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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第2章_夏に感じた熱
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7話《イルカショー》

「そろそろ行こうか」


 昼食を終え、スマホに目を向けるとイルカショーが始まる十五分前だった。

 人混みに紛れ、会場へと向かう。ぎゅっと迷子にならないように手を繋ぎ、歌恋かれんがルミの少し先を歩いて道を作って行く。


「んー……後ろの方しか空いてないね。さすがにこれだけ暑いと、みんな濡れに前の方に行くね」


 会場にはたくさんの人が集まっており、水槽のそばには小さな子供達が中のイルカを見つめる。

 イルカショーの観客席の前の方は、一番水がかかるびしょ濡れ必須の場所だ。冬ならともかく今日のような夏場の暑い時期は、みんな涼しくなるために、濡れに前の方の席に座る。


「仕方ない。一番後ろの日陰の席に座ろうか」

「残念です。近くで見たかったのに」

「またくればいいよ。その時は、今日よりも早めに席を取らないと」


 一番後ろの日陰の席。出入り口とは反対側に位置する場所で、二人は並んで座っていた。


「あれ、あそこにいるの椎葉しいばかな」

「え、どこですか?」

「ほら、あそこ。向かいの席と、下の方の席」

「ん?」

「ほら、前になんかすっごい派手な服を着てるおばさんの後ろだよ」


 目をこらしながらルミは椎葉の姿を確認しようとする。すると、向こうもこっちに気づいたのか手を振ってきた。


「ほら、手ぇ振ってるよ」


 歌恋は先に手を振り、ルミもその姿を見つけると、戸惑いながら手を振った。


「あんな前の方に座ってるけど防水かな。いいなぁ、やっぱり早めに出るべきだったね」


 水槽の中を泳ぐイルカを見ながら歌恋がそう呟くが、待てどもルミからの返事が返ってこなかった。


「ルミ?」

「ふぇ!?な、なんですか?」

「どうした、ぼーっとして。熱中症にでもなった?」

「いや、大丈夫です」

「そう、ならいいけど。体調悪くなったらすぐにいうんだよ?」

「はい。なんていうか、胸がドキドキします」

「楽しみで?」

「えへへ」


 恥ずかしそうに笑うルミ。その様子がとても可愛くて、歌恋はルミの頭を撫でた。


「ま、また頭撫でて……」

「いやぁ。可愛いなぁって」

「子供じゃないんですから」

「はいはい」


 少し会話をしていると、イルカショーも始まり、会場に歓声が上がる。

 イルカが飛んで水しぶきが上がるたび、日の光が水滴に反射してキラキラと輝く。まるで、きらびやかなサーカスを見ているような感覚だった。

 幻想的なそのショーに、ルミも歌恋も目をキラキラと輝かせながら見ていた。


「すごいですね!」

「そうだね、すごいね」


 まるで水槽近くの子供たちと同じように大はしゃぎするルミ。歌恋も楽しんでいるが、イルカよりも隣ではしゃいでるルミを見ている方が楽しかった。


(すっごい写真撮りたい。可愛いなぁ)


 そう思いながら、横目でチラチラとルミの様子を歌恋は眺める。



『ありがとうございました』



 ショーが終わると、会場中に拍手が溢れた。歌恋もルミも当然拍手をし、会場を後にする観客に紛れて、二人もその場を後にした。


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