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初めまして

どうも、ラウです。

【https://www.pixiv.net/users/32177819】こちらのpixivアカウントの方で出している一次創作です。

「面白いんだし、せっかくなら一次創作の宝庫のなろうにも出してみたら?1話だけでも」と言われ、出してみようと思った次第です。コピペボーンしたのに修正・追加しました。魔王×聖女、7組を中心に描くヒューマンドラマです。


なろうの仕様がまだ把握しきれていないので、何か不備や設定に問題などあればそっと教えてください。


もしかしたらこのシリーズはこっちで続けるかもしれないです。今pixivの方では5話までとメイン14人のプロフィール出してます。拙い文章力ですが、どちらかでは頑張って続けていきます。


ちなみに、すんげーーーーーーー長いシリーズです。


なお、この作品に登場する国名、地名、宗教、団体名などは、実在するものと一切関係ありません。

 かつて神は、その力の器ともいえる海の宝石「コストス」を破壊されお怒りになった。溢れたお力はこの国を滅ぼさんと暴れ、シーフレイトは壊滅の危機となった。怒りの日と呼ばれる。

 我らがシーフレイトに溢れたいかれる神の力を、一部の人間たちがその身に無理やり吸収し、地割れや暴風は収まった。しかし神の力を人間が持つなど無理な話。その人間たちは力をコントロールできず、後に「魔法」と呼ばれる力で自他全てを傷つけた。

 その力を再び器に収めるため、とある聖女たちが祈りをささげた。その祈りと彼らが持った魔法が反応して生まれたのが、月の裏の異界である。神の力をその身に宿した者たちは、その異界で穏やかに暮らすこととなった。





 惑星スぺ。5つの大陸からなる小さな惑星である。

 スぺには、9つの王国がある。そのうちの1つ、シーフレイトという島国は海の神を信仰する宗教国家である。7つの湖の傍に教会があり、人々は少しでも空き時間があれば聖堂で祈りをささげる。魚を食べることは宗教上の理由で禁じられている。永久に中立・平等を掲げる、いたって平和な美しい国だ。…ある一点を除けば。


 「海の神、ネプチューン。恵みの源、母なる海を司りし主よ。今日この日も絶えぬ大地の潤い、心から感謝いたします」


 7つある教会のトップ、国のほぼド真ん中に位置するオールレイク教会。唯一、大聖堂のある教会。その大聖堂で膝をつき、祈りをささげる少女が一人。ナターシャはこの教会に所属する聖女である。まだ19歳という若さだが、その深い慈愛の心と純粋な信仰心を高く評価され、見習いという階級ではあるが誉あるオールレイク教会所属を認められたのである。しかも、ほんの一握りの者にしか認められない付属寮への住み込みだ。

 教会に名前を登録して神父や聖女を目指すことはシーフレイト国民全員に与えられた権利だが、厳しい審査はある。他6つの教会でも同じことだが、寮への住み込みの許可は国王も関わってくる。教会の管理機関で何百とある項目を1つでも落とすと名前の登録は許されない。そのため、この国で神父や聖女は時に国王よりも力を持つことがある。それだけ重要なポストなのだ。

 ノース、イースト、ウェスト、サウス、スカイ、アース、そしてオール。ナターシャの所属するオールレイク教会は、正真正銘最高位の聖職者と認められた神父や聖女のみ、要はトップオブエリートしか所属できない。現在オールレイク教会に所属するのは、ナターシャ含めて30人。シーフレイトの人口は現在約50万数千。オールレイク教会所属になるのはとんでもない確率ということだ。

 ナターシャが祈りを捧げていると、不意に後ろから声をかけられる。先輩の聖女だ。


 「あら、ナターシャ。こんな時間にお祈り?」

 「なんだか寝付けなくて。気分転換になるかと思いましてお祈りを」

 「私もあるわ、そういうこと。ですが、寝坊などしないように気をつけるのですよ」

 「はい」


 美しい金髪碧眼。腰まである長髪は少しフワッと膨らんでいる。おっとりとした笑顔は、誰にも安心感と癒しを与える。たまに「天然」と言われるが、天然ゆえによくわかっていない。誰が見ても清廉で、まさに神に仕える者である。いつ見ても浄化されるようなそのオーラに、先輩の聖女も思わず感嘆の声を出す。


 「そういえば明日でしたね。定期帰省」


 ふと思い出したように初老の聖女の口から出た言葉に、ナターシャは少し眉を下げた。定期帰省とは、住み込みの神父や聖女が数カ月に1度、一泊二日実家に帰ることである。聖職者とはいえ人間なのだ。たまには息抜きも必要だし、家族に顔を見せられる機会はあった方がいいと設けられているのだ。しかし、ナターシャはどこか不安そうな顔をする。


 「…えぇ、明日です」

 「そんなに暗い顔をしては、幸せが逃げて行ってしまいますよ」


 ナターシャが帰省をあまり喜んでいない理由をハッキリ言うと、父である。ナターシャには6歳上の兄がおり、その兄もこのオールレイク教会住み込みの神父だ。「我が子たちはエリートだ!」と周囲に高圧的に威張り散らし、反感を買い友人にも仕事仲間にも見捨てられて半分精神崩壊しているのだ。ついでに、教会管理機関の審査に落ち名前を登録できなかったナターシャの姉のことを責めるような言動も見受けられるようになってしまった。誰がなんと慰めても、諭しても、叱っても、全く効果がないのだ。その事情を、オールレイク教会住み込みの仲間たちはみんな知っている。


 「さあ、早くおやすみなさい」

 「はい。おやすみなさい」


 こういう時はそっとしておいてほしいと、兄妹に揃って頼まれている。その聖女も深堀せず、大聖堂を後にした。電気がついていたので様子を見に来ただけだったのだろう。彼女は今日、消灯の確認当番だったはずだ。ナターシャは心の中で、手間をとらせたことを謝った。


 (…どうして、お姉ちゃんのこと悪く言ったりするのかしら。私やお兄ちゃんが、帰省が終って寮に戻ろうと家を出ると喚いて止めようとするし…お父さん、どうしてあんなに性格が変わってしまったの?)


 もともと、少し気弱なくらいの優しい父だったのにな。そう思いながらナターシャは立ち上がり、眼前のステンドグラスを見上げた。海を彷彿とさせる、青を基調とした厳かなオーラ。これといった絵はなく、ただ深い深い海の底にいるかのような気分になる。出向いたことはないが、他の教会にも同じステンドグラスがあると聞いたことがある。中には「静かすぎて不気味だ」と感じる人もいるらしいが、ナターシャはネプチューンが見ている景色の一部を見ている気がして好きだった。


 「…明日もどうか、シーフレイトを見守っていてください。おやすみなさいませ、主よ」


 しん、と静まり返った大聖堂に、ナターシャの声が少しだけ響いた。就寝用のワンピースの寝間着の裾をひらりと翻す。出入り口では、先ほどの聖女が電気のスイッチの横で待っていてくれていた。それを見て小走りで進む。


 「ありがとうございます」

 「いいのよ。さ、消すわよ」


 パチン、と大聖堂は一瞬で暗闇に包まれた。ステンドグラスの輝きも眠った。扉を閉めて、連れだって聖女の寝室がある棟へ向かう。大聖堂からは少し離れている。あまり眠るのが遅くなってはいけないと、二人とも無意識に小走りだ。

 ふと、ナターシャは窓の向こうを見た。真っ暗な夜空に、今日は黄色い月は見えない。新月だ。


 「…今日は、新月ね」


 同じことを思ったのか、隣からポツリと言われた。


 「ナターシャ、知っているわね。魔界や魔族の話は」

 「はい、もちろんです」


 それは、寝付けぬ子供に、有名な御伽噺より多く語られる話である。

 あの月の、光が当たっていない面は、陽炎のように揺れて見える。そこにあるのだ。「魔界」とよばれる異界が。50年に1度、新月の日のタイミングで、シーフレイトの7つの教会から聖女が1人ずつ消える。呼ばれるのだ、魔界を統治する王、魔王に。呼ばれてしまえば帰る術はない。一生魔界で暮らすことになる。いや、「暮らし」と呼べるような日々かなんて保証もない。


 「これは御伽噺などではないわ。実際に魔族はいる。魔族を受け入れている国だってある。けれど私たちは、誰よりも何よりも恐れなければならない」

 「はい」


 かつて神は、その力の器ともいえる海の宝石「コストス」を破壊されお怒りになった。溢れたお力はこの国を滅ぼさんと暴れ、シーフレイトは壊滅の危機となった。怒りの日と呼ばれる。

 我らがシーフレイトに溢れたいかれる神の力を、一部の人間たちがその身に無理やり吸収し、地割れや暴風は収まった。しかし神の力を人間が持つなど無理な話。その人間たちは力をコントロールできず、後に「魔法」と呼ばれる力で自他全てを傷つけた。

 その力を再び器に収めるため、とある聖女たちが祈りをささげた。その祈りと彼らが持った魔法が反応して生まれたのが、月の裏の異界である。神の力をその身に宿した者たちは、その異界で穏やかに暮らすこととなった。


 これは教典の一文。子どもでも言える、この国の歴史である。つまり魔界は、神の力を収め、災害などを防ぐための「入れ物」なのだ。そしてその「入れ物」は、聖女の祈りで作られ、維持されている。50年は、魔王の世代交代の年数らしい。魔王も、シーフレイトの教会と同じく7人。噂では東西南北天地、そしてその総統の7人で構成されているらしい魔王は、聖女の祈りによって魔界を保つために生涯に1人、聖女を呼ぶらしい。その聖女はいつからか「生贄」とすら呼ばれていた。

 「らしい」が続いているのは、魔族が揃って秘密主義だからだ。どういう方法かは不明だが、魔族はこちら側を「表世界」と呼び、魔界と行き来できる。魔族と普通に、友好的に接する国もあるが、魔族にはそういうしきたりでもあるのか、どんなに仲良くなっても詳しい魔界の情報は教えてくれない。怒りの日はかれこれ10万年以上前のことで、魔界及び魔族の歴史が始まったのもその時だが、こんなに長い年月の中で普遍的に秘密主義なのだ。


 「…こればっかりは、気をつけろなんて言えることではありませんが…ナターシャ。恐らく今日か、次の新月が50年の節目です。我が身のこととして、十分覚悟しておきなさい」

 「はい。重々、承知していますわ」


 そんな話をしているうちに、気が付けば寮の分かれ道の廊下まできていた。ナターシャはもう一度挨拶をして、自分の部屋がある廊下を進む。ようやく睡魔がやってきた。403と札のかかった自室のドアを開け、薄暗い部屋で時計を確認したらもう23時を過ぎていた。


 (…生贄…か)


 もしかしたら明日、共に祈りをささげてきた仲間が誰かいなくなって、29人になっているかもしれない。そう思うと、無性にみんなの顔が見たくなってきた。すでに閉まっているカーテンの向こうの新月に目を細め、ナターシャは靴を脱ぎベッドに横になった。どうか誰も、生贄になんてなりませんように。少し切ない気持ちで、目を閉じた。



◆◇◆



 「―――!?」


 知らない空気感に、ナターシャは一気に覚醒した。視界に広がるのは、案の定というべきか、全く知らない薄暗い場所。頭上で輝くシャンデリアが飾りかのように思えてしまう。たしかにベッドで眠ったはずなのに、やたら座り心地のいい高級そうなワインレッドの椅子に座っている。服装も、オールレイク教会の僧服になっている。いつもの胸までのケープ、金のベルト、白いスカート、黒のブーツ。ベレー帽の形の帽子も花のチャームも、髪だってきれいにセットされているようだった。服装は何もかもいつも通りだ。


 「…ん、」


 自分のものではない声に、バッと左を見る。


 (…彼女たちは――)


 名前は知らないが、皆僧服なので身分は分かる。彼女たちもまた、教会の聖女だ。左には3人。反対側を見てみると、こちら側にも3人。ナターシャが座っているのと同じ椅子で眠っている。全員、違うデザインの僧服。彼女たちも恐らく自分と同じ状況だとナターシャは判断し、フカフカの椅子を立ち上がる。


 「…あら、起きたのね」


 突如右の方から飛んできた声に、ナターシャは勢いよく振り返った。


 「落ち着こうと思って瞑想していたの。初めまして。多分、私たち生贄に選ばれたのね」


 ナターシャの右隣り真ん中。淡々と語るその聖女は、僧服から察するにイーストレイクの聖女だ。薄い桃色の髪を耳の下で小さなお団子にしている。茶色いカチューシャがよく似合う。ハチミツ色の目が諦めのような色を帯びていた。


 「はじめ、まして…」

 「ふふ、そんなに緊張しないで?同じ立場なんだもの。ねぇ、ウェストとスカイの聖女さん。あなたたちも起きているんでしょう?他の3人が起きるまでお話ししましょう?」


 え?と、イーストの聖女が声をかけた方を振り返る。ナターシャの左隣の手前と真ん中。さっき見たときはまだ眠っているように見えたが、声をかけられ両者寝ぼけていない目でナターシャを見上げていた。


 「迂闊に動くのも危ないわ。座りなさい」


 シーフレイトの1番空に近いといわれる高所、灯台の丘のスカイレイク教会。その僧服を着た少女が腕を組みながらそう言った。美人の真顔という謎の迫力に素直に従い、ナターシャは再びフカフカのその椅子に座った。何度触っても手触りがいい。


 と、次の瞬間。


 「あぁ、起きたか」


 (…っ)


 よくわからないが、跪かなければ。そう思ってしまう迫力がある声と容姿。全体的に、黒い。髪も服も黒い。その中で、まるで満月のように光る金色の目が、恐ろしいほど美しく光っていた。


 「まだ全員ではないか。まあ良い。我はクラウン・オール。初めまして、表世界の聖女たち」



さよなら、海のある日常


閲覧、どうもありがとうございました!

少しでも暇つぶしになったなら幸いです!


ちなみに作者の最推しはまだしばらく出ません。

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