表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎暮しの農民が国を救うようです。  作者: 銀夜の世界御一行
第一章 ナマレコ村の終焉
1/7

第一章 01


「探せっ! ネズミ一匹この城から出すな!」


鎧が揺れる音が城内に響き渡る。


その声の主に、ひとりの兵士が話しかけてきた。


「隊長!」


兵士に隊長と呼ばれた男性は兵士の声に振り向き、こう聞いた。


「居たか!?」


隊長はそういうが、 兵士は首を横に振った。


「いえ!何処にもおりません!」


「ッ…! 陛下が留守の時に……!ええい!見張りは何をしていた!!」


隊長と言われた男性は焦りながらも、自身の部下に指示をし、探させる。 その足音は城の地下深くまで響き渡っていた。


***


「……!!」


私はその音に震えながら、ランタンを手に、地下の用水路の歩き始めた。


「絶対……逃げてみせる…… 私は!こんな城から逃げてやるんだからぁー!!」


気合いを入れ直し、私は用水路を駆けていく、全ては、この私の為に。



* * *


私の名前はヴェル——— ヴェル・アテナ。 この国…北大国 《ニーベルング》の第ニ王女だ。 なぜ私がこの用水路居るのか、 それは詳しくは話せないが、 とにかく私は逃げなきゃいけないのだ。


とにかく、 あの人達の手が届かない所に。


「お父様の話によると、確か、こっちに…」


幼い頃に聞いた話を頼りに歩く。右、左、右。L字路を上に。T字路の右に。…この道順は今、通っている用水路の水が排出される場所……外へと行く道筋なのだ。


そもそも、この用水路は今使われている用水路とは違うもので、つまり、古い用水路用水路だ。 なぜ私がここにいるのか、 理由は簡単。 普通の用水路だと、兵士に見つかる可能性があるからだ。 だが、ここの昔の用水路ならまず人が出入りする事がないので、見つかる危険性は少ないのだ。


「こっちを右に曲がれば……え?」


私が曲がるべきはずの壁が崩れて進行不可能になっていた。……今更ながら、少し考えれば簡単に思いつく事だった。 古い用水路ならよくある事だったと。


しかし、私は自身の記憶力を頼りにこの道を通ってきたので、 ここ以外で外へ出る方法は知らない。 知るはずもない。 ランタンに入っている火の魔石もかなり小さくなって、 しかもヒビが入っていた。少しでも魔石を使えば、割れて、辺りが暗くなるぐらいに。


「ど…どうしょう…… 火の魔石なんて、そこらに落ちているはずないし…… そもそも、 それを手に入れても火の付け方なんてわからないし……!! あー!もう!! ちゃんと魔法の授業を受けておけば良かった!」


私の声が古い用水路にこだまのように響き渡る、


「グルル……」


「え?」


背後から、獣の声が聞こえてきた。 爪が地面に当たる音が古い用水路に響いていた。 どんどんこっちに歩いてきた。 ランタンの残り火で確認できるぐらいまで近寄ってきた時、その獣の正体が判明した。


「グルル……!!」


その獣は、犬のような姿だが、体毛が猫のように少し伸び。 その毛の色は金色に染まっている。 本来、どの生物にも一つしかない顔と首が三つに分裂していた。 私はこの犬もどきの獣の名前を知っていた。その獣の名は。


「てぃ……ティンダラス!? 古代のファフニールで絶滅した狼の魔物がどうして… きゃっ!?」


ティンダラスと呼ばれた三つ頭の獣は私に飛びかかってきた。 私は避ける暇もなかった。ティンダラスは私目掛けて突撃してきた。


「ひっ!」


恐怖のあまりに、腰が抜け、 その場に座り込んでしまった。 私はこの日に始めて魔物を見た。 唾液が口から漏れていた。 どう殺してやろうか、どう食べてやろうか、この犬はそう思っているだな、と思うと腰と足に力が入らないのだ。


「……ない……で。 こないで……!!」


「グルル!!」


「来ないでよ!!」


ティンダラスは私の悲鳴なんて聞かず走ってきた。 ティンダラスの口内が見えるほどの距離に近づいた瞬間。私は目を瞑った瞬間、その目を開けることは無かった。そして、意識が途切れた。


あ。 死んだな。と——————



***



ここは、北大国 《ニーベルング》の北の北にある小さな村。 辺境にあるせいか、あるいは国から離れてるせいか、 物価の入荷はいつも遅く補給される。それ以外を除けば凄く平和なのが、 俺が生まれ育った村。 ナマレコ村だ。


ここはナマレコ村近くの泉。 俺の日課はここで剣を振ることから始まる。


「はぁっ!せぁっ!」


俺の名前はシロウ。 ただの農民だ。 だが、そんな農民がなんで、こんな物騒なモノを持って、振り回しているのかというと、 それは俺の生まれたこの村、ナマレコ村にある警護部隊に入るためだからだ。


警護部隊に入るために、ここで鍛えているということだ。 警護部隊に入る理由は生まれ育った場所を守るためにという、至極真っ当な答え。


「っと…… 準備運動の素振り終了っ! 」


そう言い、俺は銅の剣を地面に置いた。 一度も使ったことがない剣だが、 素振りするには十分な重さなので、かなり気に入っている。


「ホッホッホ…… 精が出るのぅ、 シェロウ。」


「じいちゃん!? なんでこんなところに……」


この人は俺のじいちゃん、 村のみんなからは村長と呼ばれてるじいさんだ。 身寄りのない俺を子供のように可愛がってくれてるじいさん。


昔はそれなりに頭が良く、かっこよかったと、言われていたらしい。 こんな見た目じゃあ信用できないがなぁ…


「ホッホッホ… 最近、ここで剣ばっか降っていると聞いてな。 本業の方はおろそかにしてないか不安になってのう。お前さん、なぜか村に家は建てたがらないからのぅ」


「一人でするのが好きなだけだよ。 本業————農業もちゃんとやっているよ、じいさんとの約束だろ?」


ここで、なんで、ただの農民である俺が、騎士団が訓練で使いそうな銅の剣を持っているのかという理由を話そうと思う。


じいさんが、農業ばっかりでつまんないだろうという理由で、この銅の剣をくれたのだ。 勿論、どこで買ったかも聞いた。そしたらじいさんは。


『わしが若い頃に使っていた剣じゃ、わしもここに来る前は都会に居てのう、その時に記念として買った剣が今日、整理してたら出てきてのぅ、 処分に困ってたところ、お前の存在を思い出したっていうわけじゃ』


と、 例え理由がどうであれ。俺は丁度、本物の剣で特訓したい時期だったので、正直、これは嬉しかった。だから、約束は必ず守っている。 じいさんとの約束は特に。


「……そうか。ならば良い」


じいさんはそういうと、後ろに向いて立ち去った。


「何しに来たんだ?」


と思った。 そう、じいさんはかなりの高齢でボケてる時もあるのだ。 俺もちょくちょくそれを目撃はしている。


「んじゃ、そろそろ戻るか、持ち手の手汗を拭いてっと…」


持ち手に付着した手汗を綺麗に拭った。 拭った後、 刃にも同じようにした。全部が終わったら、皮の鞘に収め、 袋に入れる。


「ギルドに入ってる人とかは腰につけるとか言ってるらしいけど、本当かよ、」


そう言いながら俺はその地を後にし、 自分の家に帰っていった。


***


家に荷物を置き終えた後、俺は村に顔を出した。 俺が村に来ると、みんな家族のように歓迎してくれた。


「おお! シロウ! 聞いたぜ、納税が期限にきっちり守れてるってよぉ! 俺じゃ全く出来ないことなのによぉ!」


そのうち、 髪の毛を金髪のオールバックで、筋肉質の男性が俺に肩を組ませながら、絡んできた。 この男の名前はダン。俺にとって、親戚みたいな男の人だ。


「そんなの、余計な事に使わなければすぐ出来るぞ、 ダン」


と、話せて嬉しいのに、建前を先にしてしまう。 直さなきゃいけないってことはわかってるんだが…


「無茶いうなってよぉ、 うちには家内も娘もいるんだぞぉ? それで余計に使うなって、無理があるだろうよぉ。」


そう、普通は言えない。 何故なら、ここの村の人たちは全部、税金で出来るシステムを使って生活しているのだから、いやでも税金は出てしまうのだ。


その点、俺は景色がいい場所かつ、 自力習得で覚えた魔法で、生活を補っている分、 他より、納税する量が少ないのだから。


「ダン。それはあんたが毎日、奥さんと娘を都会に連れて行ってるからじゃろうに。」


「そりゃ、無くなるわ。」


「ちょっ!それはないじゃんよぉ!」


このおばあさんの名前はデンバ。 村長には及ばないもの、 この人もかなり高齢だ。 生きてるのが不思議なレベルの歳らしいが。 村では薬や魔法薬を作る事を専門としている。 交流が少ないこの村にとっては数少ない薬師なのだ。


「んじゃ、俺はそろそろ」


「お? そうかよぉ、 んじゃ、また会おうじゃんよぉ、 家に来たら飯ぐらいは食わせてやるからよぉ。」


「おう、飯が無くなったらそうさせてもらうよ。」


そう言い、二人の後ろを通り、先に進んだ。


ダンとデンバーのばあちゃんを後にし、 少し歩いていると、 三人組の男性の一人が、俺に話しかけてきた。


「おっ、シェラ。あんさんが村にあるって珍しいばいの?」


「シェラじゃなくて、シロウだよ、 あんたは相変わらずの飲んだくれか。」


「飲んだくれで、何がわるぃ? ひっく…… ごくごく…… 村は平和なんだ。大人には。んっ…んっ…… ぶはっ…! くぅー! ぶどう酒はやはりうめぇな!」


この飲んだくれの名前はダリュー。 村の警護隊の者だが、村はあまりにも平和すぎて、ここでいつも仲間たちと一緒に酒盛りしている。 平和を理由に酒を飲むは少し違う気がするんだがなぁ…


「ダリューさん、あんた、さっき医者に飲むのやめておけって言われたでしょうよ。」


「うるせぇい! あんなヤブ医者の言葉を鵜呑みにするなよぉ? ごくごくごく……」


この人、ドクターストップ掛かってるのに、なんでやめねぇんだよ……!!


「シロウ、ここは離れた方がいいぜ、 ダリュー隊長は酒が入ると、ただのうぜぇじじいだからな、」


と、酒を飲んでない唯一の男性が、俺に忠告してくれた。 正直のところ、その警告なくても、すぐ立ち去るが…… しかし、ウゼェじじいか。 ……それは言えてる。


「そうだな、んじゃ、俺は行くよ、 いつかあんたらの部隊に入る事を願っておくよ」


「うちに入っても暇なだけどな!」


それは余計だぞ。ダリューさん。



***


「あ、シロウ!」


俺の姿を見るや否や、こっちに走ってきた。


「げっ…」


「げっ…って、何よ! せっかくこの私が、幼馴染である、この私が、凡夫にも等しいあんたに話しかけてやったのよ? 感謝しなさいな」


この態度をとる女の子は、俺が小さい頃から知ってる女の子、 名前はメグミ。 下の名前は興味がないから覚えてない。


髪型は後ろに結んでおり、髪色は緑色と村では珍しい髪色、身長は俺の一センチ違い、 少しでも気を抜けば抜かれるほどに。 胸は……その、 ……どの村の女の子より、出てはいる。 しかも、露出が高い服を好んで、この人は着るので、 目のやり場に毎度、毎度。困る。


「はいはい、凡夫で悪かったな。 んで、なんだよ。今日は」


「全く可愛げのない事。 ……これ。」


メグミは照れながらも、俺に向かって、何かを渡してきた。


「……剣のペンダント?」


鎖の先にはこの王国のシンボルが彫り込まれた小さな剣のレプリカが付いていた。 一体なんだ?と思い、ジロジロ見ていると、 メグミがなぜか頬を赤く染めながら、話した。 ……風邪か?


「あんた、村の警護隊隊に入るんでしょ?」


「まぁな、 その為に剣を振ってるわけだしな。 ……皮肉のつもりか? このペンダントは」


「ちがっ…… 私は、あんたを……」


「……あんたをなんだって?」


こいつ、たまに聞き取りづらい声で話すんだよなぁ。


「……と、とにかく! 待ってなさい! ほら!掛けてあげるから!」


メグミはそう言うと、迫ってきて、俺の首にそのペンダントを付けた。 な…なんか、これ恥ずいな……


「お、おい!まだこれ受け取るって……!」


「いいから! 待ってなさい! あんたが、私の危険を瞬時にわかるようにした魔術的なペンダントよ。 その剣が赤く光った時が私が危ないときよ。」


と、わけのわからない単語を並べてきた。 なんだよ?魔術って、魔法の一種か?


「よく、わからないが…」


「わからないの? 全く鈍いね、流石は剣士、脳まで固いですこと。」


おっほほー! と言いながら、メグミは去っていった。 ……一体なんだったんだ?


***


村に顔出し兼買い物を終えると、俺は村入り口に向けて歩いてたとき。 村の入り口に大量の男の人がいた。 甲冑や、鎧を着ている人らがいる。あれは


「王国の騎士様だ… なんでこんな辺境の地に?」


「わかんねぇよ… うちの村は国の傘下には入ってるし、 何かしただけ訳でもねぇしょ…」


「ちょっと、だれか聞きに行きなさいよ…」


「あんたが行けば?」


と、みんなお互いに押し付けあったりして、 誰も聞きに行こうとしない、 ま、そういう俺も話しかけたくはないんだがな…


「なんだ!この無礼な村は!」


若い声が村に響き渡った。


「なんだ、なんだ!この村は! 木々が邪魔で、馬は通れないわ! 地面が柔らかいから足場が沈むし、 高価な鎧が泥だらけではないか! 我々貴族をバカにしておるのか!」


「おっほほ… 若いの、うちの村に何か用ですかな?」


「じいさん!?」


騒がせておけばいいのに…!


「あ? てめぇ、なんだ?」


若い男はじいさんを睨むが、 じいさんは全く動じてない、 そもそも眼中にないって顔だった。


「わしはこの村の村長じゃよ、 それで、三度、繰り返すが、わしの村に何か用じゃ?」


「チッ…… 今から言う言葉は国王陛下からの命令である! ここ最近の近隣の村が何者かによって壊滅した。 よって、我らニーベルング魔導騎士団が警護に当たることになった! 我らには貴様から相応の対応を望む! これは国王陛下のご意向だ!」


と一方的な言葉を並べる。 相応の対応なんて、出来ないし、出来るはずがない、 この村は自分達で生きていくのに必死なのだから。


「おっほほ… それが、ニーベルングの国王の命令じゃと?」


「そうだ! ここに国王直筆の手紙もある! 疑うなら見せてやる!」


「どれどれ…? ふむふむ……」


じいさんは丸いフレームに鏡が付いた物を掛け、 読み始めた。 書いてある内容が気になり、俺もじいさんの近くに寄って行った。


「じいさん、……どうだ?」


「ふむぅ…… たしかにこれはジェネラル王の直筆じゃ、 あの国王がこんな騎士団を率いるはずがないんじゃがなぁ」


「ふふっ!どうだ! 今からこの村は僕の管轄になる!村の近くに僕の騎士団が居る、 それを村に到着させろ! 馬を怪我ないように村に案内しろ! それぐらいは客人に見せる、礼儀だよなぁ? れ・い・ぎ、ギャハハ!!」


こいつの言葉にイラつかないやつは居ないだろう。 何故って? その理由は簡単だ。 自分が生まれた家に他人のくせに、我が物の顔で居座られると言う事だ。


「てめぇ…!」


「なんだよ? 僕に逆らうのか? 僕は騎士だぞ! あぁ、そうか、わからなかったのか、 そうか、そうか、ならもう一度言ってやるよ、 僕はニーベルング魔導騎士団所属の騎士! おっと、滞在するのに、相手に名前を教えないのは失礼の極みだよな? 僕の名前はロック。 ロック・ベルフォード。 お前らの名前は? 聞くだけ聞いておいてやるよ、ギャハハ!!」


…こいつ、ムカつくな…… こいつ、無意識に煽ってるって知らないのか……?


「落ち着くのじゃ。」


じいさんは俺の目の前に腕を出し、静止させた。


「…じいさん?」


「騎士相手にこっちから手を出したら負けじゃ。ここはわしに任せい、 ……おっほん。 わしは村長でよい。」


「はぁ? そんちょう? それは村の主の名前だろ? そんなんもわかんねぇのかよ?」


「おっほほ… わしはこう見えて高齢でのう、 自分の名前が何だったか忘れてしまったのじゃよ、 こればっかしはしょうがないと思ってくれ。」


「ちっ、…まぁ、見る限りジジイだからなぁ、お前はそれで見逃してやるよ、 んで、次はそこのあんただよ!」


「……俺か?」


「そうだよ。 ジジイの隣に居るのはお前しか居ないだろ? ほら、名乗れよ。」


じいさんは言ってた、騎士相手にこっちから手を出したら負け。と、 一番この村を好いているじいさんが我慢してるんだ。……俺も我慢しないとなぁ…


「シロウだ。」


「名前だけじゃわかんねぇよ、 家の名前を名乗れよ、 この村に住んでるんだろ? ならわかるはずだろ? ほら、言えよ。」


「家の名前はわからない。」


「は?」


「俺の両親は、俺が生まれた後に死んだらしい。 家の名前もバラバラの家系だったから、 これと言った家の名前がないんだ。」


「んじゃあ、なんでシロウって名乗ってるんだよ?」


「死んだ母さんが残したメモに書かれていた…と、じいさんから聞いた。」


これは本当だ。 じいさん曰く、 死んだ母から名前を聞いて、そう名付けたらしい。 これを聞いたのはつい最近だ。


「へぇ〜…… それって、つまりさぁ、 親に捨てられたんだよなぁ?」


……は?


「お前、何言ってるんだ…?」


「だって、そうだろ? 親は普通、子供が産まれたらずっと居るもんだろ? どう言い訳作ろうと、親がいない。って事実は変えられないだろ?ギャハハ!!」


「てめぇ!」


後ろからダンさんが歩いてきた。 その顔をかなり怒っていた。


「そんなの、てめぇの家の話じゃんよぉ! こいつの親はなぁ! まじで死んじまったんだよぉ!! こいつを、直に抱けないまま! 我が子の顔をよく見ないで、死んじまったんだよぉ!」


ダンさんはロックの首元を掴みながら、怒鳴りつけた。 何度も何度も、声を張り上げて、 まるで我が子を侮辱して怒る親のようだった。 村のみんなもそれにつられて、でかい批判の声を出した。


「そうだそうだ! それはてめぇらの……王国での暮らしがそうさせてるんだろうが!」


「こっちは生きてるだけでも必死なんだよ!」


村の言葉で、村は熱気が高まっているが、未だロックの顔は余裕の表情だった。


「クックク…… それがどうしたよ?あ?」


「なに……がぁっ!?」


ダンさんほどの巨体が何者かによって、思いっきり蹴られた。 その蹴りはダンさんの脇腹の骨を何本か折った。 近くにいた俺が聞いたその音は、完全に骨が折れた音だった。


「……ロック様の無礼は我ら騎士団が見逃さない。 他の者も、このお方に逆らったら、この男のようになるだろう!」


全身鎧に包み込んだダンさんよりも大きい兵士がそう言った。 村人はその言葉を聞いた瞬間、 さっきまであげてた声をピタリとやめてしまった。


「がぁ……!ああ……!!」


「なぁ、どんな気分だよぉ? てめぇが! でしゃばった!せい!でよぉっ! ……クックク………あははははは!!!」


「ぐはぁ……」


「おい、 この汚い怪我人、どこかにやれよ、 僕の道が汚れちまうだろ?ははっ…」


ダンさんはそのあと、診療所に運ばれた。今も集中治療中らしい。 ……かなり蹴られたのに、流石は我らのダンさんだ…


そのあと、この村は平和から、荒んなものに変わり果てるなんて、思いもしなかった。 つまり、こいつらを村に招いた時点で、この村、俺たちの村は滅びに向かっていったのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ