彼女は僕が連れていく
私は風来坊の帰りを待つ事にした。すると、明日は嵐だと、月が言った。嵐が来るのは久しぶりで、一人で過ごせるのか心配したが、自分の力であの部屋に行く事を決意していた。その時だった、月は私を見つめながら「君も来るかい?」と言った。どこに、と聞くと嵐が過ぎるまで月と過ごすのが一番いいと言われ、妙に納得してしまう。
「でも、でもね。風来坊を待っているの」
「今は彼は帰ってこないよ、明日でも分からない」
「でも……」
月が話すのはこうだ。今までの私は触る事が出来なかったが、ここに馴染んだ今の私なら月に乗る事が出来ると。そこなら何があろうと安全で、風来坊も安心をすると。その言葉を聞けば聞く程、その通りなのかなと思ってしまう。そういう所が弱い部分でもあるかもしれない。月はそう私を説得すると、光るロープを下ろし、誘ってくる。月の事を全て知っている訳じゃないけど、何故だかその言葉に惹かれる自分がいる。意を決して、ロープを掴もうとすると、ビューンと風が吹き荒れ、邪魔をする。まるで風来坊が行くな、と言っているみたいに。
「月、ごめんなさい。私行けない」
「そのようだね、風神がお怒りのようだ、私は寝るよ、明日は会えないが明後日、また会おう」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
どっと疲れた私は倒れるように眠りに落ちる。その時だった、雲の上で見守っていた風来坊、いや風神が私の所まで来たのだ。眠っている私は彼の気配に気づけない、だが月は気づいた。
「姿を隠さずに、出てきなさい風神」
「やあやあ、僕の大切な人を連れていこうとしていた不届き者は君だね、月」
「気づかれていたか。私にとっても、この子は大切だ」
「だから連れていこうとしたと?」
「君の風神、雷神としての仕事が多いからだろう? 何が悪い」
「一度君に乗ると、もう降りる事が出来ない、それは僕が困る」
「だったら大切にしなさい、もう隠れるのはやめにしなさい」
「やあやあ、君に言われなくても分かっている。彼女は僕が連れていく」
「そうか……ならもう言う必要もない」
怒っている風神は風来坊の姿をしている、雷神も同じ姿だ。二人で一つ。だから私の前に出れなかったのだろう。その事を知らずに、私は夢の中へと落ちていた。




