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第十七話

 初夜式が決定してからの一ヶ月。

 それは私でさえ思い出したくない記憶の固まりだった。


 初夜式を決定して起きながら何度も手を出そうとしてくるマキシム。

 そして、初夜式という式を区切りに再度関係をやり直そうとしてくる実家に、様々な貴族達。 

 その対処をしながら、初夜式の準備をするのは控えめに言ってとんでもない忙しさだった。


 ……何せ、言い出した原因であるマキシムは一切準備を手伝おうとしないのだから。


 そんな最中、私は何度も初夜式までの時間を稼ごうとした。

 しかし、その私の目論見が功をそうすことはなかった。

 全てはマキシムがわずかでも初夜式の遅れを許さなかった故に。

 自分はいっさい動かさないくせに、マキシム自身は私達に厳しかった。

 一ヶ月で初夜式を開く、それでさえ本来無理な日程だ。

 しかし、マキシムは何としてでもそれ以上の時間がかかることを許しはしなかった。


 もしそれが今までのようにただの癇癪であれば、私も気にはしなかっただろう。

 しかし、マキシムは最悪なことに私達がいやがる事を理解してしまっていた。

 ……すなわち、ガズリアの存在は口では勝てない私を動かす手段になると。


 それだけでどれだけこの一ヶ月が私にとって最悪なものだったか理解できるだろう。

 少しでも気に入らないことがあれば、マキシムはすぐにガズリアの存在を出した。

 その事に眉をひそめるのが私だけではないことも気づかずに。


 そして、どれだけ理不尽でも、ガズリアとの接触を出されれば私は言うことを聞かざるを得なかった。

 次にマキシムがガズリアと接触すれば、最悪の事態が起きかねないと理解できたが故に。

 そんなことがあっただろうか。


「……でき、ました」


 髪とメイクの完成を告げるカリアの声が聞こえたとき、私の心にあったのは解放にも似た感情だった。

 確かに初夜式は私にとって最悪の出来事と言っていい。

 それでも、この最悪の生活が終わる事を考えれば、少しはましと言えるのだろうか。


「準備はできたか、ライラ!」


 ……しかし、そんな私の思いは部屋に響いたマキシムの声に吹き飛ぶ事になった。


 その声に私の思考は止まる。

 初夜式が始まるまで私は姿を見せない、そうマキシムとは約束したはずだった。

 なのになぜ、当然の様な態度をしたマキシムの声が聞こえる?


 その思いとともに私は理解してしまう。

 マキシムの声を聞いただけでどうしようもなく強くなる動悸。


 ──私がマキシムを受け入れられる時はきはしないのだと。

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