18話《祝福の演奏》
「せ、先輩……あ、汗かいてるから、そ、そんなに……」
「いいからじっとして」
慌ててルミが離れようとするが、逃がさないように腰に回した腕に力をこめ、強く自分のように引き寄せる。
顔いっぱいに広がるルミの香り。それを嗅ぐたびに、自分がどんどん欲張りになってくのがわかる。
「嬉しかった……ルミがそんな風に思ってくれて」
「……恥ずかしいです……」
「ふふっ……正直怖かった。そういう目で見てないとか、自分の気持ちが否定されるのが。女の子同士だし、どうしても一歩引いちゃう」
ゆっくりと体を離すと、ルミはほんのり顔を赤くして歌恋を見上げる。にっこりと笑みを浮かべ、優しく頭を撫でてあげれば、気持ち良さそうに目を閉じて笑みを浮かべる。
「気持ちを抑えなきゃって。だから、側にいるのも、触れるのも、ダメだって……」
離れた体は、また距離を縮める。今度はルミの方から歌恋を強く抱きしめる。
「ダメじゃないです。側にいてください。頭を撫でて、手を繋いで………」
胸に顔を埋めているルミは、少しだけ鼻をすすっていた。慰めるために頭を撫でようとゆっくりと手を伸ばした時、ルミはぎゅっと制服を握りしめる。
「もう、どこにも行かないでください……」
「……うん、ずっと側にいるからね」
優しく頭を撫で、包み込むように歌恋はルミを抱きしめる。
夏空の下、抱き合う二人。
そんな彼女たちを祝福するかのように、吹奏楽部の演奏が天に向かって鳴り響いた。




