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12.使い魔の魂は主とともに

VK1602レオパルド軽戦車「ロシアはおかしなことを主張しながら、占領を続ける」

「そこに座ってもいいかな?」


「ええ……どうぞ」


 ジーリエスから許可を得た小豆ばばあは、ソファに座った。


「にぽぽの妖怪管理機関の者だという証拠を出せ!」

「ちょっとべとべとさん! 失礼ですよっ!」


 動揺していたジーリエスは、小豆ばばあの言うことを信じていたようで、さらに不利な立場に落ちることを恐れていた。そんな彼女に対して、べとべとさんは防波堤のようになろうとしている。


「IDカードがあるが、これを本物だと主張しても、ボクが侵攻国の人間なら偽造カードを作って平気で嘘をつくだろうと疑われるから、証明にはならないか」


 小豆ばばあは身分証明書を見せながら語る。


「まあ、ボクが偽者のエージェントだとしても、君達に多額の振り込みを要求するわけでもなく、話をするだけだ。ボクを疑うなら、君達は自称エージェントのウソを聞いてやっているんだぐらいの気持ちでいてくれればいい」


 そうは言っても、身分証明書は本物のようだった。


「見せろ」


 べとべとさんが奪い取って裏表を凝視(ぎょうし)した。偽物だとは判断出来ず、苦しそうな顔を浮かべていた。


「……返す」


「ありがとう。君達も座ってくれ。簡単な事情聴取をさせてもらうよ」


 落ち着いた低い声で言われ、ジーリエスも小豆ばばあの反対側に座ったが、体操着姿のべとべとさんは勢いよく土下座を始めた。あなたから見ても、完璧(かんぺき)な土下座だった。


「申し訳ないっ! あれはお嬢様ではなく、うちが悪かった! お嬢様の罪は見逃してほしい!」


「いや、本日ボクは、ジーリエス嬢を逮捕しに来たわけじゃない。安心して欲しい。――だが、ボクとてあの侵攻国は大嫌いだ。一方的にボクをあのテロ国家の手先と決めつけたことだけは、謝ってもらおうか」


 声には凄味があり、


「……ごめんなさい」


 べとべとさんは素直に謝罪を述べた。


「いいだろう。では、本題に入ろうか。……ジーリエス嬢。君は何故、お父上に『あの時のこと』をどうにかしてほしいと頼んだのかい?」


 あの時のこととは、NTR取締法を違反した夜のことだろう。


「それは……あれぐらいのけんかで、べとべとさんと別れるのは嫌だったからです。私……べとべとさんのことを、常々面倒くさいとは思うのですが……」


 そう聞いて、べとべとさんは眉を上げた。彼女はまだ床の上で正座している。


「妹みたいに思っていて、……好きなんです」


 今度のべとべとさんは片方だけ見えている青い瞳を輝かせた。


「違反をしたら、使い魔がすぐNTRに強制送還されてしまうと、ネットの情報にありました。ですから……お父様にそうならないよう、頼みました。すみませんでした」


「謝罪の気持ちがあるのは分かった。……ネットでは、正しい情報も間違った情報も混在している。その点に注意するべきだね。今回の件においては、仮に重大な違反があったとしても、即座に主人と使い魔を引き離すことはまずない。妖怪と使い魔契約をする時点で、問題を起こすことはないと判断されているからだよ」


 そう説明し、小豆ばばあはべとべとさんのほうに顔を向けた。


「NTR取締法は、妖怪またはその主人を罰するための法ではあるが、両者を尊重するために存在するものでもある。べとべとさん。君が今現在、他者の精神操作を受けていない素の状態なのは分かっている。その上で、君に問おう。ジーリエス嬢と別れるか(いな)かを」


「そんなの、決まっている。うちは今も明日も、お嬢様の使い魔、妖怪べとべとさんだ!」


 胸部を揺らしてべとべとさんは宣言した。


「では、そのままでいいさ。ボクは君の主張通り、どちらかと言えば、ジーリエス嬢よりも君に非があったと考えている。今日一日、監視をしていた結果も踏まえてね。……一応伝えておくけれど、ボクは違法にこちらへ侵入したわけではなく、ヨーシャク伯爵殿から許可は得ている。本日は、君達二人以外には出払ってもらった」


 厳密にはあなたもいたのだが、そのことに小豆ばばあは触れない。彼女も、あなたの存在には気づいているようだ。


「あの緊急装置はね、とりわけ設置した初期の間は厳しい基準で設定されているから、作動し(やす)いのだよ。鳴らなければいいに越したことはないが、鳴ったからといって即違法にはならない。ボクのような管理側の妖怪が派遣され、違法性を調査、判断するんだ」


「それで……私には、どのような判断が下されるんですか?」


「ボクは君を二度も大和棒(にぽぽぼう)で叩いた。本気ではなかったが、べとべとさんの反応を見るために暴力を振るったことは、すまなかった。この非礼の引き換えで、君の罪は不問としよう」


「本当にそれだけでですか?」


「ああ」


「良かった……ありがとうございます」


 ジーリエスは深く頭を下げた。


「感謝する、えいじぇんとBBA(びーびーえー)


「エージェントABBAだよ。まあ、君の呼びたいようにすればいいさ」


 特別面談は終了した。

ウクライナが負け続けたら、ハルキウ州とオデーサ州も失うことになる、と語る人々がいますが、これを語っておいてロシアがやっているのは侵略じゃないと否定するのであれば、こんなふうに思うことにします。そういう人々は、そこらで失われても、大した損失にならない程度の人間なんじゃないか、と。捨てるのがもったいないゴミと、捨てても気にならないゴミは、まるで違う。


侵略じゃないって必死に主張しているにもかかわらず、オデーサもハルキウも、とも言っている時点で、それ侵略だろって分かんないんですかね。昔はともかく、現代社会では、侵略に当てはまります。


FV107シミターMkII(マーク・ツー)偵察戦闘車「侵略者ロシアは破壊活動をやめてウクライナから去れ」

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