表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎暮しの農民が国を救うようです。  作者: 銀夜の世界御一行
第一章 ナマレコ村の終焉
2/7

第一章 02 ロックと騎士団の圧政

今回は過激な話が出てきます。 苦手な方は飛ばしてください


ここはナマレコ村の診療所。 大怪我をしたダンさんを皆で運び込んだ場所だ。 診療所の先生曰く、まだ寝込んでいるらしい。


そのあと、ロック率いるニーベルング魔導騎士団を寝泊まりできる家に連れていったのは、じいさんだった。 じいさんの顔は変わらない表情で、騎士達の相手をしていた。 村のみんなは「どうして、」の声や「なんであんなやつらを」と言っていた。


俺からすれば、なんでじいさんはこんな奴らの行動を我慢出来るのか、わからなかった。


***



「ダンさん、平気かしら….」


「きっと大丈夫だって! だってダンさんだぞ? またすぐに起きて、あの笑顔を見せてくれるさ」


「そうよね…… ……私の、この考えは杞憂よね?」


「そうだよ、」


と、みんな繰り返し言っているが、実際のところはわからない、 俺も心配しているが、大丈夫だと思う自分もいる……


「ふぅ…」


手術室から診療所の先生が出てきた。 手術用の服には血の跡が残っていた。 俺やみんなは一斉に先生に押しかけた。 ダンさんが気になったからだ。


「……なんとか、峠は超えた。 あの人の生命力はいつも驚かせる。 死ぬぐらいのけがをしても、持ち前の自然回復でなんとかしちまう。これじゃ医者は要らないじゃねぇか」


この先生の名前は、Dr.ロックバル先生、 かつては宮廷医師をしてたらしい。ダリューさんが言ったあのヤブ医者とはこの人のことだ。


俺も何度かお世話になっている。 髪型はボサボサの長い髪。 みんな切らないのか、と聞いても、 医療に支障はないと言って、無視される。


「あの人が死んだらこの村の破滅だがな。 ……んで、何があった? いきなり担ぎ込まれてきたときは驚いたぞ、 肋の骨が皮膚を突き破ってたり、出血多量でよ… そういえば、外が騒がしかったな。」


そう、ロックバル先生は基本は診療所に篭って、医学の本を読んでいるためか、 俺たちの前に姿を見せる事が少ない。


「実は…」


村の人が、外が騒がしかった原因を話した。


「村に騎士団が?」


「ええ、 近隣の村が壊滅して、それを重く見た国王陛下があの騎士———— 騎士ロックが来たんだ。」


「……あの国王が? ……裏があるんじゃないか……?」


「……先生?」


先生は顎に手を当てながら、考え始めてしまった。 こうなった先生は誰の言葉も聞かないし、 聞いてもくれない、 だから俺たちはここから出ていくしかないんだがな…


と、俺たちが診療所から出ようと思い、玄関前までいくと、 その瞬間、 先程、聞いた相手の神経を逆なでするような軽い声が聞こえてきた。


「おい、誰か居ないのかよ?」


扉の向こう側に騎士団を率いてきた男の声、ダンさんに重傷を負わせた騎士、ロック・ベルフォードの声だった。


「おい! 誰か居るんだろ! なんで誰も出ないんだよ! 僕は騎士様なんだぞ!? 僕は貴族様なんだぞ!? なんで出ないんだよ!」


ロックが癇癪でも起こしたのか、扉の前で開けず、騒ぐ、 その声は俺含む、皆を不快にさせる。


「……煩いな、 なんだよ」


考え事に集中してた先生が余りにも玄関前が騒がしいので、考え事をやめて、こっちきたみたいだった。


「せん……」


俺が警告するまえに、玄関の扉を開けた。


***


やっと、扉が開いた。 開けた人物は長い髪にだらしない格好をした男だった。 ……なんだ、女性じゃないのか。


「……なんだよ、おたくら、 うちの診療所に何か用で? 言っておくが、金がない奴にうちの寝床を貸してやるほどお人好しではないが、……んで、なんだよ」


こいつっ……!! 僕を騎士と知ってこの無礼か!? いや、この顔は僕をバカにしてる! こいつ! 僕がこの中で一番弱そうに見えるから、バカにしてるのか!

バカに……!!


「……ハッ、 ……治療を願いに来たんだよ。」


まずはこの怪我を治してもらわないとなぁ、 ここに来る際に足の太ももを木の枝で切ってしまったんだよなぁ。 辺境の村だから材質が悪くても我慢するさ。 それが、僕の懐の広さだからねぇ……


「ふぅーん、治療、ね。 さっき運び込まれたやつよりはピンピンしてそうだがな? ……まぁ、聞くだけは聞くさ、 言えよ、 ガキ」


「なっ……!! 僕が……ガキ……だと!?」


こいつ!僕のことを……!僕のことを……!!


「ガキにガキって言って何が悪い? お前ガキなんだからしょうがねぇだろ? ほら、さっさと言えよ、 大人はお前ほど暇じゃねぇんだよ、」


「っっ……!! ふ……太ももを来る最中怪我をしてねぇ、 痛くて堪らないんだよ…… あぁ、そうだ、さっき喋ってる時に閉じてた傷が開いたんだよ、 あの男が僕に掴みかかった所為でね……ククッ」


どうだ、僕の演技、 凄いだろ? これやれば大抵の医師は僕の言うことを聞いて、何でも無料で治療してくれる。 そのあと、僕の家の名前を言えば——————


「……それで?」


「……は?」


「それでって言ってるんだよ。ぷはぁ…… 早くしろよ、 何が欲しいんだよ、 痛み止めか? 傷薬か? それとも薬草か? それ以上はないぞ。」


こ……こいつ、僕と話してる間にタバコを吸い初めやがった…… 僕と…僕と話してる時にぃ……


「……じゃあ薬草。薬草を寄越せ、とびっきり治癒力があるやつをな! 微妙なやつでも、中途半端なやつでもダメだからな! 僕は中途半端なことが大っ嫌いだからな!」


「…中途半端な事、ねぇ…… まるで今のお前みたいだなぁ。」


「なんっ……!」


「薬草な? 待ってろ。 」


男は僕に無礼を沢山働いた挙句僕を診療所に入れずに扉を閉めやがった……! 律儀に鍵を閉めやがった……!!


***


「……ほらよ、お前が望んだ薬草だ。 この村で一番効力がある薬草だ。 ほら、怪我したところを見せろ、 これを塗ってやるよ。」


こいつに言われるがままに僕は鋭く切れた太ももを見せた。


「はぁーん…… こりゃノコギリ葉で切ったな、 こりゃ薬草でも少し痕は残るな。」


「ノ……ノコギリ葉??」


「ノコギリ葉。ここ付近に生えてる鋭利な葉っぱだ。 外敵から本体を守る為に葉っぱの先が刃みたいに鋭くなったんだよ、 それぐらい知っておけ、ガキ。」


「ガキガキってうるさいな! 僕のどこがガキなんだ! 僕は立派な大人だ! 騎士団に自力で選ばれた! 僕の実力で!」


「……実力ねぇ、 俺からすれば親の脛をかじってるようにしか見えねぇよ、 それにここは貴族とかは関係ねぇ、 この村に滞在する限り、 この村のルールに従ってもらう、村の平穏は壊させないぞ。」


「…!」


「ほら!終わったぞ! 後は自然に治るからじっとしてろよ、 じゃあな。」


僕のことを散々罵倒した男は診療所に帰っていった。 僕のことをひたすらガキと—————————



***



「ぷっ! ……ふぅ、 あいつ、 てめぇら以上に疲れる相手だな。」


先生はそう言いながら、普段は吸わないタバコを玄関の石のところ吐き捨て、足で火を消した。靴の底が…


「だ…大丈夫なのか?あんなに言って…」


俺がそういうと先生はめんどくさそうな顔をして答えた。


「あんなの気にしなければいいんだよ、 気にしてるからあいつは付け上がるんだ。 だから、あいつがどう言おうと、無視をするんだ。 そうすれば村から出ていく、 こんな村にいられないってな。」


先生はそういうが、あいつがその程度で引き下がるとは思えないんだが……


「少なくともあいつはそれをすれば勝手出ていくさ、 今までもそ……」


「……先生? いきなり黙ってどう…」


先生が黙ったと思った瞬間、 先生の全身が鮮血を撒き散らし爆裂四散した。


「……は?」


いきなりの出来事で何が起きたか理解出来なかった。 散々ロックのことを嘲笑ったロックバル先生が腕と足だけを残し、辺りに血のたまりを作った。


「……くくっ」


ロックが不敵な笑いをしながら診療所に入ってきた。 ロックの顔はやってやったという顔をしてた。


「ククッ……やっぱりお前を雇って正解だったよ! こうやってムカつくやつを無残な姿に変えられるんだからなぁ?」


ロックの後ろに、この村に訪れた時には居なかった筈の黒フードで全身を隠した者が居た。 男なのか、女なのか、わからないやつだった。


「ロック! お前!」


「何さ、こいつが僕に歯向かったのが悪いんだろ? お前らもこいつの魔法の餌食になりたくないなら僕に従えよな!嫌だ、…なんて言ってみろ、こいつの魔法で、この生意気な先生と同じ無残な物に変えてやるからな?アッハハハ!!」


「てめぇ……!」


「お前のその顔もいつかへし折ってやるよ、シロウ。ギャハハ!!」


この瞬間、ナマレコ村は、この男に支配された。この男による圧制が、始まったのだ。


***


村がロックに支配されて三週間が経った。 三週間もすればもうロックに逆らうと思うやつは誰も居なくなっていた。 何故なら逆らったとわかった瞬間に文字通り消されてるのだから(・・・・・・・・・)


私達女は真っ先にロックの命令にかかった。 最初は少数の人たちだったのだが、今や村の女性は全員騎士団の男どもの身の回りのお世話となっている。


嫌だと言った女の人もいたが、どうなったかわからないし、知りたくもないが、 一晩中その女の人の叫び声が聞こえたのは紛れも無い事実だ。


私達はいつこの地獄から解放されるだろうか、 ……シロウは私が助けてと言ったらきてくれるのだろうか…



***



ここはロック()がいる家、 騎士団の皆様と一緒にここに寝泊まりしてらっしゃる。…私の名前はメグミ、 好みじゃない男の命令を強制的に受ける仕事を命じられた。


王国ではこれをメイドと言うらしい。 この村にいる女性は皆んなメイドに回された。 メイドの仕事はロック()や他の騎士団の皆様に料理、洗濯等をする仕事をしている。


ダリューさんやほかの男の人たちは森の伐採をしてるらしい。何も騎士団が通りづらいという理不尽な理由で。


「失礼します、お召し物を頂戴しに参りました。」


私がそういうと、騎士の人たちは上や下を私達目掛けて投げてきた。 汗臭いその服を私達に、淑女に向けて投げてきたのだ、 その下品な物を。


「頼むぜ? メイド! ギャハハ!!」


「……下品な」


「なんか言ったか?」


「……いえ、何も、行きましょう。皆んな、自分が洗う洗濯物を持ちなさい。」


私がそういうと、皆んなも渋々その服を持った。その服を持ったら、笑顔でこういうのが私達メイド、いや、奴隷の仕事だ。


「今日も楽しく、笑顔で貴方様方のお召し物を綺麗に洗濯させてもらいます。 どうかそれまで、彼女らのダンスでも見ていてください。」


それを言い終えると、皆んな、さっさと洗い場に向かった。


ここは村の洗濯する場所、 前まではもっと緩い感じだったのが、今や淀んだ空気に成り果てた。


「うぇ…この人の下着なんかイカ臭いよぉ〜……?」


私と同年代の女の子がそう言った。多分その子は今日こっちに配属になった子なのね、 可哀想に、としか私達は声を掛けてあげられない。自分の作業を疎かには出来ないのだから。


「後で消臭剤でも付けなさい。 それか少し腫れるかもだけど、消臭草でも付けなさい。 いい? 少しでも手を抜いたら私達も踊り子にされるわ。」


踊り子とは、 普通は水着にも似た格好で男の人を誘いながら踊る人のことを指す。 だがここの踊り子は酷い、 騎士団に背いた者、命令を忠実に遂行できなかった者、ロック()に逆らったら者達がその踊り子になる。


踊り子になったら女として終わりを告げる。初体験はむさい男だったなんて、ここじゃよく聞く話となってしまった。 そのあと、 妊婦になるまで、男の部屋で監禁され、 妊婦になったあと、無理やり踊らされるのだ。 だから、皆、ああはなりたくないと思い、必死に自分の作業を完遂出来るようにしている。


しなきゃ踊り子にされる。私達女はそんな仕事場にいるのだから。


……シロウ、助けて。


***


俺はいつも剣を振り回してる泉に来ていた。 村に行けない以上、 俺はここで剣を振ってるしかないのだから。


「皆んな大丈夫か…?」


俺がこんなことを思ってる理由は、 先生が死んだ翌日、村に住んでる皆んなが俺のことをこのナマレコ村に入ることを禁じたのだ。 村が大変なことになってるのに、俺だけ村の外で待機なんて、真っ平ごめんだ。 苦痛なら俺も受ける。と思い、何度も村に行こうとするが、 ここ最近は行けずじまいなのだ。


「……ダンさん、デンバーさん、ダリューさん、じいさん、 ……メグミ。みんな大丈夫かな……」


せめて生きててくれと、 俺はそう思うしかなかった。すぐにでも助けたいが、村の支配を行なっているロックの後ろにはよくわからない魔法を使ってくるやつと騎士団がいる。 今のまま挑んでも確実に負けるのが目に見えてたからだ。


その時、俺は気づかなかった。 メグミ—————幼馴染から貰ったペンダントが血よりも赤い色で点滅していたことに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ