表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
発売記念の短編小説ページ  作者: ほのぼのる500
2ヵ月連増刊行記念小説
1/2

あと……少しだったのに!

2ヵ月連増刊行記念小説です。

本編とは一切関係ない、コラボ小説となっています。

ちょこっとでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

―翔視点―


「あれ? えっと、ここは……」


はっ?

ベッドに入ってウトウトしていると、聞こえるはずのない声がすぐ傍で聞こえた。

目を開けると、予想通りの人物がそこにいた。


「アイオン神? なんでここにいるんだ?」


急に現れたアイオン神に驚きながら、体を起こす。

というか、いきなり寝室に現れるって何を考えているんだ?


「……ここは、もしかして翔のいる世界か?」


「あぁ、そうだけど」


何だろう、すごく嫌な予感がする。

すぐにアイオン神を追い出さないと、駄目なような気がする。

……追い出すか。

ただ、どうやってという問題があるんだが……。


「わっ」


アイオン神の叫び声に、慌ててアイオン神を見ると目の前が真っ白になった。

絶対に何かあると思った!

最悪!



「翔、大丈夫か? 起きてくれ」


何かに呼ばれて、意識がすっと戻るのが分かった。

目を開けると、どこかで見た事がある風景。


「ん? 何だここ。……あれ? ここって……」


俺が今の世界に飛ばされる前にいた空間に似ているな。

まさか同じだろうか?

それにしても、なんで俺はここにいるんだ?


「翔、翔」


呼ぶ声に視線を向けると、アイオン神がすぐ傍にいた。


「なんで俺は、ここにいるんだ?」


「それが……2代前の創造神が残した書類を整理していたら、いきなり魔法が発動してしまったんだ。どんな魔法だったのかは、確認できなかったので分からない。すまない」


2代前の創造神ね。

というか、書類を整理していただけで魔法が発動って……。


「それで? これからどうなるんだ?」


「……きっと、別の世界に飛ばされる事に……なるような」


「なるような」って曖昧だな。


「とりあえず戻せ。すぐに戻せ。アイオン神は一応神だろ? 出来るはずだ」


「一応では無く、私は立派な神だと評判なんだが」


そんな事はどうでもいいい。

とりあえず、戻せ。


「戻せ」


「……なぜか神力が使えないんだ……」


「マジか」


「すまない」


「無能」


「ひどくないか。泣くぞ」


アイオン神の力が当てにならないならどうするか。

そうだ、発動した時の状況はどうだったんだ?


「2代前の創造神の魔法が発動した時は1人だったのか? 周りに誰かいなかったのか?」


「無視か……。まぁいいけど。魔法が発動した時は、部下が周りにいた」


部下か。

なら上司を助ける為に動くよな。


「彼らに期待するしかないな」


ん?

あぁ、これって……。


「そうだな。……ところで翔」


「なんだ?」


「体がどこかに引っ張られてないか?」


「そうだな。確実にどこかの世界に引っ張られているな」


「「……はぁ」」


視界が光に覆われると意識がふっと遠くなるのが分かった。

本当に最悪だ。

アイオン神の部下の人、早く解決を求める!



「怪我はないみたい。それにソラが大丈夫だって」


怪我? 

空が大丈夫?

どういう意味だ?

というか、体が重い。

俺、どうしたんだっけ?


「そうか。それにしても、空から降って落ちて来たよな?」


空から落ちてきた?

もしかして俺の事か?


「うん。不思議な事があるもんだね」


えっ?

……それだけ?

もっと警戒心を持った方がいいぞ。

俺が言うのもなんだが。

いや、言ってないけど……。


「アイビーのその順応力にはいつも驚かされるけど、不思議で片付けるのは間違っているからな」


「そうかな?」


そうだよ。

じゃなくて、いい加減に俺も目を覚まさないとな。

起きろ!


「んっ」


「あっ、起きたかな?」


あぁ、体がすごく重く感じる。

もう一度、眠りたくなるな。

いやいや、駄目だ。

起きないと。

あれ? 

目が開かない。

……寝るか?


「あれ? まだ寝てるみたい」


「そうか。今日中の移動は無理かな?」


「そうだね。仕方ないよ」


うわっ、めちゃくちゃ迷惑かけているみたいだ。

しっかりしろ、俺!

起きろ!


「あっ?」


目を開けると、男性と女の子が俺の傍で話をしていた。

親子かな?

でも似てないな。

2人を見ていると、女の子の視線が不意に俺に向く。


「あっ、こんにちは」


俺の間抜けな挨拶に、女の子が心配そうな表情になる。


「大丈夫ですか?」


「……はい。えっと、迷惑を」


なんだか、体がすごく重く感じるな。


「いえいえ、大丈夫です。起きられますか? 水を飲めますか?」


水。

そう言えば、すごく喉が渇いているな。

飲みたい。

体を起こそうと腕を持ち上げるが、異様に動きづらい。

すると、男性が手を貸してくれた。


「すみません」


「いえ、問題ないですよ」


本当に体が重い。

座ると、ため息を吐く。

まさか、起き上がるだけで疲れるなんて思わなかった。


「はい。どうぞ」


女の子が水の入ったコップを差し出してくれる。


「ありがとう」


何とか受け取り、それを口に持っていく。

受け取った水を飲むと、冷たくて気持ちいい。


「ふぅ」


あれ?

体に感じた重さが少しマシになってる?

腕を動かしてみる。

さっきより動かしやすいな。


「空から落ちてくるから驚きましたよ」


女の子が空を指して言う。

なんで俺は空から落ちて来たんだっけ?

えっと……そうだ、2代前の創造神の魔法に巻き込まれたんだった。


「あははっ。驚きますよね。すみません」


あれ?

周りを見るがアイオン神がいない。


「あの、アイ……じゃなくて、俺の近くに女性がいませんでしたか?」


色々やらかす神だから、早く回収しないと。


「えっ? 女性ですか? お父さん見た?」


あっ、やっぱり親子なんだ。

仲がよさそうだな。

顔は似てないけど、雰囲気が似ている。


「いや、空からはあなたしか落ちてきませんでしたよ」


「そうですか」


まさか別の世界に落ちたとか言わないよな……。


「一緒に落ちてくる予定だったんですか? 探した方がいいのかな?」


「シエルに、周辺をちょっと探してもらおうか?」


親切だな。


「いえ、彼女も立派な大人なので……たぶん……きっと大丈夫でしょう」


どこかで誰かに迷惑を掛けたとしても、1人で対応できるはずだ。

色々俺の周辺ではやらかすけど、立派な神だと評判らしいからな。

自分で言ってたし。

俺の所では、ふわふわに駄目だしされたり、農業隊に本気で追い掛け回されたりしているけれど。

きっと大丈夫。

彼女は立派な神のはずだから。

……全然、安心できないのはどうしてだ?


「そうですか?」


「でも、シエルは行っちゃったよ?」


女の子が、森の奥を指しながら言う。


「えっ?」


いつの間に?

音とかまったくしなかったけど。

そもそも近くに誰かいたかな?


「また、迷惑かけてしまって……」


俺が小さく頭を下げると、男性が笑って首を横に振る。


「大丈夫だ」


優しい人たちの所に落ちれて、よかった。


「そうだ。自己紹介がまだでしたね。私はアイビーと言います」


「俺は父親のドルイドだ」


「翔と言います」


何だか2人の雰囲気に癒される。

それにしても、アイビーさんもドルイドさんも警戒心が薄すぎると思う。


「ちょっと気になるんですけど、もう少し警戒心を持った方がいいと思いますよ。誰かもわからない俺に自己紹介なんて簡単にしては駄目でしょう」


何だか普通に受け入れられているような気がするけど、おかしいよね?

うん、おかしいと思う。

身元も分かっていないんだよ、俺。

普通は怪しむだろう?

なんで、簡単に名前を告げてるんだ?

この世界、そんなに平和なのか?

すごくこの2人が心配になってきた。


「えっ? 悪い人なんですか?」


「えっ! いや、何かするつもりはないですけど」


しない、しない。

助けてくれた人に何をするって言うんだ。

……いや、そうじゃなくて。


「大丈夫です。ちゃんと仲間に訊いて、あなたが私たちに危害を加えないと判断されましたから」


仲間に訊いた?

そうなんだ。

でも、どうやって調べたんだ?

俺はこの世界の人間ではないんだけど。

親子を見る。

仲間の判断を、信じているみたいだな。

もしかしてすごい力のある仲間がいるのか?


「そうなんですか。それなら、いらない心配でしたね」


「いえ。ふふふっ」


「ん?」


「出会ったばかりの私たちを本気で心配している人が悪い人なわけないですよ」


「いやいや、そう見せかけているだけかもしれませんよ」


「にゃうん」


「あっ、シエル」


シエル?

そう言えば、さっき探しに行くようにとか言っていたような。

女の子の視線を追うと、


「うわっ。かっこいい。えっと、ヒョウかな? 違うか?」


人じゃ無かったのか。


「えっ?」


ん?


「ひょうとはなんだ? シエルはアダンダラという魔物なんだが」


「魔物? そうなんだ。かっこいいな」


シエルという魔物が近付いてくる。

手を伸ばしてそっと頭を撫でる。


「お~、撫でさせてくれた。ありがとうな」


「にゃうん」


返事をしたのか?

もしかしてコアたちみたいに、頭がいいのかもな。


「シエル、この近くに女性はいた?」


シエルを見ると首を横に振っている。

本当に頭がいいのか。


「翔お兄さん、いなかったみたい」


「そうか。わざわざ、探してくれてありがとう」


しかし、アイオン神は何処にいったんだ?

不安だな。


「にゃうん」


ぐ~。


「あっ」


とっさに腹を抑える。

なんで腹が鳴るんだ?

ここに来る前は夜で、寝ようとしていた時だよな?


「お腹が空いているんですか?」


「はははっ、気にしないで下さい」


恥ずかしい。


「あの、私たち今からお昼なんです。一緒に食べませんか?」


「いや、悪いし」


ぐ~。

あははははっ。


「一緒に食べましょう。ホットケーキなんです」


「いただきます!」


ホットケーキ!


「えっ?」


ホットケーキ!

あの世界に行ってから、全然食べられなかった俺の好物。


「好きなんですか?」


「大好きです」


「すぐ作りますね」


アイビーさんが笑いながら、焼く準備を始めた。

生地を箱から取り出し、後は焼くだけらしい。

お昼の準備をしているところに、落ちてしまったようだな。

悪い事をしてしまったな。


ジュっと音と甘い香りが広がってくる。

うわ~、久々の香り。

ぐ~。

本当に正直だな。


「そろそろ焼けますよ」


「ありがとう――」


「見つけた! 翔」


「あっ、アイオン神?」


「「えっ?」」


アイオン神の声が聞こえたと思ったら腕を掴まれる。

そちらに視線を向けると、安堵の表情のアイオン神。


「よかった~。すぐに戻しますね」


「はっ? あっ、待った――」


視界が真っ白に染まる。

マジか!

目の前にホットケーキがあったのに!


「うわっ」


周りを見渡すと、一つ目が作ったベッドの上にいる。


「俺の部屋だな」


「あ~、よかった」


いや、よくない。

あと少しで好物が食べられたのに!

ジト目で見ると、ホッとした表情のアイオン神。


「何か問題でもあったのか?」


「あまり他の世界の者と交流を持つと、良くない影響が出るので」


「えっ、大丈夫なのか?」


あの2人にはこれ以上、迷惑はかけられない。


「はい。あのぐらいの短い交流なら、自然に修復します」


自然に修復してくれるなら安心だな。

何が修復するのかは分からないが。


「おそらくあちらの方々は、翔の事をすぐに忘れるでしょう」


……忘れてしまうのか。

ちょっと残念だな。

良い人たちだったからお礼も言いたかったし。

そして、ホットケーキ!

食べたかった。


「はぁ」


まぁ、影響が出るなら仕方ない。

……いや、よくない。

せめて一口食べたかった。

あと少しだったのに!


「翔、今回は巻き込んで悪かった。まだ処理が残っているので、お詫びは後日あたらめてする。じゃあ」


慌ただしく去っていくアイオン神。

彼女が悪いわけでは無いが……はぁ。


「……寝よ」


それにしても不思議な2人だったな。

あのシエルって言う魔物も、カッコよかったし。

そう言えば、俺の周りに猫系はいないな。


「アイビーさんにドルイドさんか。ありがとう」


届かないとは思うけど……。

翔視点でアイビーとお父さん、シエルと会わせてみました。

相変わらず、翔は巻き込まれて大変そうです。


10月10日より「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました」 3巻発売中です。

よろしくお願いいたします。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ