獣
地主の一家は何も善意で私をここにおいているわけではなかった
私の父と母は稀人と呼ばれる存在だったそうだ
稀人とは人より優れたなにかを持つ人のことを言う
父は国一番と呼ばれた強い戦士で母は特殊な力を持っていたらしい
それを知った地主一家、ソクシ家は私に稀人として何らかの特徴が現れたら使えると思い私を手元に置いたのだ
言われた通り敷物を板に擦り付けて洗っていると何か左から飛んできたが私は大人しくそれに当たった
それは石で、当たったところからは血が流れ熱く痛んだ
「臭いと思ったら獣がいたからか!おい!ここに獣がいるぞ!追い払わないと!」
そう言いながらこちらに駆けてきたのはソクシ家の子供
兄のタクコウと妹のソクリョ、その取り巻きの村の子供達だった
「こいつはすぐ傷が治る化け物だ!」「親に捨てられた孤児だ!」「気色悪い目だな!」
子ども達は口々にそう言っては木の棒で殴ったり蹴ったりする
こんなことは日常茶飯事で悪いと村の大人達も参加するから今日はまだ良いほうだ
私は傷の治りが人より早かった。切傷は次の日には治り、骨折は三日で治った
また、動物に好かれそれだけではなく魔物にも懐かれた
皆気味悪がり、こいつには何をしても良いのだと認識されたようだった
しかしどんなに蹴られても石をぶつけられても痛いものは痛かった
こんなのが人だと言うのなら私は本当に獣になりたかった