気持ち
「ただいま」
「おかえり」
すぐに言葉が帰ってくる。再びの新婚夫婦プレイをして満足感が芽生える。
瑠衣は珍しく靴を脱ぎ捨てて急いでリビングに駆けていった。餓鬼なところも多少は残っているのだと安心した。
脱ぎ捨てた靴を綺麗に並べて俺も瑠衣に続いてリビングに上がる。
てか、あいつびしょ濡れの服で行ったな。
服を洗濯するために洗面所に脚を運んだが、、「最低です」妹に先回りされていたようで着替え途中に部屋の扉を開放してしまった。育ってない胸を必死に隠して鋭い視線で凝視される。
ごちそうさまです。
鏡で右頬に紅葉型の赤い跡がくっきりと見受けられる。
「まったく、ゆうじくんはデリカシーがないですね」
「面目ない」
机の上には凛花による手料理が振る舞われていた。色彩を配慮した綺麗な手料理。
見ただけで涎が口中に充満する。
リビングのソファーではいつも俺に消極的の瑠衣が珍しく積極的に凛花と会話している。
久しく見ていない笑顔を見れて何故か心が高揚している。ガールズトークと言うやつだろうか。
邪魔しないよう一人でご飯をこっそりと頂く。
メイン料理はコロッケ。
外側はさくさくで中はジューシーな油ののった口の中で甘みが広がる感覚。慈愛に満ち溢れた味。
思わず涙が出そうになる。
「ごちそうさまです」とぼそっと呟いて食器を洗い指定の位置に直し、会話している瑠衣と凛花に少し目をやって二階にある自室に移動する。
することもないのでweb小説を漁るだけ。暇な時間をどう潰すかが肝になってくる。
「ゆうくん、雨上がったから今から帰るね」
階段したで声のトーンを大きくして声を発する凛花。
「送るよ」
重い足取りでベッドを降りて凛花へ家を出る。まだ水溜まりが点々として鈍よりした黒色の雨雲の隙間から日差しが差し込んでいる。
一応の為傘を持っては来たものの意味をなさなかったようだ。車道側を歩くように凛花を隣に並行歩行する。
配慮した行動を察したのか申し訳なさそうな表情を零していた。
百メートルくらいの道のりが早い。もう少し一緒にいたいと思う気持ちは山々だ。
でもなんで声掛ければ、今の俺にはまだ無理なのかもしれない。
話題を振ってくれるのはほとんど凛花である。
そこも含めて好きなのだが。
「ありがと」
「うん、また明日な」
家の中に姿を消失するまで凛花の背中を目で追いかけてから帰宅する。静寂ののしかかった空間を一人寂しくとぼとぼ帰る。