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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第4章_夏の花火
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13話《終わり》

夕月ゆづき。すまないが、看板を下げて来てくれ」

「はーい」


 遠くから聞こえていた花火の音が消えた頃。夕月の親戚が経営する花屋は閉店準備を始めた。

 店の前には、花火大会に行っていた人たちが帰宅しており、夕刻と同じぐらい賑わっていた。


「俺も行きたかったなぁ……ん?」


 視界の端、立ち止まっている人物がいることに気づき、夕月は看板を持ったまま振り返った。


「ルミ」


 花火大会にと、綺麗な桜の浴衣を着た妹のルミ。俯き、その場から動かない彼女の側に夕月は駆け寄る。


「どうしたここまで着て。歌恋かれんは?一緒じゃないのか?」

「……用事ができたからってここまで送ってくれたの」

「そうなのか……楽しかったか?」


 俯いたままのルミは、小さくこくりと頷いた。

 手には二匹の金魚が泳ぐ巾着と、買ったばかりのりんご飴が握られている。それを見て、夕月はにっこりと笑みを浮かべる。だけど、すぐに不思議そうな顔を浮かべる。


「何かあったか?」

「え……」

「元気ないっていうか……楽しかった割には、なんか暗い?」

「そ、そんなことないよ。すごく楽しかった」


 顔を上げ、ルミはえへへと笑みを浮かべる。夕月は腑に落ちない様子だったが、それ以上追求はしなかった。


「あとで話聞かせてくれよ」

「う、うん」

「おぉ、ルミちゃん。お祭りに行ってたのか?」


 その時、店からおじさんとおばさんが出てきて、着飾っているルミに声をかける。

 褒めちぎられて顔を真っ赤にするルミ。いつも通りの彼女に、ちょっとだけホッとして、夕月は笑みを浮かべる。

 その時、ポケットにしまっていたスマホが震え出す。ポケットから取り出し、送り主を確認すると、夕月はわずかに声を漏らす。


「歌恋からだ」


 特になんの疑問も抱かずに、夕月は内容を確認する。


「……なぁルミ」


 浮かべていた笑みは消え、ただただ驚きの表情を浮かべていた。


「本当に、何もなかったのか?」


 その問いかけに、ルミは不思議そうに首をかしげる。






【こんばんは先輩。急ですみません……今日で、ルミの護衛のバイト。やめさせてもらいます】


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