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むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか!?~  作者: 景華
第一章 寝言の強制力で結婚しました

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夫の溺愛になんて飲まれませんっ!!


「──ふぅむ……なるほどなぁ……」


 シリウスが私の能力のことを話し終えると、騎士団長様は腕を組んだまま「ふぅー……」と長い息を吐き、どっしりとソファの背もたれに身体を預けた。


「魔法使いに関しては、殿下にも取次ぎ、協力を仰ぎたいと思っています」

「まぁ、妥当だな。魔法使い関連は王家が一番近しいからな。ま、見つかるかどうかは別として。……わかった。俺も色々伝手をたどって、魔法使いについては調査をしてみよう。ついでに、その【寝言の強制力】についてもな」


 そう言ってニカッと白い歯をのぞかせて笑った騎士団長様に、ほっと息をつく。

 外見の安定感のせいか、妙に心強く感じる。


「騎士団長、ありがとうございます」

「セレンシアちゃんのためだよ。お前みたいなんが小さい頃から傍にいりゃ、自信がなくなるのも当然だ。ちゃんとお前の言葉を信じられるように、環境を整えてやらんとな」


 まるで私の感情を見透かしたような騎士団長の言葉に、私は思わず言葉を詰まらせた。

 まさか初対面の人に、私の立場をわかってもらえるだなんて思わなかったから。


 シリウスが幼馴染として傍にいることを羨まれることはあれど、同情されることなんて基本的にはない。

 家族と、今は領地で新人教育にあたっている私の唯一友人とも呼べる専属侍女だけだ。


 冷静で平等な目を持ち、瞬時にその人の立場になって考えることのできるお方、か……。

 さすがこの大国ローザニア王国の騎士団長様だわ。


「陛下にはもう?」

「いえ。朝、家の者を使いにやったので、仕事終わりに殿下に話をと思っています」

「そうか。……わかった。ま、殿下が動くなら見つかるのも早かろう。なにせ、あの方の精霊の紋様は、他の王族よりも濃いからな」


 それでも今まで見つけようとしなかったのは、彼らを追いやってしまったという負い目があるからだろう。

 そんな王族が、いち元伯爵令嬢のために動いてくれるかどうか……よね。


「はい。彼らもセレンの力を野放しにするという危険性は身をもってよくわかっているでしょうし、必ず見つけていただきます。……本気で、ね」


 そう口元だけ弧を描いた冷たい笑顔に背筋がぞくりと震えた。

 シリウス……大丈夫かしら。

 脅しかけたりしない、わよね?

 なんだか急に不安になってきたわ。


「では騎士団長、そういうことですので、セレンの力については内密にお願いします」

「あぁ。国家機密みたいなもんだもんな。安心しろ。誰にも言わねぇよ」


 そう安心させるように再び歯を出して明るく笑う騎士団長様に、シリウスは「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べてから私の手を引いて立ち上がった。


「では、私は妻を送ってから持ち場に戻ります」

「あぁ。セレンシアちゃん、こいつのことよろしくな」

「は、はいっ!!」


 私は騎士団長様に向き直って頭を下げると、再びシリウスに手を引かれるがまま扉の方へと足を進めた。


「あぁ、そうだ。騎士団長」

「んぁ?」

 扉の前で足を止めたシリウスが、少しだけ振り返ってから口を開いた。


「妻の実家に行ってくるので、明日から二日間、有給いただきますね」

「は!? 明日から!?」

「では失礼」

「は、え、お、おい!?」


 突然の宣言に頭がついて行っていない騎士団長様を気にすることなく、シリウスは私を連れてそのまま騎士団長室を後にした。



「だ、大丈夫なの? 二日も、しかも突然に……」

「大丈夫だよ。今特に遂行中の任務はないし。何かあっても鉄壁の騎士団長がいるからね。それに言ったでしょう? 副騎士団長一人いなくて壊れるような国なら、とっとと壊れればいいんだよ。あぁ、安心して。セレンのことだけは私が守るから」


 辛辣な物言いに、ここのところの甘さとのギャップを感じるけれど、最後の一言で“あぁ、最近のシリウスだ……”、と現実に戻る。


「そうだセレン。今日は魔法使いの件を殿下に話をしてから帰るから、少しだけ遅くなる。寝るまでには帰るつもりだから、いつもみたいに可愛くベッドで待っていて」


 言い方がどうにも誤解を招きそうなのが気になるけれど、ここに突っ込んだら負けだ。

 平常心。平常心よ。


 魔法使いが見つかれば、シリウスの私への溺愛はなくなる。

 今この溺愛に慣れるわけにはいかない。

 だって慣れてしまえば、それが無くなった時の穴を埋めることなんて無理だもの。


「わ、わかったわ」

「ん、いい子。じゃあ、屋敷まで送るよ」


 繋がれた右手を引かれながら馬車に乗り込む。

 そして甘い言葉にのまれないようにと平静を装う私を試すかのように、屋敷につくまでの間、彼の膝の上で羞恥に耐えることになった私。


 これから大きな荒波に飲まれることなんて知らないまま、今はただこの溺愛に飲まれないように必死にあらがうのだった。






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