表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/16

5.帰り道での声は誰?

日本には、「ウクライナの南部オデーサ州と東部ハルキウ州もロシアが占領するべき」みたいな、馬鹿げたことを言う人々もいます。これこそ、侵略主義的な考えかたですよね。現時点でオデーサ州とハルキウ州をロシアが手に入れるためには、武力行使を続けるしか方法がないからです。


こういう侵略主義者達がトイレの水を流すように消えて行ってくれたら、大変気持ちが良いのですが。


また、日本においては、お金があるならウクライナじゃなくて国内に使えと不満を訴える人もいます。そう言うのは自由であり、なんらおかしくはない不満です。ただ、そういう人には、ついでにロシアにも言ってやってほしいです。ウクライナ侵攻に使う金があるなら国内のテロ対策に回したほうがいいんじゃないか、と。


「オデーサ州とハルキウ州をロシアに割譲(かつじょう)しろ」などと言っているような日本の侵略主義者達が払う税金も、もれなくウクライナ支援に使われていると思えば、少しは笑顔になれます。

 ジーリエスは二階のトイレですっきりし、長い廊下を通ってリビングへと戻ろうとしていた。


 その際、誰かがついて来ているような気がした。


 耳を()ますと、足音が聞こえる。


 犯人が誰なのか、ジーリエスにはすぐに分かったのだろう。足を止め、振り返る。


「べとべとさん、そこにいるんでしょう? 出て来なさいよ」


 一階トイレで散々待たされた上に、二階トイレにまで行かされて、しかも後をつけられていたため、言いかたが少々きつくなっていた。


「嫌だ」


「はぁ? もうっ、なんなんですか! じゃあいいですよッ!」


 早足でジーリエスはリビングに戻った。


 この時、彼女は『見てはいけないもの』を見てしまった。


 妖怪べとべとさんだ。


 部屋の中には、すでにべとべとさんがソファーに座って絵を描いていたのである。


「あれっ、べとべとさん? いつ追い抜いたんですか?」


「ん? うちはとっくに戻っていた」


 そう答えるべとべとさんは、頭にかわいい猫耳をつけている。


「その猫耳、どうしたんですか?」


「用を足した際、猫さんの尻尾のように長いのが出た。だから、猫耳を装着。うちはもしかしたら、妖怪猫又(ねこまた)さんなのかもしれない」


 下品な言葉を発したべとべとさんでも、両手で猫耳に触れる様子は愛らしい。


「今……戻って来る時にですね、私の後を、誰かがつけていたようなんです。でも、嫌だと言って、姿を現しませんでした。家の中には、私達以外に誰もいないじゃないですか。お父様とお母様は出掛けていますし、メイド達も全員いませんし……」


「……これは非常におかしい」


 べとべとさんはペンを置き、深刻な表情になった。


「考えてみたら、うちら以外に誰もお屋敷内にいないというのは、うちがここに住みつくようになってから、一度もなかった。――これはきっと、『小さな侵攻国』の仕業(しわざ)に違いない!」


 べとべとさんが語気を強め、急に立ち上がる。


「気をつけろお嬢様! やつらは残忍だ! 不法侵入したやつらはお嬢様を誘拐して身代金を奪った挙句(あげく)、殺すつもりなんだッ!」


「また始まってしまいました……」


 ジーリエスは頭を(かか)えた。


 彼女は知っている。べとべとさんは侵略国家『小さな侵攻国』に対し、異常なまでの憎しみを(いだ)いており、何かあるとすぐに『小さな侵攻国』を責めるのであった。


「どこにいるッ! 愚かで最低な侵略者どもめ! 出て来いッ!」


 リビングの出入り口まで駆けて行って、廊下に向かって叫んだ。


「くぅ……隠れているとは卑怯な……。でも、卑怯な連中にふさわしい行動と言えるべと!」


「べとべとさん、私の気のせいだったかもしれないので……」


「いや、一応、探索を開始する。安心するのは、それから」


 べとべとさんは床の上で正座を始め、目をつぶり、両手を組んでお祈りをするような格好になった。例えるなら大和撫子(にぽぽなでしこ)のような、美しく整った女性の姿に見えた。


 十秒近くの静寂が続いた後、べとべとさんの上半身が傾き、右手で体を支えた。どういうわけか、開いた片目を含めた表情は、熱を帯びた雰囲気に変化している。まるで()っているかのようで、とても(なま)めかしい。


「いる……。異形が少なくとも二体……。一体は、お嬢様のすぐ近く……。でも、いつもいる、害のない九十九神(つくもがみ)だから、問題ない……」


「えっ? 私の近くにいるんですか?」


 ジーリエスは周囲を何度も素早く見回した。そのたびに、あなたの視界がせわしなく動く。


 一方、べとべとさんは白い着物の(えり)を開き始める。火照(ほて)った顔で、胸部周りの白い肌を露出する。白い下着やその肩紐(かたひも)(さら)してしまう。


「あつい……。向こうの妖怪の反応が、おおきい……。あっち……。あっちのやーつは、やーばいぞぉ……」


 べとべとさんがふらつかせながらも指を差す方向、部屋の(かど)には……。


 不思議なことに、誰もいなかった。

ロシアはウクライナの民間人や民間施設を狙わないで攻撃するから、人道的だとする、狂った意見があります。例え誰もいない場所にミサイルを撃ち込んだとしても、ウクライナ領土内に攻撃したこと自体が非難されるべきでしょう。


ロシアとウクライナ双方の破壊活動は非難されるべきですが、ロシアの侵略を非難しないでウクライナだけを非難する人間達も、非難されるべきです。


東部ドンバス地方の住民保護を隠れ(みの)にして、関係ないヘルソン州とザポリージャ州を奪っているのを当たり前に賛同している、おかしな人間の住み家こそ、ロシア軍によってめちゃくちゃに破壊されてほしいですね。そんなことは起きないでしょうが、もしそうなったら、その時だけはロシア軍を称賛(しょうさん)したいです。非難もしないと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ