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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第2章_夏に感じた熱
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5話《三人の昼食》

椎葉しいば


 にっこりと笑みを浮かべながら、椎葉は二人の側にやってきた。


「やぁ、奇遇だね。二人も水族館に?」

「うん。夕月ゆづき先輩にチケットをもらってね。そういう椎葉は?」

「絵の取材でね」


 手にしたカメラを見せながら、多くは語らずにそう答えた。ルミは少し戸惑いながら。歌恋かれんの手に触れて、ぎゅっと強く握った。


「ねぇ椎葉。お昼がまだなら一緒にどう?」

「ご一緒していいのかい?」

「私はいいけど……ルミはどう?」


 顔を覗き込み、彼女の意思を聞いた。正直、歌恋は少しだけ後悔していた。こっちから誘ったのはいいものの、知らない仲ではないとはいえ、椎葉は男性。ルミは異性が苦手なため、彼女が嫌なら断るしかない。


「だ、大丈夫です」

「無理しなくていいよ? ルミが無理なら……」

「へ、平気です! 大丈夫です」


 少し緊張してはいるようだが、彼女が大丈夫ならということで、二人は椎葉と一緒に食事をとることにした。





 フードコーナーには結構な人の数があった。お昼も近いということもあり、他のお客さんも席について昼食をとっている。


「ふわぁ〜……!」

「ルミはオムライス?」

「はい。歌恋先輩はカレーですか?」

「そうそう。椎葉はハンバーグかぁ」

「子供っぽいかな?」

「いやいや全然」


 それぞれバラバラのものを注文して、口に運んでいく。幸せそうにオムライスを食べるルミを見て、思わず歌恋は笑みを浮かべた。


 カシャッ


 不意に聞こえた無機質な機械音に歌恋は顔をあげた。そして、その音がした方に目を向けると、カメラを手にしている椎葉の姿があった。


「盗撮だよ」

「ついね。こんな春宮はるみやさん見たことなかったから」


 ルミは食事に夢中になってるようでシャッター音には気づいていなかった。実際、音もそんなに大きいものではなかった。


「見せて」

「いいよ」


 正直、一瞬歌恋の心臓が跳ね上がった。もしかしたら、ストーカーが写真を撮ったのではないかと。


「おぉー、よく撮れてる。写真の才能もあったんだ」

「そんなことないよ」

「……これ頂戴」

「ダメだよ。代わりっていうのも変だけど、二人が並んでる写真を撮ってあげようか?」

「えっ、いいの?」

「お昼を誘ってくれたお礼だよ」


 優しい笑みを浮かべて、椎葉はルミの方にレンズを向ける。


「ルミ、顔あげて」

「ふぇ!? な、なんですか!?」

「じゃあ撮るね」


 状況を理解してないルミはただ慌てるだけ。歌恋はルミの肩を寄せてカメラに向かってピースをする。

 シャッター音がなると、歌恋はどんな風に撮れたか気になって椎葉の元に駆け寄る。


「できたら渡すね」

「楽しみにしてるよ」

「酷いです……」


 ムッと頬を膨らませて拗ねるルミ。一人だけ状況がわからないまま写真を取られて、ものすごく不満を抱いてるようだった。


「ごめんってルミ。機嫌なおして」

「頭撫でたって、許してあげませんよ!」

「……随分、仲良いね」


 ふと、二人の様子を見ていた椎葉が言葉を零した。

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