった。

 なのに、実際すがられて私の胸にあるのはどうでもいいという感情だった。


「いえ、不思議でもないのかも」


 そういいながら、私は一枚の書類を取り出す。

 それは国王陛下、女王陛下のサインが入った私に爵位とスリラリアという領地を与えるという書類。

 それを見ながら私は笑う。


「それ以上に素敵なものを私は沢山手にいれたものね」


 マリア、カリア、その一族に、スリラリアの人々。

 ……そして、公爵家当主アルダム。


「何を言っているのだ、ライラ……?」


 呆然とした表情でそう問いかけてくるマキシム。

 守りたい大切なものを思い浮かべながら、私はそんな彼へとその書類をマキシムに差し出した。


「何だこれ……っ!」


 その書類を読んだマキシムの顔色が変わり、その様子に会場にどよめきが走る。

 その熱気が最高潮に至ったのを確認した上で、私は宣言した。


「会場の皆様、忙しい中出向いてくださったのに身内による騒ぎのご無礼を謝罪します。そのお詫びといってはなんですが、一つご報告させていただきますので、社交界での話題にしていただければ」


「ま、待て! 私は認めて……」


 焦りを隠さない様子のマキシムが私の方に詰め寄ってきたのはその時だった。

 そんなマキシムに私は実力行使でも足を止めようとして。


「我が主の邪魔はお控えいただきますわ」


「な、貴様……!」


 その前に、現れたのはいつものメイド服に身を包んだマリアだった。

 想像もしない腹心の姿に、私は思わず目を見開く。

 さっきの今でこの場所に忍び込むのは、いくらマリアでも難しいはずだ。

 だとしたら。


 ……にやりと笑うアルダムと目があったのはその時だった。


 本当にあの公爵様はいろんなところに手を回してくれている。

 そう笑いながら私は書類をこの場にいる貴族の方へと向ける。


「やめろ……!」


「あら、レディに乱暴はマナー違反ですわ」


 必死にマキシムはこっちに来ようとするが、マリア相手にしてはそれはただの悪足掻きでしかなかった。


「この度私、ライラ・ドリュードは国王陛下から領土スリラリアと子爵位を下賜されたことを報告いたします。──これからは私の事をライラ・スリラリアとお呼びください」


 その瞬間、会場を圧倒的などよめきが支配した。

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