3話《今日の晩御飯は?》
「「あっ」」
椎葉にもらった菓子パンやスイーツをお昼ご飯として食べた後、下校時間になるまでルミは絵を描き、その側で、歌恋は持って来ていた小説を読み進めていた。
エアコンの起動する音に、掛け時計の進む音、ルミのキャンバスに筆を走らせる音。それ以外にも僅かに聞こえる様々な音色を聞きながら、歌恋は本の世界に入り込み、読書に没頭した。
「歌恋先輩」
現実の世界に戻ったのは、ルミが彼女を呼び、校舎に下校を知らせるチャイムが鳴った時だった。
すっかり教室の片付けは済ませており、ルミも帰り支度をすませ、歌恋の顔を覗き込見ながら笑みを浮かべた。
「帰りましょう」
「あぁうん。ごめん、全然気づかなかった」
「大丈夫です。晩御飯どうしましょうか?」
「そうだね、折角だし外食しようか」
そう言いながら、帰り支度をすませた歌恋は、ルミと共に教室を出ていった。
歌恋の両親は、共に用事があって今晩は帰りが遅くなり、晩御飯の用意はなかった。ルミも、今日は夕月がバイトの為、晩御飯は一人ということで、一緒に食事をするというのは前日に決まっていたが、特にどこに行くとかは決まっていなかった。
街の中をぶらぶらと二人で歩き、どこに入るかとキョロキョロしながら店を探していた。
そんな時に、目の前にいる二人と出会った。
「高崎」
「神薙先輩に、春宮さん」
「あっ、この前のお姉ちゃんだ!」
目の前にいたのは、高崎兄弟だった。
弟の真昼は、慎也の手をぎゅっと握りながら、歌恋を指差し、それに対して彼女はにっこりと笑みを浮かべる。
「制服……学校帰りですか?」
「うん、ルミの付き添い」
まだ慎也には慣れていないルミは、歌恋の後ろに隠れながらではあるが、小さな声で「こんばんは」と言いながら、頭を下げる。
「こんな時間に何してるの?」
「あぁ実は、両親が仕事で遅くなるらしくて、それで外に食べにきたんです」
「あれ?高崎料理できたよね?」
「真昼が外で食べたいって」
「にぃにのご飯も美味しいけど、たまには外で食べたかった」
「ということです」
「なるほどね」
「ねぇ」
不意に、足元にいた真昼が向かい合って話す歌恋と慎也を見上げる。
どうしたんだろうと、三人は真昼を見下ろし、彼はにっこりと笑みを浮かべる。
「お姉ちゃんたちも一緒に食べよ」
「え?」
「お、おい真昼!急にそんなこと言うな」
「私は別に構わないよ」
「えっ、い、良いんですか!?」
驚いた表情を浮かべる慎也。歌恋は後ろにいるルミに目を向けると、彼女はコクリと小さく頷いて「大丈夫です」と答えた。
「ヤッタァ!」
「すみません弟が……」
「良いよ。んー……真昼くん、何食べたい?」
「んーとね。なんでも食えるよ!」
「おぉ、スキキライないとはえらいね」
歌恋は真昼の頭を優しく撫でてあげれば、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。
そんな様子を、慎也とルミは羨ましそうに見ていたが、歌恋はそれに全く気づかなかった。
「どこで食べますか?」
「そうだね……一件、良いところがあるよ」
にっこりと歌恋は笑みを浮かべるが、ほかの三人は首を傾げた。




