9.反転攻勢で敵を倒す!
ハイマース「ロシアはおかしなことばかり言う。ただ、それだけ」
「妖怪に勝利をッ! べっとふぉー!」
べとべとさんが小豆ばばあに棒を振り下ろす。攻撃は簡単に敵の棒で防がれた。
だが、べとべとさんの猛攻は終わらない。
「奥義べとべとはるふぁいあ~!」
べとべとさんは口から青い炎を吐いた。上から背の低い小豆ばばあの頭に直撃させる。
確実に炎は当たっていたが、様子がおかしい。小豆ばばあは炎で苦しんでいる様子が一切なかった。
べとべとさんは即座に姿を消す。
次に彼女が現れたのは、小豆ばばあの頭上。彼女は宙に浮いている。
べとべとさんの二本の三つ編み髪が、腕のように上がっていた。それぞれの先端が棒をつかんでいる。
金色の棒と、黒の棒。
「奥義三叉槍!」
元から持っていた白い棒を合わせた三本の大和棒で、小豆ばばあの頭をぶっ叩く。
この時、攻撃が確実に入った。
べとべとさんはきれいに着地し、小豆ばばあの鬼火が三つとも消えるとともに、敵は床へと倒れた。
「べとーッ! うちは妖怪げーむちぇんじゃーっ!」
べとべとさんは大和棒を高く掲げつつ勇ましく叫んだ。
「どうだお嬢様! うちは侵略者に勝利した! よーしゃく伯爵領の大豪邸を奪還した! ざまあみろ小さな侵攻国の手先め!」
「ええと……さっきの炎はなんだったんですか?」
ジーリエスに聞かれて、べとべとさんはそちらを向いた。巨乳ばかり長く見ていたあなたには、ジーリエスの胸部に違和感を覚えてしまう。
「あれは、牽制。幻の炎で熱くはない。その名は、奥義べとべとかえんほうしゃ」
「なんとかファイアって言ってませんでしたか?」
「うん、それ」
名前はどうでもいいらしい。
「それと、背後から三本で叩くのは卑怯では?」
「お嬢様が拳銃を貸してくれなかったからしょうがない」
「拳銃なんて持ってないものをどうやって貸せとっ?」
「横流しをしたから、今は持っていないの?」
「最初から持っていませんよッ!」
「真相はどちらでもいい」
「いや信じて下さいって!」
必死だったジーリエスの前で、べとべとさんは手に持っていた大和棒を体の後ろに回した。ハーフパンツのお尻側に収納しているのだろう。三本も中に入れるのを見ているジーエリスは、複雑な表情をしていた。
「とにかく、うちは決闘に勝った。見て、お嬢様。裏切り者の愚かな妖怪は、床の上で転がっている。うちは優しいので、無抵抗の妖怪に追撃を加えたりはしない」
「……あの妖怪の人、どうなっちゃったんですか?」
ジーリエスは倒れた敵の身を案じているようだ。
童にしか見えない老婆の妖怪は、全く動いていない。
「墓場に行ったのではない。ただ気絶しているだけ。八年間、辛抱強く待っていれば目を覚ます」
「八年もですかっ?」
「冗談。長くても、八時間ぐらい。すぐには目を覚まさない。その前に拘束する。今、べとべと縄を出す」
べとべとさんは、またお尻に手を回した。
「今日は長いものがよく出る」
「いちいち言うのやめて下さいっ!」
出した縄を器用に扱って、べとべとさんは小豆ばばあを縛り上げた。
「終了べと」
べとべとさんの言う自称べとべと縄は、べとべとはしていなさそうだった。それでも、ちゃんとした縄で、対象をしっかり拘束出来ている。
「かわいそうな気もしますが……、それよりも、私のために勝ってくれてありがとうございます、べとべとさん」
「……お嬢様のためではない。侵略者に対する憎しみのほうがはるかに勝っていた」
「そーですか……」
「これを返す」
しらけた顔のジーリエスに、べとべとさんは髪飾りのあなたをくっつける。
あなたの視界は再びジーリエス側に戻った。
一部の人間は、おかしいことを平気で正しいと言います。
ウクライナの南部ザポリージャ州は、州都ザポリージャで住民投票もやっていないのに、なんで独立と編入の住民投票が有効になると思うのでしょう? このこと以前に、侵攻中におこなう住民投票なんて、やった側が得になる結果しか出ませんし、実際その通りになっています。
あなたには、あの糞住民投票を正しいと思う人間には、なってほしくはないです。