ホワイトデーはお詫びとともに…… 【前編】
婚約者サーラの機嫌を思い切り損ねてしまったエミール殿下の奮闘記。
バレンタインデー編
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皆さん、お久しぶりです。
ユイナーダ王国第十王子、国立ユイナーダ学園高等部魔術科二年のエミールです。
私はあれから毎日、手紙を書き花を贈ったが愛しい婚約者サーラの機嫌がなかなか治らない。
推理物は得意だけど、恋愛物は苦手な私はこういう時どうしたら良いかわかりません。
で、仕方なく恋愛経験豊富な王太子に相談してみました。
『そんな物○○○して○○○すれば一髪でOKさ♪』
まったく参考にならなかった。
次に王国軍第一騎士団副団長に聞いてみました。
『そんな物は一緒に訓練すれば一髪だ!』
それは脳筋の奥方だけでは?
第一騎士団団長の嫡女で新設された女性騎士団の団長ですよね。
結局、どの兄上に相談してもあまり参考にならなかった。
そこで私は見方を変えて、姉上達に相談してみた。
と、言っても何人かは既に遠方や国外に嫁がれているのだけど……
侯爵夫人に相談したところ、延々2時間『デートの約束を忘れるなどと!』と怒られ、ついでに侯爵への愚痴で面会時間が終了してしまった。
次に第十王女で、同盟国のズーラシアン王国第四王子殿下に嫁がれるシイナ姉上に聞いてみました。
『そうね。やはりデートのやり直しをしなくてはダメよ。
お詫びの品としてデートの最後に【世界で1つだけ】の特別な何かを渡すの何て素敵ですわね。
私の場合、お手紙にも一工夫してますのよ。』
ほうほう、手紙に一工夫と……
『あの方の大好きな香りを焚き染めています。
特にボルネオール領産のマタタビがお気に入りなんですのよ。』
ズーラシアン王国の王族の方は、猫科の方が多いですからね。
その後、姉上にずっと婚約者の惚気話を聞かされたけれど、兄上達よりはよほど役に立つ情報を得ることができました。
次に第十一王女で同盟国のポーラルタオ王国の侯爵家に嫁がれるリイナ姉上にも意見を聞いてみました。
『そうね。どうせなら貴方の髪や瞳と同じ色の宝石や魔石でアクセサリーを作ると、良いと思いますよ。
その方が特別感が有って良いと思いますわ。』
ほうほう、つまり私色という物ですね。
参考までに、お聞きしますが姉上はポーラルタオの婚約者殿からどの様な物を頂いたのですか?
『私が貰ったのは綺麗なポーションの瓶ですわね。
綺麗な装飾がされていますから、おそらく遺跡からの発掘品でしょう。
それに嫁ぐ時には全部持って行きますから、何だか貰った感が薄くて…… 』
なるほど…先程のは姉上が欲しい物なんですね。
確か姉上の婚約者殿の仕事は遺跡の発掘調査、趣味がこうじて魔法学院で考古学の教授をされていらっしゃるとか。
結論!
①デートのやり直し。(サーラの趣味にあわせる。)
②私の手持ちの宝石や魔石で【世界で唯一のアクセサリー】を作る。
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※1
シリーズ⑧⑨の【乙女ゲーム自称ヒロイン】事件を受けて、新設された女性騎士のみで構成された騎士団。
初代団長は第一騎士団団長の長女、マリン。
二男一女の子持ち。第二王子は婿養子。
事件後、各騎士団では一定数の女性騎士を在籍させる事となった。
その為、女性騎士の需要が大幅に増加。
ユイナーダ王国軍は広く門戸を開き、男女問わず一定の実力があり試験に合格すれば騎士団への入団が許可される事になる。