孤独な君と無関心な僕 〜魔女と始める新婚生活〜
美しい…… それが、僕が最初に彼女に抱いた感情だった。
現在、僕は化け物と対峙している。ただの化け物ではなく、魔女だ。
白磁のような白い肌に、紫色の目、そして、風になびく銀髪の髪。
「ねぇ あなた。 何で逃げないの?」
「ーー!?」
見惚れていて気づかなかったが、彼女は魔女だ。いくら僕が強いとはいえ、逃げる事は無理だろう。
だが、そんな事は今の僕には関係なかった。
僕は彼女に、歩み寄る
「ーー!? 来ないでッ! 殺すわよ!」
彼女は警戒した様子で、そう告げる
だが、僕は気にする様子もなく、彼女に近づいた。
「ーーッ」
そして僕は彼女の手を取り、こう告げた。
「僕と結婚してください」
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無気力 僕はまさにその状態だった。僕は貴族、それも王族なので、望んだものは全て手に入る
ーー 女、お金、名声、希少な金銀宝石に食べ物
僕は昔から、とても優秀だった。勉学に関しては学者と比べても、劣らないほどの知識がある。
武術に関しては、騎士団でも僕の相手が務まる人がいないほどに、僕は強かった。
魔法だって、天性の才能で難なく使える。
いつからか、僕は他人に無関心になった。
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王族では、自分の探しているものが見つからないと思った僕は、冒険者になる事に決めた。
最初は家族に反対されたが、僕の粘り強い説得でようやく許可が出た。
ちょうど今日、冒険者ギルドのギルドカードが出来上がったので、試しに依頼を受けてみる事にした。
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【クエスト】 災厄の森の調査
内容 災厄の森の調査。かなり高レベルの魔物が出るため、注意を怠らないように。
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手続きを済ませた僕は、旅の準備をするべく王城に戻った。
〜翌日〜
準備を済ませた僕は、災厄の森へと向かう。
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災厄の森には、すぐに着いた。木々が生い茂り、地獄絵の入り口を彷彿させる。
僕は道中に遭遇した魔物を倒しつつ、奥へと進む
ーーしばらく、進んだところで僕は足を止めた。
そこには朽ち果てた神殿があった。朽ち果ててはいるが、厳かな雰囲気が漂っている。
何故だかは分からないが、僕はその神殿に目を引かれた。
「あなた、誰?」
「ーーッ」
僕は咄嗟に剣を構える
が、目の前にいたのは150㎝ぐらいの、紫目、銀髪の美少女だった。
美しい…… それが彼女への第一印象だった。
「繰り返す。あなた 誰?」
僕は彼女に見てれてしまい、上手く声が出せない
その様子に彼女は苛立ち、手に巨大な槍を出現させ、僕に向けて投擲してきた。
僕は間一髪で、攻撃を避け、改めて彼女の顔を直視する
「ぼ、僕はエルフィードです」
そして、僕は彼女に向けてこう告げた。
「僕も結婚してくれませんか?」 と
「ふぇ!?」 僕の予想外の言葉に赤面する。
「貴方に一目惚れしました。どうか、僕と結婚してください」
「え…… だって私、魔女だよ。人もたくさん殺したよ…… 」
「そんなの関係ありません」
「でも、やっぱり無理だよ……」
ならば、お試し期間として、一週間ほど僕と付き合ってください。その後に決めてください。
「わ、分かったわ」
「ところで、お名前を聞いていませんでしたね」
「そ、ソフィアよ。私の名前はソフィア」
「これから一週間よろしく。ソフィア」
「よ……よろしく」
こうして、僕達はお試しで付き合う事になった。
ソフィアの家は、質素だがお洒落な家だった。
家が巨大な木と融合していて、ツリーハウスのような作りになっている。
その後、僕達は雑談しながら、夕食を済ませ、その日は眠りについた。
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翌日、僕はギルドへ報告を済ませた。
その後、ソフィアへのお土産として、店でお菓子や食べ物を買い漁った。
ソフィアの家に着くと、家の中からいい匂いがしてきた。
「おかえり。ずいぶんと遅かったのね」
「ごめん。お土産買ってたら遅くなった」
「お土産!?」
ソフィアは僕が買ってきた、お土産をものすごい勢いで食べながら幸せそうな顔をしている。
「美味しいわ! ありがとう “エル”」
その瞬間、僕は心臓が高鳴るのを感じた。
初めて名前で呼んでくれた。その事実が僕にとって嬉しかった。
「な、何泣いてんのよ……」
「いや…… 初めて呼んでくれたから」
「ば、馬鹿じゃないの!? べ、別にそういうわけじゃないもん!」
照れ隠しのためか、ソフィアは家の奥へとそそくさと逃げていった。
その後、落ち着いたソフィアと昼飯を食べ、その後軽く模擬戦をしたが、全く歯が立たなかった。
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あっという間に一週間は過ぎた。
「ソフィア……今日で一週間だね」
「そうね。エル」
「僕はもっとソフィアと一緒に居たい!ソフィアとともに生きていきたい!だから、僕と結婚してくれッ!」
「うん。私自身、まだわからない事がたくさんあるけど、エルとならわかる気がするの……」
「だから、私を1人にしないでね……」
「あぁ、必ず俺がソフィアを幸せにする。絶対に1人になんてしない」
「うん」
そうして、ソフィアは軽く目を閉じた。
僕は彼女の顎に手を添え、キスをした。
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僕達の初夜は凄かった。何せお互い初めてにも関わらず、相性が良かったのかすぐにコツを掴んでしまった。
結局、そのまま僕達は朝までずっとしていた。
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数年後
僕達にも子供ができ、以前にも増してソフィアも甘えてくるようになった。
子供の名前はアテナ。最近では言葉が話せるようになり、隙を見ては文字や言葉を教えている。
最近では家族でピクニックにいったりしている。
僕は今幸せだ。この幸せがいつまでも続きますように。心からそう思う。