7話《その後》
「兄さん……」
歌恋が家を出て、ルミはリビングへと足を運んだ。そこにいたのは、頬を赤くして、全く動こうとしない夕月の姿がだった。
「歌恋先輩に、何したの?」
「……別に、何もしてない」
「っ!ふざけないで!先輩泣いてた!」
ルミが、この家で歌恋が泣くようなことがあるとすれば、それは夕月がきっと関わっている。それ以外で、歌恋があんなにも泣くはずがないと。
「……兄さん、歌恋先輩は兄さんのこと好きなんだよ」
「あぁ知ってる」
「だから、私の護衛受けてくれたんだよ」
「知ってる……」
「っ!知ってるなら、なんでこんなことしたの!先輩の気持ちを弄ぶようなこと!」
ボロボロと涙をこぼすルミ。自分のことではないのに、胸が苦しくなる。けど、そうなるほどにルミは知っているのだ、歌恋がどれだけ夕月のことが好きで、たとえ結ばれなかったとしても、傍に居たいと思っているのか。
「最低だよ、兄さん」
俯く夕月にそう言って、ルミは自室へと戻った。
勢いよくベットに倒れこみ、手にしていたスマホに目を向ける。
「先輩大丈夫かな……」
そう思いながら、ルミはLINEで歌恋にメッセージを送った。