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第十六話

 それから一ヶ月。

 その後の事は飛ぶようにすぎた。


「……本当に短かったわね」


 そうつぶやく私がいたのは、控え室。

 そこで私は一人のメイドに髪とメイクを施してもらっていた。

 マリアによく似た、けれど姉より優しげな表情をしたそのメイド、カリアはこわばった笑顔を浮かべ告げる。


「任せて下さい、ライラ様! 私が腕によりをかけて綺麗に……」


 しかし、その言葉は途中で止まる。

 まるで何かいけない事を言ってしまったと言いたげに。

 その反応に私は思わず笑ってしまいそうになる。

 ……本当に姉妹そろって優しすぎるのではないか、と。

 だから私は何も気づかなかった振りをして笑顔で告げる。


「本当にありがとうね、カリア。こんな綺麗にしてくれるなんて夢みたい」


「ライラ様……」


「そう言えば、カリアにも私が綺麗になりたいと言った時、いろいろと協力してもらったわね」


 あえて昔の話題を出すと、少しカリアの雰囲気が変わるのが伝わる。


「そう、ですね……。あの時からライラ様は信じられないほどお美しくなられましたもんね!」


 そう弾んだ声で言った後、少しあわてた様にカリアは続ける。


「あ、いえ、あのときのライラ様が美しくなかったといいたい訳ではなくて……」


「気にしすぎよ、カリア。そんなこと言われたなんて私は思ってないわよ」


「そ、それなら良かったです……」


 そう安堵の声を漏らすカリアに、私は本当に正反対の性格の姉妹だと改めて思う。

 マリアは今でも、かつての私の芋具合をからかってるほどなのだから。

 ……それでも最後には、あのときのライラ様も大好きだったとこちらを照れさせるような事を言ってくるが。


「そう考えると、似たもの同士の姉妹かしら」


 そう思って私は笑う。

 優しすぎるところは確かに二人に姉妹の血を感じさせると。


「え……? 何か言いました、ライラ様」


「いえ、確かにあのときの私はあまりにもぱっとしなかったと思って」


「え、あ、その……」


 その私の言葉に、カリアが困惑しているのを感じる。

 自分の言葉に私が怒りを感じているとでも勘違いしているのだろう。

 そんな彼女の姿に笑いをこらえながら私は告げる。


「本当に困ってないから安心して。──私は心から自分を変えてくれた貴女達姉妹に感謝しているのだから」


「……っ!」


 カリアが息をのむのが伝わってくる。

 それに私は思わず笑いそうになる。

 感情がわかりやすいことも、マリアとカリア姉妹の似ていない点だった。


「だから、ありがとね。おかげで私は前を向いていける。強い私でいられる」


 その言葉にカリアが少しの間黙る。

 しかし、少ししてカリアが告げた言葉は明らかにふるえていた。


「……私はライラ様がもう少し弱くても良かったです。それでライラ様が傷つかずにいられるなら」


 その言葉に私は何も言えなかった。


 初夜式の当日。

 式が始まる三時間前。


 ……未だマリアの連絡はなかった。

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