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プロロ-グ

 いつもの白い部屋。


 ここにはもう何度も来たことがある。


 「なんじゃオマエ、また来たのか。」


 「はい、神様。最近は頻度も多くなったように思います。」


 いつもの神様との会話。


 「しかし、オマエの魂は何故こうも肉体を離れるんじゃ。」


 「さぁ、俺に聞かれてもなんとも・・・タブン、あの場所にしがみついてでも懸命に生きたいという気持ちが足らないから離れちゃうんじゃないですかね。」


 「なぜ懸命に生きたいと思わんのかね?」


 「才能が何もないからですかね。何をやっても、どれだけ努力しても才能の芽すら出ませんでしたね。それでも若いうちは懸命に生きていたんです。けど、ここ数年は会社の同僚にはおいていかれ、後輩には追い越され、社会が俺に厳しすぎるんですよね。」


 「おまえは愚痴りにきたのか。それでこれからどうする?」


 「あれ、もう話聞いてくれないんですか。まあいいです。いつも通りお願いします。」


 「了解じゃ。それじゃ、ちゃっちゃと送り返しとくか。」



 何度も繰り返されたやりとり。もう手慣れた物である。ここでの事は、あちらに戻れば全て忘れてしまうのだが、ここに来ると不思議といつも思い出されるのだ。


 戻ったらもう少しだけ頑張ってみよう。たぶん覚えていないけど。



 目を瞑り送り返されるのを待つ。いつもならほどなく押し戻されるような感覚がくるのだが・・・・・・こない。


 目を開けて目の前の神様を見る。



 「あの・・・・・・神様?」


 「わしは神様じゃが・・・いや、おまえの言いたい事はわかっておる。ただ、ちと問題が起きたようじゃ。おまえの体、もう死んでおるぞ。」


 「まじですか!」


 「火の不始末かの。周りに被害はなくおまえの民家だけ全焼しておるぞ。」



 そういえばヤカンを火にかけたままだったような・・・・・・。


 どうやら、お湯が沸くのを待っている間にうたた寝してしまったらしい。



 「しかし困ったのう。どうする?天国にいっとく?しばらくすれば元の世界に生まれ変われるじゃろうし。」


 「そうですね。じゃあ、それで。」


 「えらいあっさりしとるのう。良いのか?オマエは、このまま生まれ変わってもまた同じような人生を繰り返すと思うぞ。」


 「それはちょっと考えたくないですけど、そういうものなのでしょうか?」


 「同じ魂が同じ世界に生まれ変わり、また同じような人生を何度も繰り返す。結構普通の事なんじゃがのう。」


 なるほど・・・と、妙に納得してしまったが、それはないんじゃなかろうか。次の人生も希望が持てないとか悲惨すぎる。


 「あのぉ~そこをなんとか、神様のお力でどうにかなりませんかね~」


 「そうじゃのう。これも何かの縁じゃし、ここでわしの仕事の手伝いでもするか、わしが管理する世界に生まれ変わらせるかくらいならできるが、どうする?」


 「じゃあ、それで。えっと、そっちの世界に生まれ変わる方で。」


 「助手がほしかったんじゃが、まあええわい。望み通り別の世界へ生まれ変わらせてやろう。そのまえに何か希望があれば聞くが?多少の融通は効かせてやれるぞ。なにしろあっちに送ったら、わしでもそう容易く干渉できんからのう。」


 これは、あれか?チ-トでもくれるというのだろうか?


 「特別な力とか授けて頂けるのでしょうか?」


 「そういうのは無理じゃ。」



 さいですか。それなら・・・と、少し考えてまとめてみた。



 「え-と、でしたら先程の才能の話もそうですが、生前俺には身寄りもなく他人ともあまり深く関わろうともせず彼女も何年もいませんでした。寂しかったんだと思います。それで無意識に居場所を求めて魂が浮遊していたのかもしれません。ですので次は寂しくない人生を送りたいです。それから最低限の衣食住の保障と、できれば少しばかりの才能の芽の部分だけでも貰えればなぁ~と・・・・・・」


 「長いのう。じゃが、わかった。おまえがこれから生まれ変わるのは剣と魔法のファンタジ-な世界じゃ。ある程度周りの人間に恵まれいて、一応は貴族じゃの。才能は・・・おまえ勘違いしておるが元々持っておるよ。おまえの才能は『他人の才能を引き出してそれを伸ばす才能』じゃ。おまえ自身が頑張って何かになれるわけではないがのう。おまえの才能が発揮されやすい環境に送ってやろう。上手くつかえば余程マシな人生が送れるじゃろうて。そんじゃそろそろ送るぞ。本来ここは人の魂が長くいてはいけない場所じゃからの。というか、普通は来れないんじゃが・・・」


 と言うと、いつの間にか神様の手に握られていた杖が振るわれ、俺の体が光に包まれる。


 世界が変わってもやっぱり同じような人生を繰り返すんじゃないだろうかと、少しばかり頭をよぎるが、先程教わった意外な才能、これをうまく使うことが出来ればあるいは・・・。


 しかし、何か忘れている事があるのではないだろうか。


 忘れる・・・そう、おそらくここでの記憶は、ここを離れると忘れるのだ。そのことを神様に伝える間もなく、光と共に俺はその場から消失した。










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