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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第5章_夏の嵐
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17話《押さえられない気持ち》

ゆっくりとルミの体が離れていき、俯き気味に、顔を真っ赤にする彼女の姿が歌恋かれんの瞳に映る。


「それは……」

「先輩にキスされたことも、好きだと言われたのも、嫌じゃなかったんです……まるで当たり前で、自然なことで……」


 ギュッと胸を押さえ、ゆっくりと瞳を閉じ、今までの光景を思い出す。

 頭を撫でられたこと、抱きしめられたこと。近かった顔の距離。自分に向けられた言葉の一つ一つ。それを思い出すたびに、ドキドキと激しく心臓が動き始める。


「先輩が一緒にいるのが当たり前で、離れていくなんて思いませんでした。連絡が取れないときも、ずっと先輩のことを考えてました。その時に、まるでパズルのピースがはまるように、ストンと気づいたんです」


 歌恋の右手を取り、両手で優しく握り、ルミはにっこりと笑みを浮かべる。


「あぁ私、先輩が好きなんだって……」


 グッとこみあげてくる感情。今にも泣き出したくて、彼女を抱きしめたかった。だけど、歌恋はそれを躊躇った。


「ルミ……その好きは、きっと違う好きだよ」


 自分で否定して、自分で傷ついた。

 そう……同性を好きになるなんて普通はありえないことだ。たしかに、異性同士じゃできないことがたくさんできるからこそ、勘違いするかもしれない。ルミのそれもきっと勘違いだ。そうに違い。何度も何度も自分にそう言いきかせ、歌恋はルミから距離をおこうとする。


「逃げないでください!」


 握った手を引き寄せ、ルミは歌恋の動きを止めた。わずかに震える手の感触。歌恋はルミの言葉を待つ。


「そう思われても仕方ないです……だって、こんな気持ち初めてです。でも誰が何といようと、私は先輩に恋してます」

「だからそれは……」

「ヤキモチ焼きました!」


 感情は吐き出すような大きな声。さっきよりも顔を真っ赤にさせ、プルプルと震えながら、ルミはポツリポツリと言葉を零していく。


「撮影の日、自分じゃなくて高崎先輩と帰ったのこと、椎葉先輩とばかり話してること……自分じゃない誰かに意識が向いてるのが嫌でした……」


 羞恥心を必死で押さえながら、ルミは歌恋に、自分の中にある嫉妬……欲望を吐き出していく。歌恋は、ただ黙ってそれを聞いていた。そして、心の中で思う。それ以上何も言わないでほしいと。


「それから、それから……」


 泣きそうになる彼女の姿を見て、歌恋は握られている右手を引き寄せ、そのままルミを抱きしめる。


「せ、せんぱ……」

「もういいよ。ごめん、そんなこと言わせたくなかったんだ」


 強く抱きしめながら、必死に押さえていた感情を言葉として彼女に伝える。


「好きだよ」


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