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風来坊  作者: 法蓮


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お告げ

 「風が強いね、風神かなぁ」

 「そうだろうね」

 「どうしたんだろう?」

 

 太陽に対して威嚇するような風なのに、私に対しては包み込んでくるような優しさだった。空気の流れをここまで変える事が出来るなんてさすが風神、きちんと仕事をしているんだな、と思えた。太陽が悪い事をした訳じゃない、だけど、きっと私に伝えようとしていた事は、風神にとってマイナスな事柄なのだろう。


 「風神のお出ましかな」


 ぽつりと太陽は呟いた。風の裂け目が作られて、ぐるぐると風が舞いだした。化学反応をしているかのように、少しずつ形を生成していく。ぼんやりとした影が風神を作り出し、私達の目の前に現れた。


 「風……神?」

 

 瞼を閉じていた風神は、ゆっくりと目を開いていく。いつもの風神とは違うような気がする。見た目は同じなんだけど、雰囲気が違う。初めて会った感覚に陥ってしまう自分がいた。


 この人は誰? 私の知っている風神なの? 


 私は緊張しながらも、彼の元へと近づいていく、ゆっくりと。すると、足音に反応するように、ピクリと体を震わせ、真っすぐな瞳でこちらを見つめてきた。その視線は少し冷たくも感じる。私の知っている優しい風神じゃなかった。


 「あかり様、初めまして、風神様の使い魔です、様子を拝見させていただきました。この場所はあかり様に相応しくない」

 「使い魔? どういう事?」


 陰陽師じゃないんだから使い魔を使うとかありえないと思った。でも私はこの世界の事を何も知らない。知らないだけで沢山の事が隠されているのかもしれないとも感じる出来事なのは事実だ。


 「これは私の独断です。風神様は関与していません」

 

 関与していないという使い魔。矛盾だらけの中で、私が言える事は一つ。


 「関与していない訳ないでしょう? 風神の使い魔だったら」

 「そう思うのが普通ですよね、しかし私は風神様の使い魔でもあり、監視役でもあるのです」

 「監視役?」

 「詳しい事は言いません、今はまだ。あかり様の月見の能力が覚醒する時に私とも、あの方とも出会えるでしょう」

 

 月見の能力……言われてみれば不思議な夢ばかりみている気がする。はっきり見える事もあれば、思い出せない事もある。だけどそれはただの夢であって、月見の能力なんかじゃないと思う。そう伝えようとすると、いつの間にか使い魔が私の耳元まで近づいてきて、そっと囁いた。


 「この事は二人の秘密です」


 にっこりと放たれる笑みからは悪意しか感じられない。これは私に対する警告、誰にも言うなと忠告をしているのと同じだ。すると、私の意識はそこで途絶え、遠くから太陽の声が聞こえた。


 

 夢の世界は不安定さと真実さで構築されている。まるで海に飲まれこんでしまいそうな感覚の中で目が覚めると、沢山の映像が流れている。海自身は記憶のスクリーンと未来を映すスクリーンが広がっている。その中の映像を見つめながら、漂い続ける私は、一体何者なのだろうか。ただの人間だったはずなのに、交通事故に巻き込まれたかと思えば、いつの間にか風来坊と共にいた。ただそれだけなのに、月見の力があるなんて、理解が出来ない。


 以前、風神に月見の事を聞いた事がある。話を聞くと人間界で言えば「夢見」の力らしい。選ばれた者だけに与えられる力であり、この世界では名前を与えられた瞬間に審判が下されるらしい。私はその難問の月見に選ばれた、と告げられた時は驚いた。ごくまれに、迷い込んでくる人間はいたが、何も出来ずに消滅していくだけだったようだ。しかし私の場合は違った。風神は様子を見ていたらしいが、その兆候が何も現れなかったと言った。


 「君は選ばれた者なんだ、あかり」


 そう言われても実感なんて何も沸いてこない。ただ風来坊と共にこの世界で魂の存在として生きていただけ。


 「君に名を授けた存在からお告げがあったんだ、昔」


 迷い込んでくる人間の魂の中に光り輝く魂が現れる。消滅する訳でもなく、どちらかと言えば、生きていた時の記憶を失っていくだろう。そしてこの世界に馴染んでいく。月も太陽も夕日も雲も、その者に懐くだろう。そして月見の名前を持つ者として選ばれる時に、月が動き出す。月は太陽と夕日とも違い、月見を欲しがる傾向を持っている。いつしかその者がこの世界に迷い込み、月に選ばれる。その者こそが月見の名前を持つ「あかり」だろう。そうなった時は風神、君がその者を導く為に二階へと誘導しなさい、との事だった。



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