11.【過去の話】チャンネル争いが勃発!
IS-2重戦車「侵略者ロシアの破壊にはうんざりだ」
集団的自衛権の行使と言う一方で、集団的自衛権と関係のないザポリージャ州とヘルソン州も占領している理由を全く説明出来ていないので、ロシアの特別軍事作戦は侵略ではない、にはなりません。
もし、集団的自衛権でザポリージャ州とヘルソン州をも併合承認出来るのならば、そんなことを承認する連邦国家など、余裕で滅んで構わないです。
これは、べとべとさんがまだヨーシャク伯爵家に来て間もない頃のことであった。
時刻は午後九時、少し前。べとべとさんとジーリエスは、二人っきりのリビングでソファーに並んで座り、テレビを見ていた。
「侵攻国がまたも武力によって町を占領しました。こちらの町です」
テレビに映る女性アナウンサーが地図を見せながら解説している。
べとべとさんはお皿の上にある大量のにぼしを食べながらも、テレビから目を離さない。熱心な顔をしているが、機嫌は非常に悪そうであった。
ジーリエスは頻繁にべとべとさんへと目をやっていた。
「あの……、べとべとさん。そろそろドラマが始まるので、チャンネルを変えたいのですが……」
「却下」
べとべとさんはジーリエスのほうを見向きもしないで即答した。
ジーリエスにとって不運だったのは、この日も両親が不在だったことと、ニュースの時間が繰り下げられてしまっていたことにあった。
「すみません、時間なので……」
ジーリエスはやむなくリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。
ドラマはすでに始まっていた。
「何をする」
べとべとさんはリモコンを奪い取ってニュースに戻した。
「べとべとさん。ニュースなら後でも見れるでしょう?」
ジーリエスはドラマに変えた。
「このドラマは録画予約がしてある。今視聴しなくても良い」
べとべとさんはリモコンを奪い取ってニュースに戻した。
「確かにそれは正論ですが、今観れるんなら観たいですよね? 先週はいいところで終わって、べとべとさんも気になっていたじゃないですか」
「気になるのは、小さな侵攻国の腐った行動の情報の数々。お嬢様は侵略者を許すの?」
べとべとさんは大きな胸部の下でリモコンを守りながら喋る。
「そうじゃないですけど、今私達がニュースを見続けても、戦況が有利になるわけではありませんよね」
「そういう考えが良くないッ! お嬢様は国際情勢にもっと関心を持つべと!」
「関心は持っていますよ! ですが今はドラマを観たいだけです!」
「ドラマは作り物! 戦争は現実! こんな時にも戦地では多くの人々が苦しんでいる!」
「それならにぼし食べながら観てないで下さいっ!」
「にぼしは関係ない! 論点をずらすな!」
結局、二人はリモコンの奪い合いにまで発展した。
そうして取っ組み合いになったところで、緊急自動警報装置のサイレンが鳴る。リビングは赤い光で満たされた。
「「え?」」
二人は驚いた。
保護対象の妖怪の緊急事態時には、屋内に備えられた装置が作動する。天井には光球があり、それが赤く発せられている。
この時ばかりは、サイレンを止めようと奮闘したり、急に掛かって来た連絡に対応したりと、大きな混乱が生じた。両親が帰宅するまで、伯爵家の従者達も巻き込んで大変だった。
落ち着いた頃には、ジーリエスもべとべとさんもお互い非を認め、謝り合った。
しかし、謝ったところで、ジーリエスは妖怪への暴力行為をしてしまったことに変わりはない。
自称エージェントABBAによって、この時の苦い記憶が二人の脳裏に蘇ってしまったのであった。
ロシアは強い、ウクライナは勝てないから降伏しろって、日本では嫌われる思想ですよね。
アニメとか漫画とか、日本の創作だと、ロシアの立ち位置って、確実にざまあされる側の敵です。ロシアの特別軍事作戦のせいで、アニメで侵攻して来る敵勢力を見るたびに、ああまるでロシアみたいだなーと思ってしまうようになりました。
日本は国としての立場ではロシアを擁護していませんし、擁護する必要は全く無いです。「ロシアにも正当な理由がある!」と言うのならば、ロシアは開戦前に、完璧に日本側にそれを説明して、日本を味方に引き入れるぐらいに納得させられれば良かっただけ。それも出来ないで侵攻後に言いわけをしたって、失敗に失敗を重ねるだけであり、北方領土占領とウクライナ占領が重なって見える日本が味方になるわけがない。
ロシア国旗を見るだけで不快な気分になるのは、ロシアが他国の領土を奪い取る程度の存在だと、再認識したからに他なりません。
ロシアは優しい、じゃなくて、こんな所とこれまでずっと外交努力を継続して来た日本は優しい、ですよね。




