幼馴染と登校と思ったが
今朝もまた凛花が家まで迎えに来てくれる。生憎、睡眠をまだ取っていて家のチャイムに気づかず、目が覚めた時は凛花が頬をふぐのように膨らませて怒っていた。
俺にとったらご褒美でしかないのでしっかりと堪能さしてもらった。
俺の家庭は親の事情で妹と二人暮しをしている。中学三年の妹は思春期まっ貞中の為口が厳しく、お兄ちゃん困っています。
親の事情といっても重いものではない。財政を担っている父と補助役の母。一心同体で離れられない存在であるのだ。
妹は大抵のことが出来るハイスペックな子で目が覚める頃には部活がある為か既に家を去っている。学校では口が優しいようで飴と鞭をしっかりと取得している。
朝食を作って置いてくれるあたり優しいのは俺にもかもしれんが、。
「早く行かなきゃ遅刻しちゃうよ?」
「そうだな」
寝癖の着いた頭皮を掻きつつ、ベッドから降り学校に行く荷支度を開始する。
幸い、今日は副教科の配分が多くまたさぼれる時間も多い。そのためかいつもより足取りが軽く感じるのは。
机の置いてある食パンの角に噛り付き寝癖を直す。鏡で見る自分の姿は締りのない顔だった。昨日、注意を破って夜更かしした為か目元にはクマがみられる。
「ゆうくん、今日雨だから傘忘れないでね」
着替え中の俺を配慮してか室外から声のトーンを上げて忠告してくれる。
この配慮といい気遣いといい本当に優しい。こんな彼女が居たらなとつくづく感じてしまう。
リビングの時計を確認すると既に八時を回っていた。八時三十分までの登校が原則である。家から学校は幸い割と距離が短く十分程で到着するくらいの距離である。
もう少し登下校の距離が長いと凛花との時間を長く楽しめるのに。
身支度も済み、折り畳み傘を鞄に入れ、後は登校するのみ。
「待たせた、すまん」
「ほんとです。行きましょう」
ドアノブを引いて学校に登校しようとしたのだが、ん?なんだこれ?
家のドアを開けた高さ一畳くらいの幅から見える外の光景はゲリラ豪雨そのものだった。
あれ?なんか小雨みたいなこといってなかったっけ?
驚愕のあまり勢い良く後ろを振り返ると驚愕した表情を浮かべた凛花がいた。
いや、あんたもかい。
学校から緊急メールが届いていないか凛花はすぐにポケットからスマホを取り出して確認する。
凛花が確認しているので俺はすることも無いのでゲリラ豪雨を拝みながら拝見していた。
「ゆうじくん、今日学校休校です。」
ですよねー。こんな状況であったら怖いよ。
私立高校に通っている為、休校という措置は公立高校と比較して比較的に取りやすいようで、台風の時期になると休校は多々ある。
しかし、俺はこんな状況下に置かれているがゲリラ豪雨に感謝の感情が芽生える。それもそのはず、凛花と居られる時間が増えるのだから。
凛花の親も朝早くからの出勤で居ないはず、てかこの状況で帰宅させるのは流石に不味い。怪我されたら元も子もないからな。
「凛花、雨が止むまで俺の家に居ろ」
「は、はい!」
急な命令に心が動揺し顔にそのままの表情が露出されている。
「瑠衣ちゃんは大丈夫ななんですか?」
「ああ、そうだな、聞いてみる」
俺の学校は中高一貫で妹は中学部の最高学年で翌年、高校に持ち上がりになる。勉学の方も優秀で内定はほとんど5で特待生として学費は免除。
それに比べて俺はと言えば人様にお見せできないほどの壊滅ぶりを見せている。
スポーツも得意と言う訳では無いが不得意と言うわけでもない。満遍なく出来ると言っても過言ではないだろう。
右ポケットに入れていたスマホを取り出して瑠衣にメッセージを送る。中高一貫校である為中学部も今日は休校になっているはずである。
『学校大丈夫か?』
『休校だって』
『傘は?』
『持って来てない』
「すまんが、ちょっと迎えに行ってくる」
「行ってらっしゃい」
新婚夫婦プレイを終えると傘を右手にさしながら豪雨の中、学校までの道のりを全速力で駆ける。
一刻も早く帰宅して凛花といたいという願望が原動力になったのかいつもより足取りが軽く感じられる。
およそ三分で学校に着いたものの、水溜まりを踏んだりして服がびしゃびしゃである。私服で来て正解だったかもしれない。
『今どこいる?』
『下駄箱』
ずぶ濡れの私服のポケットにスマホを再度入れて中学部の下駄箱へと脚を運ぶ。
休校の為、生徒はいなく何故か征服感が芽生えてしまう。先生に見つからないようにしないと。
下駄箱に着くと空を見上げている瑠衣の姿があった。
「何、若いのに黄昏とるんだね」
「来るのが遅い」
「無茶言うな。これでも急いでいたんだからな」
「……あり、がと」
「なんか言ったか?」
「きもっ」
え……。迎えに来たらきもって言われることあるか普通。
やはり兄への当たりが厳しい。お兄ちゃん悲しいです。
「そいえば、今家に凛花いるぞ」
「凛花さん来てるんですか?」
「そうだけど」
なんで凛花さんじゃなくて兄貴が迎えに来たんだと言いたげな表情。
しかも、さっきの残念そうな表情は跡形もなく消失していてぎらぎらとした瞳が見受けられる。
凛花と妹が部屋で遊ぶのなんてもう五年ぶりだ。昔は妹の面倒を見てくれていて妹も俺より凛花の方に姉妹感が芽生えているのかもしれない。
右手に持って来ていた傘を瑠衣に渡してとぼとぼ来た道を帰る。二人共帰宅した時にはびしょ濡れになっていた。