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星の降る夜に。

作者: 那由多

宜しくお願いします。

 「星が降る夜」。2059年8月13日。ペルセウス座流星群の日はそう呼ばれる。美しい流れ星があたかも落ちてくるように、止めどもなく流れていた。


――――――――――――――――――――――――


 吉野勇気は、一人の少女に想いを寄せていた。決して叶わぬ恋と思いながらも、ただ一人想い続けていた。


 彼は、なるべく自分の事を知ってもらおうと彼女にアピールした。周りの人には、分かっていたが、彼女はいつも何のことかわからないというように、はぐらかしたような態度をとる。彼は友人の勧めで映画に誘った。彼女は、いつものような態度で、断るのかと思いきや、以外にも誘いに乗ってきた。


 2058年7月30日。二人で映画を見て、喫茶店で、パフェを食べる。まるで、恋人のように思えた。彼は、彼女を誘い、ある高台の上にのぼる。その日は、やぎ座流星群が見える日だった。天からとてつもない量の星が流れてくる。美しい光景に心を奪われていた。ふと隣を見る。彼女もまた星の降る空に心を奪われているようだった。それを見ている彼女もまた美しかった。彼は彼女に聞いた。


「どうして、来てくれたの?」


「何となく、かな?」


「僕は君のことが好きだよ。」


「知ってる。」


「気づいてたの?」


「あんなあからさまな態度と周りの目に、気づかない方がおかしいって。」


「付き合ってって行ったら?」


「いいよ。仕方ないから付き合ってあげる。」


その後、二人は黙ったまま星を見上げていた。美しく流れる星を。


――――――――――――――――――――――――


 彼は、彼女がなぜ彼と付き合ってくれたのかは知らない。が、彼は彼女と過ごすうちに、本当に「好き。」という感情がわかってきたような気がした。


 毎日話す声、行動の一瞬一瞬、重なる笑い声、じっと見つめていると不思議そうに見返してくる瞳、柔らかい唇、得意になると少し胸を張る行動。彼は、そんな彼女の全てに愛おしさを感じていた。


 彼は彼女のことを想い、彼女また彼を想う。そんな心地のいい想いが彼らを一つにしていた。唯の一度もお互いに離れたいと思ったことはなかった。しかし、2059年8月1日、突然彼女は彼の前から姿を消した。そして、8月13日、彼女が死んだと連絡がきた。


――――――――――――――――――――――――


 会いたい、会いたい、会いたい。でも叶わない。彼女は、あの星の降る夜に美しい星となって逝ってしまった。あの、流星の日に。


――――――――――――――――――――――――


吉野勇気様


 拝啓、空は高く澄み渡り、星の美しく見える頃、貴方様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

 この手紙を貴方が読んでいるということは、私はもうこの世にはいないでしょう。一年前、貴方に出会ってから、片時も貴方のことを忘れたことはありません。私は、あの時余命一年と宣告されました。絶望して死んでしまいたいと思っていたとき、貴方は私に生きる意味を与えてくれました。貴方は私にとって太陽のようでした。

 私がいなくなっても、どうか前に進み続けて下さい。私はいつまでも貴方の心の中で生き続けています。


敬具


――――――――――――――――――――――――


 彼は、いつまでも星の光る空を見つめていた。彼女の消えた、星の降る夜に想いを馳せながら。

有難う御座いました。

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