7.これはしかたのない特別臨時作戦
T-54戦車「ロシアは早くウクライナ全土から撤退しろ」
べとべとさんと小豆ばばあがリビング内で大激突だ。
部屋の端っこに避難して、ジーリエスは妖怪同士の対決を見守る。あなたにも戦いの様子が窺える。
「真実は正義だ! うらぁ~っ!」
好戦的なべとべとさんが鋭い蹴りを繰り出した。威力は高そうだったが、小豆ばばあにかわされてしまう。
「まだまだッ!」
べとべとさんが大和棒を振り下ろしても、駄目だった。敵は小学生並に小さくて、攻撃を当てづらい。
「くぅっ!」
べとべとさんが激しく棒で連続攻撃するも、華麗な棒さばきで防御されてしまう。
「べとッ!」
べとべとさんが頭を叩かれた時の声がかわいかった。
小豆ばばあの攻撃はすごい。手数は少ないが、べとべとさんの頭部を的確に叩いている。その動きは驚くほど俊敏で、ばばあの名はまるで当てはまらない。ただ、小豆がジャラジャラと時折床に落ちているようだ。
「奥義べとべと左岸!」
しかし、べとべとさんの攻撃は空を切った。
「奥義双頭斬り!」
しかし、べとべとさんの攻撃は失敗した。
「奥義べとべと破壊工作活動!」
しかし、べとべとさんの攻撃活動は防がれてしまう。
「全部同じ技にしか見えないんですけどっ!」
「奥義べとべとしっくす!」
これも同じだった。
「きゃうっ!」
べとべとさんの抗戦もむなしく、小豆ばばあの棒でまた叩かれる。
あなたも見ていて分かっただろうか。べとべとさんが攻撃を食らうと、背後の鬼火が、一つ減る。この鬼火が全滅すると、決闘での敗北になるのである。
侵略者との、負けられない戦い。
ジーリエスはべとべとさんの身を案じるが、それと同じぐらい、リビング内が荒廃することを恐れている。窓ガラスやテレビなど、棒で叩かれたらまずい物がたくさんある。
どうにか何も破壊されないまま……べとべとさんの背後の鬼火が、早くも半分以下になってしまっていた。
劣勢を感じていたべとべとさんが後退し、テーブルの上に置いてあったお皿を手に取った。
「奥義、お皿deカッパー!」
べとべとさんはお皿を勢いよく横投げする。
「ええーッ?」
ジーリエスは非常識なべとべとさんの行動にびっくりする。
ひゅるひゅると回転しながらお皿が小豆ばばあに向かって弧を描いて行き……、簡単に避けられた。
飛行物体だったお皿は壁にぶつかって盛大な破壊音を出し、グチャグチャに割れた。
「やっぱり!」
「ちぃっ!」
「何やってるんですかべとべとさん!」
「お嬢様! 拳銃をよこせ! スコップでもいい! こんな棒じゃダメべとっ!」
愛用の武器をこんな棒と言い切った。
「棒で戦わなきゃいけないんじゃないんですかっ?」
「他の兵器で弱らせて、とどめは大和棒でやれば合法!」
べとべとさんは強気で発言する。
「なんか卑怯なんですけど!」
「卑怯じゃない! これはしかたのない特別臨時作戦なんだッ! だから民間人や民間施設に被害は一切出ない!」
「お皿粉々ですよ!」
「お皿ぐらい、お駄賃をもらえれば後でいくらでも買って来る! まずは小さな侵攻国の下僕を倒すのが先決!」
「それなら早く倒して下さいっ! それと家具とかはホントに破壊しないで下さいよッ!」
「そのつもりっ!」
べとべとさんは再び棒で小豆ばばあに襲いかかった。
侵略者ロシアは自分に都合の悪いことになると、「じゃあ他の国や他の例はどうなんだ?」と言って、ごまかします。
他の国や例がどうだとしても、ロシアが犯罪をしていることに変わりはありません。犯罪者が自分以外の犯罪者を責めたからって、犯罪者の罪が消えないのと同じことです。
ごまかすんじゃなくて、ウクライナから早く撤退するが正解です。攻め込んでいる側が住民保護と言っても、やっていることとやろうとしていることが正反対で、話になりません。