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むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか!?~  作者: 景華
第二章 寝言の強制力と魔法使い

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Sideシリウス~~セレンがもたらした変化~


 アイリスとセレンが広間を出て、ロゼをポプリが連れて出て、残された私は、食卓に着いて成り行きを見守っていた父母へと視線を向けた。


「……父上、母上、お願いがあります」


 姿勢を正し、顔はこわばっているだろうと思う。

 何せ、私が父と母に頼みごとをすることなど、ほぼ無いことだったからだ。

 幼い頃から、品行方正に、このカルバン公爵家の次期当主にふさわしくあろうと自分の要求など押し殺して来た私にとって、慣れないことをすると緊張する。


「ほぉ? どんなお願いだね?」

 興味深げに目を細める父に、私は思い切って口を開いた。

「一週間後、私に時間をください」

「一週間後? それはいいが……いったいなぜ?」

「……セレンと……。彼女とちゃんと、結婚式を行いたいのです」


【寝言の強制力】によって婚約式も結婚式もすることなく書面の身で結婚をしてしまった私達。

 最初はセレンは強制力のせいだからと3年の白い結婚の末に離縁をするつもりでいたが、お互いの気持ちが同じだと分かった今、その必要はなくなった。

 が、けじめはきちんとつけておきたいのだ。

 そしてそのうえで、セレンと本当に結ばれたい。


 大切だから──私が、幸せにしたい。


「ふむ…………よく言った!! 無論、時間を設けよう!!」

「えぇえぇ!! 私も式については気がかりだったもの!! 何か手伝えることがあれば協力するわ!!」

 そう言って快く承諾してくれた父と母に、私は「ありがとうございます……!!」と頭を下げた。


 刹那────バンッ!!

「失礼しますわ!!」

 突然勢いよく扉を開けて現れたのは、なぜかストローグ公爵令嬢、そしてエルヴァという組み合わせ。


「なぜ二人ともここに……」

「突然のご訪問、失礼いたしますわ。昨夜の様子が気になって伺いましたのと、トマス様が先ほど無事旅立たれたこともご報告に。そうしたら何やら騒々しいので、不躾ながら隠れてこっそり様子をうかがっておりました」


 隠れて、って……。

 人の家で何をしてるんだこの二人は……。


 それでも、今回この二人には感謝している。

 ストローグ侯爵令嬢は私がいない時からセレンを支えてくれ、先のパーティでも力を貸してくれた。

 エルヴァもそうだ。

 聞いたところによると、家を出たセレンを保護してくれたのは彼だというし。


「二人とも、今回は本当に世話になった。感謝する」

 私は二人に向かって頭を下げると、ストローぐ侯爵令嬢は首を横に振ってから笑った。


「友人の為ですもの。問題ありませんわ。それよりも、今のお話、素晴らしいと思います。是非私にもお手伝いさせてくださいませ」

「僕も、警備などはお任せください」

「君たち……」


 やはりセレンはすごい。

 この二人をこうも変えてしまうだなんて。

 彼女のそのまっすぐさが、いろんな人の心を溶かすのだろうか。


「ありがとう、助かる」

「それと……、昨日おっしゃっていたお礼を要求させていただいてよろしいでしょうか?」

「あ、あぁ。もちろんだ」


 昨夜は彼女のおかげでトマスを放置することなく抜けることができた。

 それ相応の礼をせねばと思っていた私に、彼女から放たれたのは予想外の言葉だった。


「我が家のメイドが一人結婚の為里に帰り、人が足りなくなりましたの。あのロゼとかいう小娘ですが、うちにいただけませんかしら?」

「ロゼを、ストローグ公爵家に?」

 驚きに目を見開く私に、ストローグ公爵令嬢が頷いて続ける。


「えぇ。しっかりと使えるメイドに教育しますわ。……よく事情は把握していませんが、あの方は魔法使いではなかったということはまた娼婦に戻るのでしょう? それよりは私が預かり、きちんとした礼儀作法を身に付けさせ性根を更生させた方が世の為ですわ。セレンシア様もカルバン公爵令息様も、あの小娘を娼婦に戻すのは本意ではないでしょう?」


 確かに、ロゼのこれからについては私も気にかかっていた。

 メレの町から娼婦であったとはいえ、そこへ再び放り出すのはいかがなものかと。


 ストローグ公爵家の使用人教育はかなり厳しいものと聞く。

 ひととおりの仕事の他、マナーや教養もみっちりと教え込まれるのだとか。

 娼婦に戻るよりよっぽどいい道だろう。

 アイリスも付きまとわれることもなくなる。

 だが……。


「良いのだろうか? そんな迷惑を──」

「何を今更。言いましたでしょう? 私の友人の為だと。これくらいなんてことありませんわ。逃げ出したいとか言い出しても、逃がしませんわよ。おーっほっほっほっほっ!!」


 そうにんまりと笑ってから高笑いするストローグ公爵令嬢に、私も頬を緩め、胸に手を当て礼を示した。


「ストローグ公爵令嬢。あなたの温情に、感謝します」


 あんなにも敵だらけの逆境から、ここまでの信頼を勝ち得たのは、まぎれもなくセレン自身の力だ。

 そんな彼女を、私はきちんと幸せにしなければならない。

 私はそう、あらためて決意を固くしたのだった。






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