5話《サービス》
「んー!おいしぃ!」
「大人しく食べろ」
「あ……やばい、美味しすぎて涙出る」
「ハンカチいりますか?」
注文した料理が運ばれ、四人で手を合わせて「いただきます」を口にする。一口食べて各々感想を口にするが、その様子がおかしいのか、隅で見ていた夕月は笑いを必死に堪えていた。
「ナポリタンの下に卵敷いてあってうますぎる……」
「オムライス、中にチーズ入ってますよ」
「え、うそ! 一口ちょうだい」
「いいですよ」
いつものノリで、ルミは歌恋にオムライスをアーンする。二人は特に気にした様子もないく、女性同士のスキンシップとしては普通だと思いながらも、向かい側に座っている慎也も、じっとは見ているが、特に不思議そうな表情は浮かべなかった。
「にぃに」
「ん?」
「あーん」
羨ましそうに見ていると思ったのか、真昼は一口サイズのハンバーグをさしたフォークを慎也の口元まで持っていく。
弟の行為に嬉しさは感じるものの、向かい側の女子二人の視線を感じて恥ずかしさが込み上がってくる。
「にぃに?」
徐々に真昼の表情が不安そうになっていく。ここで泣かせるわけにはいかないと思い、慎也は真昼のハンバーグを口にする。
「美味しい?」
「ん、うまい」
「えへへ」
幸せそうな弟の顔を見て、慎也は優しく頭を撫でてあげる。そして改めて感じる視線に、慎也は慌てて振り返る。
「な、なんですか」
「いやー、お兄ちゃんしてるなぁーって」
「いいですね、弟思いのお兄さん」
「か、からかわないでください!」
ふてくされながら、ガツガツとカレーをかきこむ慎也。そんな彼の姿を見て、顔を見合わせて笑った歌恋とルミは、食事を再開した。
「おーい、後輩たち」
不意に、テーブルに近づいて来た夕月。手には大きなトレイを持っていた。
「先輩からのおごりだ」
テーブルの真ん中に置かれた大皿の上には、四種類のケーキが乗っていた。
「神!」
「兄さん最高!」
「調子いいな、お前たち」
呆れた表情を浮かべながら、夕月の視線は慎也へとむき、歯を見せるような笑みを浮かべる。
「遠慮せずに食えよ」
「………はい」
「うわぁ、ケーキだ」
「落ち着け、ケーキは後だ」
楽しそうにしている四人の姿を見つめ、夕月はその場を後にした。




