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風来坊  作者: 法蓮


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変な感じね

 私と風神との会話なのに、まるで風来坊に言っているように見える。風神の言う通りかもしれない。嫉妬や不安などはあるけれど、笑顔でいたい、きっと風来坊もそれを望んでいると思うから。本人の口から聞いた訳じゃないけれど、納得するしかなかった。この場には私と風神しかいないのだから。


 「まぁ、私は君が、あかりが好きだけれどね」

 「えっ」

 「やあやあ」


 気にしないでと言っているように、風来坊の真似をする風神。唐突な告白に顔を真っ赤にしながら硬直してしまう。ここに来てから、色々な事がありすぎて、頭がついていかない。ムッとした表情で風神を見つめる。


 「もうっ、からかわないで」

 「やあやあ」

 「風神、風来坊に言いつけてやるっ」

 「どうぞ」


 口で風神には勝てない、そもそも勝てる種目があるのだろうか、何もないような気がする。自分が負けているような気がして、溜息を吐く。風来坊も癖が強いが、風神も強者だ。


 風来坊を優先する事で負い目を感じていたのは事実。私が自分の感情に直になる事によって、今の関係性を壊してしまうんじゃないかと恐れたからだ。杞憂までとは言えないが、考えすぎていたのかもしれない。変に意識してしまう方が、風神を傷つける結果になる事に気づき、反省した。「ごめん」と言うと、風神は風来坊のように「やあやあ」とだけ言った。少し寂しそうに見えたのは、自分の中でフィルターがかかっているのだろうか。


 「あかりはあかりのままでいいんだよ、私も風来坊もそれを望んでいる」

 「……ありがとう」


 私は私のままでいい、なんて言われたのは初めてだと思う。人間として生きている時の記憶は殆ど消滅しているけど、心の中で嬉しい気持ちが踊っている。こんな感情を持つ事に新鮮に思えたから、きっとなかったんだろうと思った。


 これ以上、この話を続けるのはいけない。きっとこの心地よさが堕ちてしまいそうで、それはそれで怖かった。だから、私は風神を見つめながら、微笑んだ。


 「いい風が吹いているね、優しい風神みたい」


 そう言うと、さっきと打って変わった風神がいる。愛しい者を見つめるような甘い表情で、私を見つめながら、困ったように微笑む。


 「君は、本当に……」


 続きの言葉は風にかき消され、二人の間を切り裂く。まるで言葉を聞き取れないようにしているみたい。


 「え、何か言った?」

 「いいや、何も」

 「ん」


 最後の言葉が聞こえなかったけど、途中までは聞こえた。きっと風神も触れられたくない部分があるのだろうと、話を合わす。それ以上、聞くのは何だか違う気がしたから。風神には風神の考えがある。風来坊と交互に私と話していたとしても、私は風来坊として接してた。だから、風神の性格や考え方は分からない。風来坊の事なら、分かるようになってきたけどね。


 「私、太陽の所に行ってくるね」

 「私もついていこうか?」

 「もう大丈夫だよ、自分一人で行ける」

 「……何かあれば、風神とお呼び」

 「うん」

 「いい子だ」


 私は風神との会話を終えると、ピョンピョン飛びながら、雲の上を進んでいく。以前までは歩いていたのだけれど、足元が救われる事が多かった。しかし、この移動の仕方なら、雲の弾力を上手く利用し、簡単に前に進んでいける事に気づいたの。最初風神も、風来坊も、驚いたようだったけれど、ケラケラ笑いだし、君らしい、と言ってた。少し恥ずかしい気持ちもあったけれど、こっちの方が楽なんだもの、仕方ないじゃない。


 二人のようにこの場所に慣れている訳じゃないから、少しでも足手まといになりたくなくて、考えた歩き方、ううん、飛び方なのかもしれない。実際跳ねてるし。まるでトランポリンの上で遊んでいるような感覚が、また楽しい。楽しみながら、移動出来るって素敵じゃないかな。二人には勿論、秘密にしているけど、私の様子を見て気づかれている可能性大ね。


 「太陽、元気かなぁ? 雲、起きてるかなぁ?」

 

 

 一人で遊びに行く事が増えた。以前のような不安はないけど、風来坊達は、まだ警戒しているようだ。得に月に対しては異常な位に。月と会う事は殆どないと言っていい、夜になると、この空間で風来坊達が傍にいるから、会いに行く事が出来ないから。無理してまで、会おうとは思えないし、二人に心配かけたくないからだ。


 雲はこちらの味方。太陽は私を連れ去るような事はしない、ただ二人曰く、安心は出来ないみたい。いつ何があるのか分からないし、状況が変化する可能性も大。だから彼らの元へ行く時は風来坊がついてくるか、風になって風神が見守ってくれている。風神はあえて私の傍から離れているのは、私への配慮だろうと思う。それ以上に、何かがあっても、風に変化する事が出来るから、すぐ対応が出来るのもある。


 私はエレベーターを使い、太陽達の元へと降りていく。なんとなくだけど、このエレベーターは人間のものと言うよりも、雲の糸のような感覚が否めない。どうしてだか分からないけれど、そう感じる事が多かった。


 「変な感じね」


 雲に包まれているような感覚の中でも、心臓の音はドクドクと加速していく。いくら不安がないとは言っても、あんな事があったのだ。月だけが私を自分のものにしようとした、太陽達はそういうのじゃないとは思っているけど、信用を見せた瞬間に変わるのかもしれないと思うと、少し怖く感じる……ほんの少しだけど。


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