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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第2章_夏に感じた熱
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3話《開館前の影の下》

「はぁ……あつぃ……」


 早朝八時。歌恋かれんはルミの家まで迎えに行き、二人は水族館へとやってきた。

 休日ということもあり、駅前には人が溢れ、気温はいつもよりいっそう高いため、二人は開館するまで近くの日陰で待っていた。

 歌恋は入口をチラチラ見ながら開くのを待つ。隣に座り込んでるルミは、ネットで水族館の情報を拾っているようだった。

 日陰にいても外にいる以上、夏の暑さは感じる。額から汗が滲んで頬をつたう。喉も乾き、少しだけ視線を自販機に向けてしまう。


「ルミ、暑くない」

「えっ? 大丈夫ですよ」

「でも、汗かいてるよ。ちょっと動かないでね」


 手持ちの換えのタオルを取り出し、歌恋はルミの汗を拭いてあげた。


「い、いいですよ。汚いですから」

「そういうのいいから。ほら、動かない」


 軽く叱ればルミはおとなしくなる。暑さのせいか、ルミの顔はほんのり赤い。それを見て、やっぱり涼しいところにいればよかったと歌恋かれんは後悔してしまう。


「暑いから仕方ないけど、気をつけるんだよ?」

「え?」

「折角可愛い格好してるんだから。汚れたら大変」


 女の子らしい服装。歌恋じゃ、絶対に着ることはない、フリルのついた服やスカート。彼女の肌も白いから、本当に人形のように見えてしまう。


「あ、ありがとうございます。先輩もその、かっこいいです」

「そう?適当にパーカーとズボンだよ。スカートなんて、制服以外できないし」

「そんなことないですよ。先輩スレンダーでスタイルいいし。私はその……子供っぽいですから」


 シュンッと落ち込みながら自分の体を見つめるルミ。だけど、その容姿は歌恋にとっては羨ましかった。自分がこれだけ可愛ければ、きっと夕月ゆづきも好きになってくれた、と。


(あぁヤダヤダ。未練がましい。きっぱり振られてるんだ。諦めないと!)

「あ、先輩。開きましたよ」


 ついに開館時間になり、炎天下の中で並んでいたお客さんが続々と中に入っていく。


「ホント。じゃあ行こうか」

「はい」


 二人はそのまま水族館の方へと足を運ぼうとした。


(あっ……)


 日陰から出ようとした時、歌恋はルミの手を取った。突然のことで唖然とするルミ。だけど、歌恋はにっこりと笑みを浮かべて歩き出す。


「人多いし、何かあったらダメでしょ」

「す、すみません……とろくて」

「そんなこと言ってないでしょ。ほらほら、楽しみにしてたんでしょ。閉館時間まで、見て回ろう」

「はいっ!」


 互いに強く手を握り、二人は水族館へと入っていく。


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