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1-3:天使のような悪魔の笑顔

「と、言うわけなのよ」

自分が人間界にやってきた経緯を、レビアは史貴に説明した。

レビアの話を聞き終えた史貴は、「なるほどな」と頷いた。


「でも、それでどうして俺の所に来たんだ? 恋人のいない奴なんて他にもいるだろ」

「あんた、恋がしたいって強く願ってたでしょ。だからよ」

「あー……」

史貴は、先程までの自分を思い返し、納得した。


「そう言えば、君の名前だけど、レビアだっけ?」

「ええ。親しみを込めてレビアたんって呼んでもいいわよ」

「悪魔じゃねーか」

「そう言うあんたの名前は?」

「俺は天野史貴(あまのふみたか)

天野史貴ね、とレビアは確認するように繰り返す。


「天野史貴。あんたに彼女を作ってあげる」

「俺に彼女ねぇ」

「彼女が嫌なら彼氏でも良いけど」

「それは要らん」

「で、どうよ? 悪くない話でしょ。彼女ができるんだもの」

「ふむ……」

史貴は腕を組み、しばらくの間考えるような素振りを見せた。

そして、


「だが断る」

キッパリと、これを拒否した。

「なんでよ!? 彼女よ!?」

「彼女って言っても、どーせ3次元の女だろ。こっちは純正の2次元愛者(ニュータイプ)だぞ」

そう言うと、史貴は部屋の押し入れを開けた。

そして中から大きな布の塊を取り出した。

扇情的な美少女のイラストがプリントされたカバーの付いた、抱き枕である。

「俺にとっての彼女は、布とインク、時々電子データでできてんだよ」

「このキモオタめ!」

「キモオタで結構。というわけだから、他を当たってくれ」

しっしっ、と手を振ってレビアを追い出そうとする史貴。


しかし、レビアはその場を動こうとしない。

「いやよ! いきなり契約失敗だなんて、私の経歴に傷が付くじゃない!」

「それは可哀想に。キャラメルでも食べて元気出せば?」

史貴は、ポケットからキャラメルの箱を取り出すと、その中の1個をレビアに手渡した。


そんな史貴の手を、レビアは払い除けた。

「なっ!?」

「……もういいわ。あんたがそう来るなら、私も実力行使に出るわ」

「実力行使?」

レビアは人差し指を立てると、史貴の胸に向けた。

「今からあんたの秘孔を突く。恋がしたくて堪らなくなる秘孔よ」

「お前は世紀末救世主か!」

「これを突けば、あんたは嫌でも私に協力したくなるわ」

「えっ、ちょ、待っ……!」

史貴が拒絶するよりも早く、レビアの身体が動いた。

一瞬で史貴との距離を詰め、その指が史貴の胸部を真っ直ぐに突く。

「がはッ……!」

「お前はもう、死んでいる」

「そういう秘孔じゃ……ねぇ、だろ……」

「さてと……どう? 恋したくなってきたでしょう?」

床に崩れ落ちた史貴を満足そうに見つめるレビア。


しかし、対する史貴は苦しそうにうずくまったまま、立ち上がらない。

「ん!? 間違えたかな……」

「な、何を……」

「おかしいわねぇ。ちゃんと恋したくなる秘孔を突いたはずなのに……」

そう言いながら、レビアはどこからか本を取り出し、ペラペラとめくりはじめた。

本の表紙には『馬鹿でも突ける完全秘孔マニュアル』と書かれている。


そして、

「あっ……やばー。間違えたわ」

「間違えた?」

「うん。恋したくなる秘孔じゃなくて、3年以内に恋人を作らないと死ぬ秘孔だわ」

「……は? 3年? 死ぬ?」

史貴は、レビアの言葉を反芻した。

衝撃の事実に、頭が混乱する。

諸悪な根源であるレビアは気不味そうな表情を浮かべていたが、しばらくして、にこりと笑う。


「ま、これで恋したくなるだろうし、結果オーライね!」

「ふっざけんなぁーーー!!」


絶叫しながら、史貴は目の前の天使を見て思った。

やっぱり悪魔じゃねーか、と。


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