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レオンティーヌ様のアフタヌーンドレス

わたくしは、ようやく普通に歩けて、外に出かけてドレスの仕事が出来るようになった。

次の日、早速叔母様と一緒に、レオンティーヌ様にお作りしたアフタヌーンドレスの納品に行く。


怪我をして出かけられなかったわたくしは、しばらくレオンティーヌ様の仮縫いや手直しに行けなかった。

レオンティーヌ様がそれに気付いて、叔母様にわたくしの怪我を聞き、リュシアン様に教えてくれたのだ。


「候爵様にお知らせ頂き、ありがとうございました」


叔母様とわたくしは、レオンティーヌ様にお礼を言う。


「こちらは、今回出来上がったドレスでございますが、お礼として同じ生地でスカーフをお作りして、公爵令嬢のお名前を刺繍して持って参りました」


今回のドレスは、若草色のシルクに、白や黄色などで小花が刺繍されている、珍しい生地を使ったものだ。

アフタヌーンドレスなので、胸元は大きく開いていないが、首周りに同じ柄のスカーフを巻くと、また違った雰囲気になる。


「まあ、素敵なスカーフですこと!

わたくしの名前も刺繍されているのですね」


「お名前の刺繍には、ドレスと同じ賦与を掛けております」


わたくしは、賦与を掛ける時間はたっぷりとあったのだ。


そして、レオンティーヌ様に、仕上がったドレスを試着して頂く。

レオンティーヌ様は天使のように美しい方なので、賦与を掛けた新しいドレスもとても似合って、いっそう輝いて見える。


「このドレスは今の季節にぴったりね。

早速、次のお茶会に着ることにしますわ」


スカーフも気に入って頂いて、今日もお茶のお誘いを受ける。


「兄は男爵令嬢に、名前の刺繍入りのスカーフをお願いしていたのですってね。

髪のリボンが流行ったと思ったら、今度はスカーフに刺繍をするのが流行って来ているのよ」


リュシアン様は賦与を掛けたスカーフを、結局どなたに渡されたのだろうか。


「兄は、男爵令嬢をとても気にかけているのです」


わたくしにお茶を勧めてくれながら、レオンティーヌ様は言う。


「はい、わたくしが候爵様にスカーフをお渡しした後で、転んで怪我をしてしまったものですから、候爵様は過分にお気遣い下さったのです」


「兄は、お嬢様の賦与の力も、とても評価しているようですわ」


「はい、とてもありがたく思っております。

けれども、以前も申し上げたように、元々その方が持っている特色を強めるだけの、ささやかな力なのでございます」


「兄は、どんな賦与を掛けてもらったのかしら?」


「申し訳ございません。

それは、どなたにも内容を明かせない決まりになっているのです」


「兄は、意中の方がいらっしゃるようなのですが、それはご存知?」


多分、リュシアン様は高位の貴族の奥方様に恋していると思うけれど、それは絶対に言えない。


「......いいえ、何も存じません」


「兄はいずれ公爵家の当主になりますし、その地位に相応しい方と結婚してもらいたいと、わたくしは思っているのです」


「本当にそうでございましょうね」


「公爵家の当主としては、いくら好きでも、それだけで結婚はできませんもの」


レオンティーヌ様は、奥歯に物が挟まったような言い方をする。

リュシアン様の恋する方が、結婚相手として相応しくないと、何となく察して歎いているのかもしれない。


「例えば、ブレヴィル公爵家のマルグリット様のようなお嬢様でしたら、結婚には相応しいのでしょうね」


「そうね。以前マルグリット様は、少し陰気なお嬢様と思っていたのですが、今はすっかり変わって、美しく、快活になられましたからね」


レオンティーヌ様は、ドレスの賦与に『真実の愛』を望まれた。


でも、レオンティーヌ様の思う『真実の愛』というのは、ただ心から愛されるだけではなく、美貌や家の格式や性格など、総てが完璧な人から熱愛される、ということなのだろう。


レオンティーヌ様のような完璧な美女ならば、そう望んでもおかしくはない。

だからきっと、兄のリュシアン様にも、総て完璧な結婚相手を望んでしまうのだろう。


しかし、皮肉な事に、総てを備えた完璧な人は、容易く手に入るものには魅力を感じず、どうしても手の届かない人を恋してしまうのかもしれない。


王弟殿下と妃殿下も臨席されるという、ローシュ公爵家の夜会では、リュシアン様の想い人も招待されているのだろうか。


わたくしは、お母様の夜会服(イブニングドレス)を少し手直しして、新しく見えるように作り替えていた。

さすがに、全部新しく作り直すには、費用や期間の面から言っても、無理だったのだ。


わたくしは、二枚目に作った、薄紫色のドレスを着る予定だ。

『リラの妖精のよう』と、褒められたので、そのドレスにしたのだけれど、イブニングドレスは二枚しか持っていないので、迷っても時間はかからない。


今回は、兄やマリウス様も招待されているのだが、騎士は儀典用の制服を着ればよいので、衣装に悩むことはない。


ただし、一目で近衛連隊か、騎兵連隊かが分かってしまうので、近衛連隊に侮られる事も有るらしい。

それでお酒が入ると、乱闘になったりするようだ。


わたくしは、素晴らしいドレスを沢山見られることが嬉しくて仕方がない。

王弟殿下と妃殿下がご臨席されるそうなので、特に妃殿下のドレスが見てみたいのだ。







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