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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第4章_夏の花火
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10話《ガールズワールド》

歌恋かれんも来てたんだ」

「なんでこんな隅にいるの?」


 髪型も服装もバラバラの、歌恋とした親しげな複数人の女の子たち。人波を抜け、歌恋に手を振りながらこちらへと近づいてくる。


「女子だけでお祭りって寂しくない?」

「失礼な。今日は男子と一緒に回ってたの」

「今近くの射的屋で張り合ってるんだけどね」

「ガキすぎ」


 ケタケタと笑う彼女たちに歌恋は苦笑いを浮かべる。

 彼女たちは歌恋と同い年のクラスメイトであり、元弓道部の部員である。

 実力だけを言えば、彼女たちは歌恋よりも上だ。この中には個人で優勝した人もいる。正直、その子が部長になって欲しかったと歌恋は思った。


「わぁ、この子可愛い!」


 その時、一人の女の子がルミの姿に気づいて声をあげて騒ぎ出した。

 目が合い、ルミは手にしていたりんご飴で顔を隠しながら目をそらす。

 女の子の興味は歌恋からルミに一瞬にして変わり、彼女を囲むようにして騒ぎ出す。


「ちっちゃーい」

「お人形さんみたい」

「可愛い」


 人見知りが発動しているルミは、あたふたしながら涙目になり「あの」とか「えっと」などと小さな声でつぶやいていた。

 取り囲んでいる方はルミのことなど御構い無しに騒ぎ立てる。人波の方はその騒ぎに興味を抱き、こっちを見ている人たちが数名いた。


「はいはい、そこまで」


 ルミを背中に隠すようにして間に入った歌恋は、深々と溜息を零しながら彼女たちを見た。


「一気に話したら混乱するでしょ。後、あんまり騒がない。他の人たちが何事かってこっち見てるじゃない」


 歌恋が人波の方を指さすと、わずかにギャラリーができてしまっていた。

 女の子たちは慌てて「なんでもないです」や「喧嘩とかじゃないんで」と、ギャラリーをちらせていった。


「ごめん歌恋……」

「申し訳ない」

「誤ってくれればいいよ」

「それで、その子は?歌恋に妹がいたなんて聞いたことないけど……」

「この子はルミ。夕月ゆづき先輩の妹さんだよ」


 彼女たちは声を揃えて「え」と驚いた。紹介されたルミも、歌恋の背中にしがみ付きながら軽く会釈した。


春宮はるみや先輩の妹さん?」

「ひゃー、可愛い」

「じゃあ先輩も来てるの?」

「いや、今日はバイト」


 もちろん弓道部員であった彼女たちも夕月のことは知ってるし、彼と歌恋が仲が良かったのも知ってる。だから、彼女がルミと一緒にいても、特に気にした様子はなかった。


「ねぇ、歌恋も一緒に回らない?男子も弓道部メンツだしさ」

「ごめん。今日はルミとゆっくり回るから」

「そっか、それは残念」

「あ、男子探してるっぽい」


 メンバーの一人がスマホの画面を見ながらそう言うと、彼女たちは「そろそろ行こうか」と言って、体を人波の方に向けた。


「じゃあね。次は一緒に遊ぼう」

「うん、お誘い待ってます」


 彼女たちに手を振って、その姿が人波に消えて行くのを見届けると、重く濁った溜息をこぼした。


「ルミ、大丈夫?」

「は、はい……ちょっ、ちょっとびっくりして」

「ごめんね。根はいい子たちなんだ」


 その時、ルミはぎゅっと、歌恋の服に深いシワを刻むように握り、顔を埋めた。


「……落ち着いたらまた回ろうか」

「……はい」


 歌恋は優しくルミの頭を撫で、ルミは甘えるように歌恋に抱きついた。


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