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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第3章_夏の恋
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11話《鍵》

「えぇー、私も行きたかったです……」

「じゃあお昼はそこ行こうか。学校の近くだし」


 時刻は刻々と過ぎて行き、そろそろお昼の時間になり始めていた。

どこに行こうかと考えていたときに、昨日のカフェのことを歌恋かれんが思い出し、ルミに話すと行きたいと答えてくれ、じゃあお昼はそこに行こうと決定した。


「お話中ごめんね」


大きな美術室のさらに奥の部屋。そこの扉が急に開いて、中から椎葉しいばが姿を現した。


「あれ、椎葉いたんだ」

「うん。だから、申し訳ないけど、結構会話内容聞こえてたんだ」

「うっわ、恥ずかしい……」


 過去の内容を思い出して、顔を覆いたくなるほどの羞恥心に襲われ、歌恋は俯いてしまった。


「今からお昼?」

「あ、はい……」

「じゃあ鍵閉めないとだね」 

「先輩も、お、お昼ですか?」

「うん。水崎みずさき先生のところ」


 どういうことだろうとルミが首をかしげると、隣で俯いたままの歌恋が軽く説明してくれた。

 水崎と椎葉は昔からの知り合いだった。彼の祖父と水崎が古い友人らしく、幼い頃から関わりがあった。

 椎葉はおじいちゃんっ子で、幼い頃は祖父にべったりだった為、水崎が訪ねにきた時も、いつも祖父にくっついていた。話の輪にも入っていたし、二人が将棋をしているときに混ざったりもしたことがあった。

 そういった事もあり、椎葉はよく水崎のところでお昼を食べながら将棋をしている。この事は、同学年と一部の先輩後輩が知っている。


「結構妬んでいる生徒も多いいんだけど、私はそれ以上に、椎葉に将棋の才能もあったことに妬ましさを感じる」


 さっきの恥ずかしさは何処へやら。歌恋は椎葉を呪うかのように睨みつけた。


「才能なんてないよ。やり方覚えれば、誰だってできるし」

「やるなら相手はお父さんだなぁ」

「私もです。兄さんは絶対にやらなそう」

「興味があったら二人もきたらいいよ。水崎先生も喜ぶし」


 その後、三人は一緒に教室を出て行き、職員室前で別れた。


「あ、春宮はるみやさん」

「え、あ、はい」

「鍵なんだけど、戻る前に一回職員室によってもらってもいいかな。もしかしたら僕の方が遅いかもだし」

「わ、わかりました」

「僕も一度寄るから」

「ルミー」


 遠く、昇降口の前で歌恋がルミを呼ぶ。ルミはアワアワしながら歌恋と椎葉を交互に見た。

 それを見た椎葉はくすりと笑って軽く頷いた。


「よろしく頼むね」


 一言そういうと、椎葉はその場を後にする。その後ろ姿をしばし見つめ、ルミは歌恋の元に駆け寄った。


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