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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第3章_夏の恋
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1話《冷めない熱》

「おーい、歌恋かれん


 翌日は晴天。雲一つない青空が広がり、夏の日差しが照りつける。


「あ、どうも先輩、ルミ」


 先に来て顧問の水崎みずさきと現部長の慎也しんやと話をしていた歌恋は、弓道場へとやって来たルミと夕月ゆづき椎葉しいばの方を向いた。


「なんか顔色悪くね?」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、うん……今朝、母さんが張り切って晩御飯のメニュー考えてたんだけど、すごい量になりそうでぐったりしてるんです」


 昨日の自分の発言を後悔して、歌恋はいまにも泣き出しそうな顔をしていた。 

 そんな彼女の様子に、春宮はるみや兄妹は両肩を叩いて「ドンマイ」と重く、深いトーンで口にした。


「椎葉もありがとね」

「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」

「おぉー春宮くん。久しぶりじゃのぉ」

「水嶋先生、お久しぶりです」


 歌恋の横をすり抜け、夕月はそのまま水嶋のもとにゆき、シワシワの手を強く握った。


「お元気そうで何よりです」

「春宮くんも元気そうじゃのう」


 ニコニコしている夕月の様子を見て、ルミと歌恋はこそこそと会話をする。


「兄さんホント外面いいですね」

「いやまぁ、言いたいことはわかるよルミさんやい」

神薙かんなぎ先輩」


 その時、水嶋の後ろにいた慎也が声をかけてきた。歌恋は顔を上げて彼の方を向くが、ルミは反射的に彼女の後ろに隠れてしまった。


「あ、すみません」

「あぁ気にしないで。ルミ、私の次に部長になった高崎たかさきだよ」


 ゆっくりと歌恋の背中から顔を出すと、ぺこりと頭を下げ、再び隠れた。


「ご覧の通り、人見知りなの。後、異性も苦手で」

「そうなんですね。でも、先輩の弓を引いてる姿を描きたいなんて、見込みがありますね」

「なんの見込みなの?あ、そうだ。先輩も引きませんか?」


 水嶋と話をする夕月に歌恋は声をかけた。袴は控えの分が何着かあり、彼の体格にあったものも少なからずある。


「あぁでも、俺高校卒業してやめたしな」

「大丈夫です。ね、先生いいですよね」

「わしは構わんよ。久しぶりに春宮君の射を見たいしのう」

「私も、見たいです」

「参ったなぁ……まぁ水嶋先生がそういうのなら」

「えぇ、私はぁ?」

「はいはい、ありがとな」


 数度頭をポンポンと叩き、夕月は歌恋の横をすり抜けてルミのそばに行った。

 触れられた頭に手を伸ばし、歌恋はうつむきながらつぶやいた。


「ホント、ずるいな……」



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