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発売記念の短編小説ページ  作者: ほのぼのる500
2ヵ月連増刊行記念小説
2/2

えっ! 続いてるの?

2ヵ月連増刊行記念小説 第2弾です。

本編とは一切関係ありません。


前を歩いていたシエルが急に立ち止まり、周りを見回す。


「シエル、どうした?」


お父さんの質問に首を傾げるシエル。

そのいつもと少し違う様子に、お父さんが剣の持ち手を握る。


「にゃうん?」


シエルはしきりに周りを見て不思議そうな声を出す。

もしかして迷子にでもなったのだろうか?

今まで一度もそんな事は無かったけれど。


「大丈夫? 場所が分からないの?」


「にゃうん」


シエルの返答にお父さんが驚いた表情をする。

ここは森の奥にある洞窟。

シエルがいつも通り見つけて入ったのだが、どうやら普通の洞窟では無かったようだ。


「今までにもこんな事が?」


お父さんが私に聞くので、首を横に振る。

今までシエルとは何度も洞窟に入ったけれど、こんな事は無かった。


「とりあえず、この洞窟を出ようか」


お父さんの言葉にシエルも私も頷く。


「ぷ~」


「てりゅ~」


ソラたちを見ると、きょろきょろと不安そうに周りを見ている。

2匹の頭をそっと撫でて、落ち着かせる。

私がしっかりとしないとな。


「大丈夫だよ」


シエルが先頭を歩き、来た道を引き返す。


「あれ? ここは右に曲がったから、帰りは左のはずなんだが……」


確かにお父さんの言う通り、行きに右に曲がった記憶がある。

だから帰りは左に曲がるはずなのに……。

目の前の曲がり角は、右に曲がっている。


「どうしよう、お父さん」


「ここにずっといても仕方ないし、右に曲がってみるか。シエルもいいか?」


「にゃうん」


シエルの声がいつもより硬い。

きっと警戒しているのだろう。

小さく息を吐いて周りの気配を探る。

あれ? おかしいな。

この洞窟に生き物の気配がまったく無い。

さっきまで、多数の気配があったのに。


「アイビー、気配の方はどうだ?」


「この洞窟、生き物が急に居なくなったみたい」


私の言葉にお父さんがちらりと私を見る。

その表情は少し戸惑っている。


「えっと、それはどういう意味かな?」


「さっきまであった生き物の気配が、今は何処にもないの。まるで消えたみたいに」


「消えた? そうか、そばを離れないようにな」


「うん」


「にゃうん」


そっとお父さんに近付く。

シエルも、いつもより傍にいる。

ソラとフレムは、既にバッグの中に避難させた。

緊張する。


「外だ」


洞窟の中から見える光。


「洞窟に入った時は、夕方だったよね?」


私の言葉にお父さんが一度立ち止まる。

視界に入る光から考えると、昼間だと感じる。

お父さんが、手を差し出すのでギュッと握る。

何が起きているのか、不安だけど調べるしかない。


洞窟を出ると、森の中なのは先ほどと一緒。

だけど、違う。


「かなり巨大な木だな。やっぱりさっきの場所とは違うようだ」


「うん」


お父さんと繋がっている手に力を籠める。

バサバサバサと森に音が響き渡る。

それにびくりと震えると、お父さんがぐっと抱きしめてくれた。


「リュウ……」


お父さんの緊張した声に、視線を向けると記憶の中にある龍がいた。

私たちを見ている。

シエルが前に出て威嚇するが、特に怖がっている様子は無い。

少し近付いて私たちをじっと見ている龍。


「シエル待て。敵意は無いようだ」


それは私も感じた。

ただ、私たちを見ているだけのような気がする。

私たちもどうしていいのか分からず、じっと龍を見る。

おもむろに龍が首を傾げる。


「もしかして困ってる?」


お父さんの言葉に、なんとなくそう感じたので頷く。

まるで、「なんでここにいるの?」と不思議がられているような気がする。


「あれ? えっ? 人?」


不意に聞こえた男性の声に体がびくりと震える。

あれ?

でも、この声を知っているような気がする。


「あっ!」


男性の驚いた表情をじっと見る。

やはりどこかで見た事がある。

どこでだっけ、それに名前……名前は……あっ!


「確か君は……翔さん?」


お父さんが半信半疑で名前を言う。

そうそう、翔さんだ!


「もしかして覚えてるのか!?」


翔さんが驚いた表情で私とお父さんを見る。

私は翔さんが言った言葉に戸惑いながら、頷く。


「どこで会ったのかは分からないのだが、会った事と名前を覚えている」


お父さんの言葉に、手で顔を覆う翔さん。


「マジか……あの駄神が」


だがみ?

ダガミという人がどうしたんだろう?


「ここにはどうやって?」


翔さんが少し心配そうに訊いてくる。

お父さんが後ろにある洞窟を指して、今までの事を説明する。

説明を聞いた翔さんから大きなため息が聞こえた。


「簡単に説明するな。えっと、驚くと思うがここは君たちがいた世界とは別の世界だ」


「「はっ?」」


「にゃ?」


お父さんもシエルも驚いている。

私も同じだ。

違う世界?

いやいや、そんな事が起こるわけが……でも、気付いたら知らない場所にいたんだよね。

そんな事もあったりするのかな?


「前は俺がドルイドさんとアイビーさんの世界に空から落ちたんだよ。で、今回はお2人が俺のいる世界に来た。たぶん駄神のせいだとおもう」


今回の事はダガミさんのせいらしい。


「あの、帰れますか?」


「あぁ、駄……アイオン神がきたら帰れると思うけど、それまで俺の家で過ごしてほしい。森の中は魔物がいるから、危ないし」


良かった、帰れるんだ。

それにしても、人を違う世界に送れる力があるなんて、この世界はすごいな。


「ありがとう。助かるよ」


お父さんのお礼に翔さんが苦笑する。


「謝る必要はない。2人は被害者だ」


アイオンシンと言えば、前に翔さんを迎えに来た女性がそんな名前だったな。

いつも一緒にいるのかな?


「もしかして、アイオンシンという人は翔さんの恋人ですか?」


私の質問に翔さんが固まる。

そして、ものすごい嫌そうな表情をした。


「えっと」


そんなに嫌なのかな?


「あぁ、そうか。説明不足だったな。彼女とはそんな関係じゃないから。だいたいアイオン神は神だし」


「カミ?」


お父さんと私は首を傾げる。

何だろう、カミが何か分からない。


「えっと、神様。もしかしてそっちの世界には神様という概念が無いのかな?」


あっ、神様か。

ん?


「「神様!?」」


お父さんと同時に驚いた声を出す。

それに少し驚いた様子の翔さん。

いや、驚くよ。

神様だったなんて。


「神様と言っても駄神だ」


「ダガミ……」


もしかしてダは駄?

カミは神?

駄神?

……神様にそんな事を言って大丈夫なのかな?

あ~、後ろにいる龍も頷いている。

どんな神様なんだろう。

気になるな。


「とりあえず、俺の家へ行こうか」


「悪い。世話になる」


お父さんの言葉に翔さんが苦笑いした。


「気にする必要は無いよ。あ~、俺の家には色々いるが、まぁ気にしないで。皆いい子だから」


色々いる?

いい子……何がいるんだろう。

すっごく気になる。


「ここから歩きだと時間が掛かるから、ふわふわに乗ってみる?」


ふわふわ?

お父さんと首を傾げていると、龍がすっと私たちの前に来る。

そして私たちへ視線を向ける。


「もしかしてふわふわとはこのリュウの事か?」


お父さんが驚いた声を出す。

私も正直、ドキドキしている。

だって、翔さんは「乗ってみる?」と聞いた。

つまり龍に乗れるの?

楽しそう。


「あぁ、こいつはふわふわという名前で水龍なんだ」


水龍なんだ。

確かにきれいな鱗を持っている。

薄い青色で光沢もあるのかな、光が反射してとても綺麗。


「ふわふわに乗って行ったら、すぐに俺の家に着くから」


…………


確かに、あっという間に家についた。

だけど、


「怖かった~」


「そうだな」


私の言葉にお父さんが苦笑する。

龍のふわふわさんに乗るのは、楽しかった。

ただし、途中からどんどん速度があがり、最後は怖かった。

あんなに速いなんて……よく振り落とされなかったな。


「悪い、もしかして速すぎたか? いつもの速さだったから気付かなった」


いつもの速さなんだ。

すっごく、速かったんだけど。

あれが通常なのか……翔さんすごい!


「いたー!」


「「「えっ?」」」


不意に聞こえた女性の声。

声の方へ視線を向けると、白い服を着た女性が私たちの方へ走ってくるのが見えた。

綺麗な女性だな。

あれは誰だろう?


「ドルイド、アイビー。彼女が駄神だ」


うわ~、翔さんすごくいい笑顔。


「やっぱり! 来ちゃ駄目! 繋がっちゃった!」


駄、じゃなくてアイオン神様は、目の前で混乱中のようで、何を言っているのかさっぱり分からない。

どうしようと翔さんを見ると、長ーいため息を吐いた。

それに苦笑していると、ふっと影が出来た。

上を見ると、巨大な龍。

ふわふわさんとは違い、今度は茶色の体を持つ龍が上空にいた。

地面に降り立つと龍は、アイオン神にぐっと顔を近付ける。


「はぅっ」


アイオン神の口からおかしな音が漏れると、なぜか緊張した面持ちになった。

あの龍は、神様より偉いのかな?


「アイオン神、彼らはちゃんと帰れるのか?」


翔さんの言葉に何度も頷くアイオン神。


「もちろん、今度こそ大丈夫。関りが深くなると、記憶に影響があるからすぐに彼らを元の世界に戻すつもりだ」


「また急だな」


アイオン神の返事にため息を吐く翔さん。

何だかアイオン神は神様っぽくないな。

神様にも位とかあるのかな?

下っ端とか?

……神様にこんな事を思っては駄目かな。


「ドルイド、アイビー。すぐに帰った方がよさそうだ」


「そうみたいだな。世話になった」


「お世話になりました」


「にゃうん」


また会いたいけど、世界が違うから無理だよね。


「こちらの手違いで申し訳なかった。ここでの事を覚えていると世界に影響があるので、忘れますので」


せっかく出会えたのに残念だけど、何か影響があるみたいだから仕方ないよね。


「元気でな」


翔さんの言葉に手を振る。

ほんの少しの時間しか関わっていないけど、なんだかすごく寂しいな。

お父さんと私とシエルの周りが光だす。


「さようなら」


手を振ると翔さんが手を振り返してくれた。

ふわっと体が浮く感覚……。


………………


「アイビー」


「お父さん?」


目を開けると、周りを見回す。

どうやら洞窟内で寝ていたようだ。


「にゃうん」


シエルも一緒だ。

近くにあったバッグがごそごそと動き、ソラとフレムが出てくる。

えっと、何があったんだっけ……あっ!


「「…………」」


記憶は無くなるって言っていたよね。

影響があるから忘れるって……。


「お父さん」


「アイビー」


視線が合うと、2人同時にため息が出た。

全部覚えているんだけど、これはどうしたらいいんだろう。


「さすが駄神だな」


「にゃうん」


お父さんの言葉にシエルが呆れたように鳴く。

それに苦笑が浮かんだ。


………………


アイオン神視点


「あれ? えっ? えっと……」


うそ!

3人の縁が切れてない!

繋がったままって……どうしよう。

これって、間違いなくやばいよね。

あ~、また怒られるよぉ。


今度はアイビーとお父さんを飛ばしてみました。

2回目なので、翔が慣れてきたような……。


11月10日より「異世界に落とされた…浄化は基本!」3巻発売スタートです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 変な風に縁つないじゃったから 翔、こっちってかテイマーの方で再生したりしてな(スットボケ
[一言] 続編を作って欲しい
2021/08/14 06:06 退会済み
管理
[良い点] アイオン神のポンコツ度が加速しているw
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